日本農業の発展と農業経営の安定、農村・地域振興、安心・安全な食料の安定供給の視点にこだわった報道を追求します。

コラム

ワンフレーズ この人 ここで(20210120)

 「今年のJA全国大会決議の中に、全JAで農福連携をやろうと高らかに謳っていただきたい」と語る皆川芳嗣元農水省事務次官(農中総研理事長)。「JA兵庫中央会にお願いして、JA地区内に就労継続支援事業所がいくつあるか等をまとめてもらった。農福に取り組む際の連携する相手はどのJAにも存在することが分かった。全国のどのJA地区内もそうであろう」と。「社会の中でなかなか解決できなかった課題に対し、農業だから、農村だからできることがいっぱいある。その手段や資源を農協は色々もっていると思う。その典型事例が農福連携であり、農協活動の重要な要素として取り入れてもらいたい」と、日本農福連携協会会長として、熱い思い...

〈蔦谷栄一の異見私見〉withコロナ時代が求める「地域社会農業」

 新しい年を迎えたが、2020年は欧米では年末にワクチン接種が開始されたとはいえ、一方で変異種が猛威を振るい始めるなど、コロナの影響は長期化・恒常化しそうな気配だ。暮らしや経済等への影響が一段と深刻の度を増し加えていくことが懸念されるが、こうした動きと併行して気候変動対策の流れが加速するとともに、我が国農業では米過剰の顕在化、農業経営体の減少等、構造的な問題が顕在化・深刻化した一年でもあった。  コロナについてはさまざまな論評が飛び交っているが、本質的には感染症対策として3密回避が絶対要件となる中で、都市化することによって発展してきた近代文明のあり方が問われているように受け止めている。土から...

〈行友弥の食農再論〉「よい仕事」をつくる

 筆者が新聞記者として最後に書いたのは労働者協同組合(ワーカーズコープ)に関する記事だった。毎日新聞夕刊の「人模様」欄で、当時の日本労働者協同組合連合会理事長、永戸祐三さんを紹介した。取材の経緯はよく覚えていないが、その年(2012年)が国際協同組合年だったことと、前年の東日本大震災が関係していたように思う。記事が掲載されたのは、現在の会社に転職した後の同年7月9日だった。  永戸さんは熱い人だった。東北の被災地におけるワーカーズの活動を説明し「今こそ我々の力が試されている。グローバル化とマネー資本主義で傷んだ社会を、市民が主人公になる社会に変革しなければ」と身を乗り出して語った。  恥ず...

ワンフレーズ この人 ここで(20201214)

 農村部の気象・気候について、「数kmで予報が違う、温度が違う。地形によっても(条件が)変わってくる。地形の状況等と合わせて、気象データを読み解けるようになれば、それは鬼に金棒だ」と(一社)アグリフューチャージャパンの牧秀宣副理事長(愛媛県農業法人協会会長、ジェイ・ウィングファーム代表取締役)は語る。「農家もAIだとかと言い始めた時に、(気象のデジタル化が)一緒に進めば、見えないものが見え始めると思う。見えてくれば、凄く力になる」「産業としての位置づけが出来てくると、次の世代が農業を見る目は変ってくるだろう」と展望した。(4日、気象ビジネス推進コンソーシアムと気象庁が主催のオンラインセミナーで...

〈蔦谷栄一の異見私見〉協同組合運動の変革を迫る労働者協同組合法の成立

 労働者協同組合法が12月4日に成立した。労働者協同組合の一つである「ワーカーズコープ」は、戦後の失業者対策事業に端を発し、1979年に失業者や中高年者の仕事づくりを目指す「中高年雇用福祉事業団」を結成。86年にこれを「労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会」に改組したもので、実質30年以上かけて根拠法獲得の実現に至ったものだ。  労働者協同組合法によって実現しようとする「協同労働」は、①組合員が出資、②組合員の意見を反映、③組合員が組合の事業に従事、という三原則に基づいて運営される。すなわち働く人が自ら出資し、運営にも携わる。  これまで根拠法を持たないワーカーズコープは、企業組合やN...

ワンフレーズ この人 ここで(20201127)

 農林中央金庫の奥和登理事長は、全農と共に㈱ファミリーマートと㈱日清製粉グループに資本参加することについて、「ファミリーマートでは、国産の野菜をたくさん使って欲しい。日清製粉にも国産の小麦をたくさん使ってほしい、という大きな狙いがある」、「こういった取り組みが第3、第4とあれば、少しでも国産の食材を沢山使ってもらえる機会を広げられるし、生産者に売り上げという格好で戻っていく」と話す。そして、「海外依存の現状を、少しでも国内の自給力・供給力の強化に繋げられるのではないか。良い案件があれば、しっかりと対応していきたいし、またそういう案件を作っていきたい」と決意する。 (18日、2020年度半期決...

〈行友弥の食農再論〉飢餓と飽食

 コロナ禍で「食料危機」が深刻化している。海外の低開発国や紛争地だけでなく、国内でもだ。恵まれない子どもたちを支援するNPO「グッドネーバーズ・ジャパン」のアンケートで、母子家庭など「ひとり親」世帯の食を巡る苦境が浮かび上がった。  同団体が運営するフードバンクの利用者を対象とした今年9月の調査によると、親の41・9%、子の10・5%が「食事の量が減った」と回答。「回数が減った」も親の29・4%、子の5・8%に上る。一斉休校で学校給食がなかった5月より子どもは改善したが、その分だけ親が悪化した。給食の重要性とともに、子どもたちにひもじい思いをさせまいと親が我慢する構図も透けて見える。  厚...

〈蔦谷栄一の異見私見〉農水省と環境省の連携強化で新時代を切り拓け

 安倍政権から菅政権へとバトンタッチが行われたが、官房長官として安倍政権の全般を取り仕切ってきた菅氏の首相就任であり、基本政策は継続され、大きな変化は期待できないと思っていた。それが所信表明演説で、温暖化ガスの排出量を2050年に実質ゼロを表明したのには正直驚かされた。政府はこれまで「50年に80%削減」「脱炭素社会を今世紀後半の早期に実現」の方針を掲げており、「50年までに実質ゼロ」を打ち出し、さらにその前倒しを検討しているとされるEUは勿論のこと、習主席が今年9月の国連総会で60年までに実質ゼロを表明した中国に比べても消極的との批判は免れ得ないものであった。菅首相の本気度はこれからの政策の...

〈行友弥の食農再論〉「自助」の条件

 先月の当欄で、菅義偉首相がマキャベリの信奉者であることに触れたが、スマイルズの「自助論」を読むよう同僚議員に勧めたというエピソードも日本経済新聞で読んだ。「天は自ら助くる者を助く」という格言の出典である。地盤・看板(知名度)・カバン(資金)のどれ一つない立場から、自己の才覚と努力だけで一国の宰相に登り詰めた人らしい。  首相の言う「自助、共助、公助」という順序は一般論としては正しいと思う。まず自分で頑張り、無理なら周囲に助けを求め、最後は公的支援に頼る。個人の尊厳を重んじるリベラリズムの基本であり、地方自治の「補完性の原理」(大が小を補完する)にも通じる。その原理は欧州連合(EU)を基礎づ...

〈蔦谷栄一の異見私見〉「土中環境」も加味した流域治水を

 洪水が頻発し治水についての認識は高まりつつある。  記録的な豪雨が増加しており、新聞情報では、川で洪水が起きる一歩手前の氾濫危険水位を超えた川の数が、2014年は83であったものが、19年には403と5倍近くにまで増加しているという。  こうした状況・情勢を踏まえて注目されているのが「流域治水」という考え方である。  これまで治水の中心的役割を担ってきたのはダムと堤防であるが、ダムの貯水容量や堤防の高さは過去の降水量を基にしており、近年の豪雨への対応は難しくなってきているとされる。  流域治水には「危険な浸水想定区域」にある住宅等を安全なエリアに移転させることや、「災害危険区域」にあ...

〈行友弥の食農再論〉「激辛」の料理人

 安倍一強政治がついに終わり、菅新政権が発足した。安倍前首相の辞意表明まで菅氏は「自民党総裁選への出馬は全く考えていない」と否定し続けたが、実際は早くから「ポスト安倍」に布石を打っていた。多くのメディアがそう報じているが、岸田派・石破派を除く自民党の主要派閥が足並みをそろえた結果を見ても明らかだ。  横浜で記者をしていた22年前、まだ衆院1期目だった菅氏に選挙情勢などを聞いたことがある。取材対応は丁寧で、情報収集力の高さや分析の鋭さにも感服した。半面、自分の本音は見せず、常に人を「値踏み」しているような冷徹さも感じた。  本社経済部のデスク時代には、部下の総務省担当記者が愚痴をこぼしていた...

〈蔦谷栄一の異見私見〉無視できない農業からの温室効果ガス排出

 今年は「令和2年7月豪雨」と呼ばれるように九州や岐阜・長野で記録的な豪雨により大きな洪水被害を発生したが、長梅雨が終わってほっとできるかと思えば、今度は40℃に迫る〝危険な暑さ〟の連続。秋に入っての台風被害発生への懸念が募る。異常気象が恒常化するという以上に、〝異常〟の程度が加速しているのが何とも怖い。  地球温暖化の原因として二酸化炭素を中心とする温室効果ガスが着目され、産業革命、特に戦後の成長経済の中で石炭、石油、天然ガス等の化石燃料の使用増加が原因とされる。ところがデイビッド・ウォレス・ウェルズの『地球に住めなくなる日』では、化石燃料を燃やして大気中に放出された二酸化炭素の半分以上は...

〈行友弥の食農再論〉命を思う夏

 コロナ禍で今夏の帰省は断念したが、筆者の生まれ故郷は北海道函館市。例年なら夜景見物などの観光客でにぎわっているはずの函館山のふもとに、小さな石碑が建っている。第2次世界大戦中の「学徒援農」の記念碑だ。  日本の敗色が濃くなった1944年から翌年の終戦まで、食料増産のため約20万人の若者が北海道の農業地帯に送り込まれた。戦地へ出征した「学徒出陣」は大学生が中心だったが、援農は10代半ばの少年たち。軍需工場などで働いた「学徒勤労動員」の農業版である。  当時14歳だった父も、函館から十勝へ派遣された。地平線まで広がる畑で未明から日没まで続く作業に嫌気がさし、友人と2人で馬を盗んで逃げだした。...

〈蔦谷栄一の異見私見〉異常気象は行き過ぎた近代化・工業化への警鐘

 この7月には熊本を中心に宮崎、鹿児島で記録的な豪雨と洪水。間もなく豪雨は東に飛んで岐阜、長野で。さらに福岡や大分、広島でも発生し、甚大な被害をもたらした。しかも日本でのこうした非常事態発生に目が釘付けになっている間に、お隣の中国でも記録的大雨により長江流域で洪水が発生し、東京都の人口を上回る1500万人もが避難し、経済損失は何と1.3兆円に及ぶ見通しとの報道もある。異常気象は日本にとどまらず、地球規模で頻発しており、大雨、干ばつ、森林火災等が各地で発生している。  鬼頭昭雄『気候は変えられるか?』によれば、地球の気候の変動は、「大気・海洋・雪氷圏などからなる気候システム自体の内部変動による...

〈行友弥の食農再論〉グリーンリカバリー

 先日、ある講演会で残念な話を聞いた。新型コロナウイルスの影響で休業を余儀なくされた人が農業現場へ働きに行ったが、その後で「あんなひどい仕事とは思わなかった。二度とやりたくない」と感想を漏らしたという。外国人技能実習生らが来られなくなり、人手不足に陥った農業を、休・廃業に追い込まれた業界の人々が支えれば一石二鳥だし、新規就農者を増やす呼び水にもなるのでは、と期待していたが、少し甘かったようだ。  こんなことでは、ますます農業が敬遠されてしまう可能性もある。それに、やはり技能実習生らは劣悪な条件で酷使される存在だったのか、と胸が痛む。  もちろん、実習生を手厚く処遇してきた農業者もおり、講演...

〈蔦谷栄一の異見私見〉期待したい「農林水産省環境政策の基本方針」の全面展開

 新たな食料・農業・農村基本計画がスタートした。基本構図は従来方針を踏襲しながら高齢化や人口減少の進行を踏まえて地域政策の展開を強化しようとしているように理解される。環境政策については、第3「食料、農業及び農村に関し総合的かつ計画的に講ずべき施策」の2「農業の持続的な発展に関する施策」の一番最後となる(8)で「気候変動への対応等への環境政策の推進」に取り上げられているように位置づけはきわめて弱い。  筆者が座長をつとめる「持続可能な農業を創る会」は、基本計画の抜本的見直しを求めて2月に提言をとりまとめ、農水省事務次官への提言・要請を行った経過がある。その提言の主となるのは、①持続可能な農業の...

〈行友弥の食農再論〉本当に必要な人へ

 二十数年前、記者として横浜に勤務していたころ、寿町を何度か訪ねた。かつては港で働く日雇い労働者たちが暮らした地域。東京の山谷、大阪の釜ヶ崎と並ぶ「日本三大ドヤ街」の一つだ(ドヤは「宿」の隠語で、低料金で泊まれる簡易宿泊所のこと)。たまたま寿町の住人を支援する団体の幹部と飲み屋で知り合い、興味を抱いた。  昔は物騒な事件が多かったそうだが、意外に静かだった。その幹部は「もう、ここは労働者の街とは言えない。今は生活保護で暮らす高齢者や病人の方が多い」と教えてくれた。バブル崩壊後、日雇い仕事が激減したという。  他のドヤ街も同じらしい。先日、釜ヶ崎の現状を描いたNHKのテレビ番組を見た。段ボー...

〈蔦谷栄一の異見私見〉コロナで加速させたい田園回帰の流れ

 「田園回帰志向強く」「東京圏在住 半数『移住に関心』」「農業人気」は、先の5月24日付日本農業新聞の第1面真ん中に掲載された記事の見出しである。内閣官房まち・ひと・しごと創生本部が、東京・埼玉・千葉・神奈川の1都3県の在住者を対象に行ったアンケート調査の結果を報じた衝撃的記事だ。同本部が本年1月に、20~59歳の男女1万人を対象にインターネットで実施したもので、全体の49.8%が1都3県以外での地方圏暮らしに関心があると回答している。しかも若い世代ほど移住の意向が強い傾向にあるとしている。あわせて「やりたい仕事」では、「農業・林業」が15.4%で最多となっており、「宿泊・飲食サービス」14....

〈行友弥の食農再論〉不要不急

 新型コロナウイルスが気付かせてくれた。人生がいかに「不要不急」の要素に満ちていたかを。しかし、それらを排した生活が何と味気ないものであるかを。  新型コロナウイルスで農業が受けた打撃はさまざまだ。深刻なのは、学校給食や外食などの売り先を失った酪農・畜産(特に和牛)、イベント・贈答・観光などの関連需要が急減した花き・果樹だ。もちろん、経済の低迷が続けば影響はあらゆる作目に及ぶ。消費者の低価格志向が強まり、高級ブランド品ほどダメージが大きくなりそうだ。  学校給食は別として、外食やイベントをターゲットとする高級牛肉や花は、しょせん「不要不急」の品目だったのか。農業は「ハレの日のぜいたく」では...

〈蔦谷栄一の異見私見〉新型コロナが問う “生命”への謙虚さ

 新型コロナウィルスは依然として猛威をふるっており、医療関係者の身を挺しての奮闘と、政府や自治体による緊急対策によって、かろうじてパンデミックに陥ることは回避されている。しかしながら予断を許さない状況がまだしばらくは続くことになりそうだ。安倍政権や政府による対策には批判も多いが、最悪の事態は回避されており、緊急対策という意味では、その努力は評価したい。しかしながら意識の大半を占めているのは経済問題であって、経済問題が深刻であり、経済が破綻しかねないぎりぎりのところまで追い込まれつつあることはそのとおりであるが、経済が回復すればいいという問題なのではまったくない。  新型コロナウィルスは未曽有...

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