家族の事情で6月下旬から北海道函館市の実家にいる。4月上旬からの約1カ月間も滞在したが、今回違うのは「鶏卵が買えるようになった」ことだ。4月ごろは入手が困難だった。スーパーの従業員に聞くと「入荷量が少なく、開店後あっという間に売り切れてしまう」と申し訳なさそうに言われた。 もちろん背景は鳥インフルエンザの感染拡大と飼料価格の高騰で、全国共通の現象だ。しかし、北海道では千歳市の農場で3月下旬から4月上旬に鳥インフルが発生し、道内で飼育される採卵鶏の約2割にあたる計120万羽が殺処分されたことが大きかった。 感染の終息を受け5月には鶏と卵の搬出制限が解除され、品薄は少し緩和された。しかし... 2023年8月25日
このひと 農村地域活性化への途 農林水産省 農村振興局長 長井俊彦 氏 7月の農林水産省の幹部人事で、農村振興局長に長井俊彦氏(大臣官房審議官兼経営局)が就任した。新局長に農村地域の課題とこれからの振興策のポイントを聞いた。 仕事をつくり 定着してもらう流れを ■農村振興の課題をどのように認識されているか? 農村だけではないが、これからどんどん人口が減り高齢化も進んでいく。集落機能の低下、鳥獣被害による離農、想定以上の自然災害による水資源管理の難しさなど課題は多岐にわたる。 そうしたなかでやはり農村地域... 2023年8月25日
このひと 森林・林業行政のこれから 林野庁長官 青山豊久 氏 農林水産省の7月4日付幹部人事で、林野庁長官に青山豊久氏(農村振興局長)が就任した。新長官に林政のこれからの課題や森林・林業に対する思いを聞いた。 山元の材価が上がらないのが根本問題 ■長官に就任されての感想から。 各課長から取組みの現状を聞く中で、花粉症や森林環境税など、〝重たい課題〟を抱えていることを改めて認識し、責任の重さを痛感している。 山元の立木の価格が上がらないことが、全ての問題の根本にあると感じている。 昨今、森林保全のた... 2023年8月15日
本コーナーの6月5日号で書いたように、本年3月に世田谷区で「農あるまちづくり講座IN世田谷」を開講したが、先の6月27日に無事に終了した。月2回、第二、第四火曜日の午後7時から8時半まで、消費者・市民を対象に農業やまちづくりに関係した講義を行い、残った時間で意見交換等を行ってきた。 定員20名に対し、申し込み締切りを間近にして、あっという間に20名を超え、あわてて募集を締め切った時点で参加者が29名になってしまったことに象徴されるように、本講座に対する消費者・市民のニーズには想定以上のものがあり、またきわめて熱心に受講いただいた。先に本講座を開いた西東京市では、リタイアした世代を対象に時... 2023年8月5日
アングル 第66回全野研全国大会のテーマと今後 全国野菜園芸技術研究会 会長 渋谷忠宏 氏 施設栽培を中心にした野菜農家が集まり、お互いの栽培技術や経営手法を学ぶ全国野菜園芸技術研究会(全野研)の全国大会が8月2~3日に神奈川県で開催される。コロナ禍の間、同大会は開催中止や一部日程のみで行われ、全日程で開催するのは4年ぶり。資材価格や脱炭素などの課題があるなか、今大会で掲げるテーマと研究会の今後について渋谷忠宏会長に聞いた。 1964年から全野研として ■全野研の組織と活動は? 世の中に新し... 2023年8月5日
今では全国7000ヵ所以上に広がった子ども食堂。その第1号とされる東京・大田区の「だんだん」が2012年にオープンしたのは、歯科衛生士のかたわら有機野菜などの販売を手掛ける近藤博子さんが、一人の小学校教諭に聞いた話がきっかけだった。その話とは「ひとり親のお母さんが心の病を抱え、学校給食以外は1日にバナナ1本しか食べられない児童がいる」というものだ。 この話は子どもの貧困の実態に加え、給食の重要性も示している。新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年3月に始まった全国一斉休校では、給食を頼みの綱とする多くの家庭が窮地に陥った。特に、日中も家にいる子の世話のため仕事に出られなくなったひと... 2023年7月25日
このひと 農業委員会支援に農業会議所が果たす役割 全国農業委員会ネットワーク機構 (一社)全国農業会議所 専務理事 稲垣照哉 氏 全国農業会議所の専務理事に、この4月稲垣照哉氏が就任した。稲垣新専務に、改正農業経営基盤強化促進法施行後の農業委員会、農業会議及び農業会議所が果たすこれからの役割について聞いた。 地域計画づくりをバックアップ ■改正基盤法を受けた農業委員会系統の役割は? この4月1日、改正農業経営基盤強化促進法が施行され、全国の農業委員会では、市町村の地域計画策定を支援することになった。これま... 2023年7月25日
このひと 日本農業の現状と農業法人の役割 日本農業法人協会 会長 齋藤一志 氏 日本農業法人協会は、6月の総会で新会長に齋藤一志氏(山形県㈱まいすたぁ代表取締役)を選任した。齋藤新会長に、日本農業の現状を踏まえた農業法人のこれからと農業法人及び日本農業法人協会の果たす役割を聞いた。 メンバー増やし学び合いチャンス掴む ■会長に就任しての抱負から。 日本農業法人協会には、平成15年、仲間から奨められて入会し、以来、様々な活動に参加させてもらった。農業界は、一人では解決し得ないような課題がどっさりある。関係する... 2023年7月15日
昨年の10月から食料・農業・農村基本法の見直しに向けて、農政審議会の中におかれた検証部会で議論が積み重ねられてきた。5月29日の検証部会でその中間とりまとめが決定され、6月2日には政府の食料安定供給・農林水産業基盤強化本部会合で追認された。これで実質的に食料・農業・農村政策の新たな展開方向は決定し、今後は2024年の通常国会に向けての基本法改正案の検討作業の本格化とともに、適正な価格形成のための仕組み、スマート農業振興、不測時の政府体制についての法制化がすすめられることになる。 基本法であげられていた、①食料の安定供給の確保、②農業の有する多面的機能の発揮、③農業の持続的な発展、④その基... 2023年7月5日
このひと JA女性組織活動のこれから JA全国女性組織協議会 会長 久保町子 氏 JA全国女性組織協議会は、5月25日の通常総会で、令和5年度の活動計画を決定するとともに新執行部を選任。新会長に久保町子さん(長野県JA信州うえだ)が就任した。久保新会長に、令和5年度のJA全国女性協の活動とJA女性組織のこれからへの想いを聞いた。 「食」中心にSDGsにも向き合って ■まず、会長就任の抱負から。 今、私たちの抱えている課題をみんなで共有し、組織を〝丸く長く〟という思いで、まとめていければと思っている。 私... 2023年7月5日
食料・農業・農村基本法の見直し論議が急ピッチで進んでいる。先月29日には農林水産省の検証部会が中間とりまとめを野村哲郎農相に提出し、それを受けて岸田文雄首相を本部長とする食料安定供給・農林水産業基盤強化本部が今月2日に「新たな展開方向」を決定。年度内に施策の工程表も示されるという。 公表された文書を概観すると、現行基本法にはない新しい理念が目を引く。食料安全保障に多くの記述を割いているのは予想通りだが、その中で「平時からの国民一人一人の食料安全保障」をうたった点は率直に評価したい。 当欄でも再三指摘してきたが、国全体の食料自給率が上がっても十分な量と質の食料にアクセスできない生活困窮... 2023年6月25日
このひと 農薬業界をめぐる現状と取組方向 JCPA農薬工業会 会長 小澤敏 氏 JCPA農薬工業会は、5月の総会で新会長に小澤敏氏(三井化学クロップ&ライフソリューション㈱代表取締役社長CEO)を選任した。新会長に、農薬を含めた作物保護産業界を取り巻く環境と産業界としての取組み方向を聞いた。 自主的運営と透明性ある活動で ■就任の抱負から。 JCPA農薬工業会は、国内の主要な農薬製造業者を中心に組織され、この4月現在、製造業者などの正会員34社、輸出入業者などの賛助会員44社で構成され、農薬の取扱高は、業界... 2023年6月25日
アングル 改正植物防疫法 ~何がどう変わったのか~ 農林水産省 消費・安全局 植物防疫課長 尾室義典 氏 「植物防疫法の一部を改正する法律」(改正植物防疫法)が、4月1日から施行された。これまでの植物防疫法と何がどう変わったのか。改正の背景とねらいを、農水省・尾室義典植物防疫課長に聞いた。 増加する侵入・蔓延リスク ■まずは、改正に至る背景から。 1点目は、社会環境が変わってきたこと。温暖化等気候変動をはじめ、最近ではインバウンドやeコマースなどで外国のものが簡単に日本に入ってくる状況が増加していることも... 2023年6月15日
この5月に久しぶりに鹿児島に足を運んできた。労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会のセンター事業団九州沖縄事業本部が霧島市で開催した「第1回小農・森林ワーカーズ全国展開推進研修会(農業講座)in九州沖縄」への参加が目的だ。3日間の研修会で実質1日だけの参加ではあったが、これまでその存在を知るのみで実態・実情がよくは見えなかったワーカーズコープの小農・森林プロジェクトの活動を肌で感じることができた。 ワーカーズコープは3.11の災害復興の柱としてFEC自給圏づくりを宣言し、その具体的な取組みとして小農・森林プロジェクトを発足させている。FEC自給圏構想は経済評論家・内橋克人氏が提起したも... 2023年6月5日
このひと JA青年組織活動のこれから 全国農協青年組織協議会 (JA全青協) 会長 稲村政崇 氏 全国農協青年組織協議会(JA全青協)が5月18日開いた通常総会で、令和5年度の新会長に稲村政崇氏(JA全青協副会長、北海道農協青年部協議会会長)が就任した。新会長にこれからのJA青年部組織活動に対する思いを聞いた。 多くの盟友の想い引き出す1年に ■まず、就任の抱負から。 厳しい時代に少しでも風穴を開けなければならないような状況に至ったときに、「JA青年組織はピラミッドではない。会長は上に立つ... 2023年6月5日
一人暮らしをしていた母が入院したため、4月上旬から1カ月ほど里帰りした。故郷を離れて44年。こんなに長く実家で過ごしたのは初めてだが、地域の変容ぶりを実感した。かつて買い物をした近所の商店はすべて廃業しており、食料品や日用品は少し離れたスーパーやドラッグストアで買うしかない。比較的近くにコンビニがあるのが救いだった。 長い距離を歩けない母は、生協の宅配サービスを利用していた。実家の冷蔵庫をのぞくと、冷凍食品やレトルト食品がたくさんあった。揚げ物など高カロリーの食品が多い。それを90歳の母が一人で食べている姿を想像すると、胸が痛んだ。 街を走る宅配トラックを頻繁に見た。人口減少と高齢化... 2023年5月25日
アングル 環境調和型農業の実践へ 技術・資材を体系化し推進 JA全農 常務理事 冨田健司 氏 世界的に、環境への負荷が低く持続可能な農業への関心が高まっている。日本でも農水省が「みどりの食料システム戦略」で、2050年までに目指す姿として「農林水産業のCO2削減」等を掲げた。一方で、生産者は経済性を踏まえた上で営農を実践する必要があり、課題も多い。そこでJA全農は、経済性・社会性の両側面を踏まえ、生産者が取組みやすい環境調和型農業に資する「グリーンメニュー」を策定した。JA全農で耕種生産事業部を担当する冨田健司常務理事に、グリーンメ... 2023年5月25日
世田谷区で「農あるまちづくり講座IN世田谷」を開講中だ。3月から6月まで、第二、第四火曜日の午後7時から8時半まで、消費者・市民を対象に農業やまちづくりに関係した講義を行い、残った時間で質疑や意見交換を行っている。 主催は都市農業研究会。川崎平右衛門顕彰会とワーカーズコープ連合会東京中央事業本部が共催。世田谷区とJA東京中央、JA世田谷目黒が後援している。江戸時代中期に武蔵野新田開発を協同の力を発揮させることによって成功に導いた立役者が府中出身で名主の川崎平右衛門。新田開発が行われた地を移動しながら毎年フェスタを開催しているのが川崎平右衛門顕彰会だ。 一昨年11月、小平市で開かれたフ... 2023年5月18日
アングル JA共済事業のこれから JA共済連 経営管理委員会会長 青江伯夫 氏 JA共済連は、5月18日に「令和4年度JA共済優績組合表彰式」を開催し、組合員・利用者に〝寄り添った〟活動を実践し、普及推進で優秀な成績を挙げたJAを表彰した。これに先立ち、JA共済事業をめぐる環境と、普及推進の成果を踏まえたこれからの共済事業のあり方への想いをJA共済連・青江伯夫経営管理委員会会長に聞いた。 大きな環境変化のなかで ■この1年を振り返って。 昨年度も1年を通して、新型コロナウイル... 2023年5月18日
ある大学で非常勤講師を務めているが、講義で毎年「コンビニおにぎり」の話をする。おにぎり1個に使われる米の量を45gとして、農家が受け取る米代金は10円強で、諸経費を差し引いた農家の手取り(家族労働費)は3円程度。農林水産省の統計に基づいた乱暴な計算だが、大きくは違わないだろう。 学生の多くはショックを受けるようだ。講義後に提出する感想文に「もうコンビニおにぎりは食べない」と書いた子もいる。そういう時は「食べていいんだよ。農家にとってはコンビニも大事な売り先なんだから」と説明する。 「流通・加工業者が暴利をむさぼっているわけではない」とも話す。いつでも手軽に食べられる利便性を消費者に提... 2023年4月25日