日本農業の発展と農業経営の安定、農村・地域振興、安心・安全な食料の安定供給の視点にこだわった報道を追求します。

〈蔦谷栄一の異見私見〉直面する問題への対応に終始した中間とりまとめ

 昨年の10月から食料・農業・農村基本法の見直しに向けて、農政審議会の中におかれた検証部会で議論が積み重ねられてきた。5月29日の検証部会でその中間とりまとめが決定され、6月2日には政府の食料安定供給・農林水産業基盤強化本部会合で追認された。これで実質的に食料・農業・農村政策の新たな展開方向は決定し、今後は2024年の通常国会に向けての基本法改正案の検討作業の本格化とともに、適正な価格形成のための仕組み、スマート農業振興、不測時の政府体制についての法制化がすすめられることになる。  基本法であげられていた、①食料の安定供給の確保、②農業の有する多面的機能の発揮、③農業の持続的な発展、④その基...

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日本農民新聞 2023年7月5日号

このひと   JA女性組織活動のこれから   JA全国女性組織協議会 会長 久保町子 氏    JA全国女性組織協議会は、5月25日の通常総会で、令和5年度の活動計画を決定するとともに新執行部を選任。新会長に久保町子さん(長野県JA信州うえだ)が就任した。久保新会長に、令和5年度のJA全国女性協の活動とJA女性組織のこれからへの想いを聞いた。   「食」中心にSDGsにも向き合って ■まず、会長就任の抱負から。  今、私たちの抱えている課題をみんなで共有し、組織を〝丸く長く〟という思いで、まとめていければと思っている。  私...

〈行友弥の食農再論〉基本法見直しの「新しさ」

 食料・農業・農村基本法の見直し論議が急ピッチで進んでいる。先月29日には農林水産省の検証部会が中間とりまとめを野村哲郎農相に提出し、それを受けて岸田文雄首相を本部長とする食料安定供給・農林水産業基盤強化本部が今月2日に「新たな展開方向」を決定。年度内に施策の工程表も示されるという。  公表された文書を概観すると、現行基本法にはない新しい理念が目を引く。食料安全保障に多くの記述を割いているのは予想通りだが、その中で「平時からの国民一人一人の食料安全保障」をうたった点は率直に評価したい。  当欄でも再三指摘してきたが、国全体の食料自給率が上がっても十分な量と質の食料にアクセスできない生活困窮...

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日本農民新聞 2023年6月25日号

このひと   農薬業界をめぐる現状と取組方向   JCPA農薬工業会 会長 小澤敏 氏    JCPA農薬工業会は、5月の総会で新会長に小澤敏氏(三井化学クロップ&ライフソリューション㈱代表取締役社長CEO)を選任した。新会長に、農薬を含めた作物保護産業界を取り巻く環境と産業界としての取組み方向を聞いた。   自主的運営と透明性ある活動で ■就任の抱負から。  JCPA農薬工業会は、国内の主要な農薬製造業者を中心に組織され、この4月現在、製造業者などの正会員34社、輸出入業者などの賛助会員44社で構成され、農薬の取扱高は、業界...

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日本農民新聞 2023年6月15日号

アングル   改正植物防疫法 ~何がどう変わったのか~   農林水産省 消費・安全局 植物防疫課長 尾室義典 氏    「植物防疫法の一部を改正する法律」(改正植物防疫法)が、4月1日から施行された。これまでの植物防疫法と何がどう変わったのか。改正の背景とねらいを、農水省・尾室義典植物防疫課長に聞いた。   増加する侵入・蔓延リスク ■まずは、改正に至る背景から。  1点目は、社会環境が変わってきたこと。温暖化等気候変動をはじめ、最近ではインバウンドやeコマースなどで外国のものが簡単に日本に入ってくる状況が増加していることも...

〈蔦谷栄一の異見私見〉小農・森林ワーカーズ全国ネットワーク

 この5月に久しぶりに鹿児島に足を運んできた。労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会のセンター事業団九州沖縄事業本部が霧島市で開催した「第1回小農・森林ワーカーズ全国展開推進研修会(農業講座)in九州沖縄」への参加が目的だ。3日間の研修会で実質1日だけの参加ではあったが、これまでその存在を知るのみで実態・実情がよくは見えなかったワーカーズコープの小農・森林プロジェクトの活動を肌で感じることができた。  ワーカーズコープは3.11の災害復興の柱としてFEC自給圏づくりを宣言し、その具体的な取組みとして小農・森林プロジェクトを発足させている。FEC自給圏構想は経済評論家・内橋克人氏が提起したも...

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日本農民新聞 2023年6月5日号

このひと   JA青年組織活動のこれから   全国農協青年組織協議会 (JA全青協) 会長 稲村政崇 氏      全国農協青年組織協議会(JA全青協)が5月18日開いた通常総会で、令和5年度の新会長に稲村政崇氏(JA全青協副会長、北海道農協青年部協議会会長)が就任した。新会長にこれからのJA青年部組織活動に対する思いを聞いた。   多くの盟友の想い引き出す1年に ■まず、就任の抱負から。  厳しい時代に少しでも風穴を開けなければならないような状況に至ったときに、「JA青年組織はピラミッドではない。会長は上に立つ...

〈行友弥の食農再論〉老いる人、老いる街

 一人暮らしをしていた母が入院したため、4月上旬から1カ月ほど里帰りした。故郷を離れて44年。こんなに長く実家で過ごしたのは初めてだが、地域の変容ぶりを実感した。かつて買い物をした近所の商店はすべて廃業しており、食料品や日用品は少し離れたスーパーやドラッグストアで買うしかない。比較的近くにコンビニがあるのが救いだった。  長い距離を歩けない母は、生協の宅配サービスを利用していた。実家の冷蔵庫をのぞくと、冷凍食品やレトルト食品がたくさんあった。揚げ物など高カロリーの食品が多い。それを90歳の母が一人で食べている姿を想像すると、胸が痛んだ。  街を走る宅配トラックを頻繁に見た。人口減少と高齢化...

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日本農民新聞 2023年5月25日号

アングル   環境調和型農業の実践へ 技術・資材を体系化し推進   JA全農 常務理事 冨田健司 氏    世界的に、環境への負荷が低く持続可能な農業への関心が高まっている。日本でも農水省が「みどりの食料システム戦略」で、2050年までに目指す姿として「農林水産業のCO2削減」等を掲げた。一方で、生産者は経済性を踏まえた上で営農を実践する必要があり、課題も多い。そこでJA全農は、経済性・社会性の両側面を踏まえ、生産者が取組みやすい環境調和型農業に資する「グリーンメニュー」を策定した。JA全農で耕種生産事業部を担当する冨田健司常務理事に、グリーンメ...

〈蔦谷栄一の異見私見〉協同組合間連携で「農あるまちづくり講座」

 世田谷区で「農あるまちづくり講座IN世田谷」を開講中だ。3月から6月まで、第二、第四火曜日の午後7時から8時半まで、消費者・市民を対象に農業やまちづくりに関係した講義を行い、残った時間で質疑や意見交換を行っている。  主催は都市農業研究会。川崎平右衛門顕彰会とワーカーズコープ連合会東京中央事業本部が共催。世田谷区とJA東京中央、JA世田谷目黒が後援している。江戸時代中期に武蔵野新田開発を協同の力を発揮させることによって成功に導いた立役者が府中出身で名主の川崎平右衛門。新田開発が行われた地を移動しながら毎年フェスタを開催しているのが川崎平右衛門顕彰会だ。  一昨年11月、小平市で開かれたフ...

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日本農民新聞 2023年5月18日号

アングル     JA共済事業のこれから   JA共済連 経営管理委員会会長 青江伯夫 氏      JA共済連は、5月18日に「令和4年度JA共済優績組合表彰式」を開催し、組合員・利用者に〝寄り添った〟活動を実践し、普及推進で優秀な成績を挙げたJAを表彰した。これに先立ち、JA共済事業をめぐる環境と、普及推進の成果を踏まえたこれからの共済事業のあり方への想いをJA共済連・青江伯夫経営管理委員会会長に聞いた。   大きな環境変化のなかで ■この1年を振り返って。  昨年度も1年を通して、新型コロナウイル...

〈行友弥の食農再論〉コンビニおにぎりから考える

 ある大学で非常勤講師を務めているが、講義で毎年「コンビニおにぎり」の話をする。おにぎり1個に使われる米の量を45gとして、農家が受け取る米代金は10円強で、諸経費を差し引いた農家の手取り(家族労働費)は3円程度。農林水産省の統計に基づいた乱暴な計算だが、大きくは違わないだろう。  学生の多くはショックを受けるようだ。講義後に提出する感想文に「もうコンビニおにぎりは食べない」と書いた子もいる。そういう時は「食べていいんだよ。農家にとってはコンビニも大事な売り先なんだから」と説明する。  「流通・加工業者が暴利をむさぼっているわけではない」とも話す。いつでも手軽に食べられる利便性を消費者に提...

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日本農民新聞 2023年4月25日・5月5日合併号

アングル   JA全農 令和5年度計画がめざすもの   JA全農 代表理事専務 安田忠孝 氏    JA全農は3月末の臨時総代会で、令和5年度の事業計画を決定した。令和4~6年度の中期計画を踏まえ、その中間年度に当たる今期事業計画のポイントを全農の安田忠孝専務に聞いた。   想定外のリスク乗り越え一定の成果 ■中期計画初年度の1年を振り返って。  今期中期計画は、2030年の全農グループのめざす姿からはじめて、グループとしての方向性を示したことに最大の特長があると思っています。  中期計画策定の時点で、今後の事業に大きく影...

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日本農民新聞 2023年4月15日号

アングル   JA全厚連 令和5年度事業のポイント   全国厚生農業協同組合連合会 代表理事理事長 中村純誠 氏    JA全厚連は3月の臨時総会で、令和5年度の事業計画を決定した。これまでの新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえた、これからのJA厚生事業のあり方と取組み方向を、JA全厚連の中村純誠代表理事理事長に聞いた。   厚生連の存在価値を高めた3年間 ■まず、この間の新型コロナへの対応から。  令和2年1月10日に、JA神奈川県厚生連相模原協同病院で中国・武漢市から帰国した新型コロナ感染者を受入れたのが全国の新型コ...

〈蔦谷栄一の異見私見〉みどり法で欠落した「自然循環機能」

 食料・農業・農村基本法の見直し(以下「基本法」)の動きが急だ。食料安全保障とあわせてみどりの食料システム戦略(以下「みどり戦略」)への対応も大きな焦点となっているが、あらためてみどりの食料システム法(以下「みどり法」)を確認してみて、基本法との本質的な差異が存在することに暗澹たる思いを強くしている。  みどり戦略では、ご承知のように2050年までに目指す姿として有機農業の取組面積割合を25%(100万ha)に拡大すること等が掲げられている。「生産力向上と持続性の両立」によりこれを実現するとしているが、取組みは30年代に本格化し、40年代に急伸するカーブを想定しており、イノベーションに大きく...

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日本農民新聞 2023年4月5日号

このひと   雑穀の現状と重要性 ~国際雑穀年にあたって~   (一社)日本雑穀協会 会長 倉内 伸幸 氏    本年2023年は国連が定めた「国際雑穀年」にあたる。ここでは、その意義と世界と日本の雑穀の現状、重要性等について、日本雑穀協会の倉内伸幸会長(日本大学教授)に聞いた。   三大穀物依存の食生活から改善 ■「国際雑穀年」の意義と背景から。  インドが提唱し国連が2023年を国際雑穀年と宣言したことに始まる。世界の食料安全保障と飢餓をなくすことを目的として、栄養・農業・気候の課題に対応するための雑穀の役割を認識してもら...

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日本農民新聞 2023年3月30日(増刊)号

アングル   JA共済のこれからと 令和5年度事業計画   JA共済連 代表理事専務 村山美彦 氏    JA共済連(青江伯夫経営管理委員会会長、柳井二三夫代表理事理事長)は3月16日、臨時総代会(書面)を開き、令和5年度事業計画を決定した。JA共済をめぐる事業環境・課題と今後の方向性、計画のポイントについて、村山美彦代表理事専務に聞いた。   デジタルで共済未加入者との接点づくりを ■JA共済事業を取り巻く環境と課題から。  新型コロナウイルスが感染拡大を繰り返すなか、70年にわたり運営してきたJA共済事業も大きな転換期を...

〈行友弥の食農再論〉寝た子を起こす

 消費者庁が10日、風評被害に関する今年1月時点の調査結果を公表した。福島第1原発事故を受けて10年前から行っている調査で、大都市圏と被災地の消費者約5000人が対象だ。今回「放射性物質を理由に購入をためらう」食品の産地として「福島」と答えた人の割合は5.8%で、調査開始以来最低になった。  喜ばしいが、気になる傾向もある。食品の検査体制を「知らない」とする消費者が増えていることだ。第1回(13年2月)は22.4%だったが、今回は63%。福島県では現在もすべての県産品で放射性物質の検査が行われているが、それを知らぬまま食べている人が多いことになる。  実は、福島県産品の購入をためらう人が最...

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日本農民新聞 2023年3月25日号

このひと   いま、なぜ輸出なのか ~農林水産物・食品の輸出促進の意義~     農林水産省 輸出・国際局長 水野政義 氏    激変する国際情勢から食料安全保障の強化が重要な課題となっているなか、政府は、農林水産物・食品の輸出に力を入れている。改めて輸出促進の意義を、農林水産省の水野政義輸出・国際局長に聞いた。   農業者の所得向上のためにも ■なぜ、農林水産物・食品の輸出なのか?  人口減少等で国内市場が縮小していく一方で、アジアほか世界の食市場は大きく拡大しており、この世界の需要を取り込んで輸出を拡大してい...

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日本農民新聞 2023年3月15日号

〈本号の主な内容〉 ■第64回全国家の光大会  京都で3年ぶり実開催=家の光協会 ■春夏野菜の病害虫防除 虫害篇  農研機構 植物防疫研究部門 作物病害虫防除研究領域  生物的病害虫防除グループ長補佐  櫻井民人 氏 ■春夏野菜の病害虫防除 病害篇  農研機構 植物防疫研究部門  作物病害虫防除研究領域 生物的病害虫防除グループ長  窪田昌春 氏 ■令和4年度 JA営農指導実践全国大会  JA全中が開催 ■JA全農グループ事業をサポートする わが社の成長戦略  ㈱全農ビジネスサポート 代表取締役社長  久保田治己 氏 ■JA共済システムを支える わが社の...

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