世田谷区で「農あるまちづくり講座IN世田谷」を開講中だ。3月から6月まで、第二、第四火曜日の午後7時から8時半まで、消費者・市民を対象に農業やまちづくりに関係した講義を行い、残った時間で質疑や意見交換を行っている。
主催は都市農業研究会。川崎平右衛門顕彰会とワーカーズコープ連合会東京中央事業本部が共催。世田谷区とJA東京中央、JA世田谷目黒が後援している。江戸時代中期に武蔵野新田開発を協同の力を発揮させることによって成功に導いた立役者が府中出身で名主の川崎平右衛門。新田開発が行われた地を移動しながら毎年フェスタを開催しているのが川崎平右衛門顕彰会だ。
一昨年11月、小平市で開かれたフェスタの閉会挨拶に立ったのが顕彰会会長・山田俊男参議院議員であるが、山田会長は挨拶で自分の参議院議員として残された任期は都市農業の振興に全力投球したい旨を語られた。終わってからの懇親会の席で、山田会長に都市農業の振興と言って、具体的に何をやるのか、とボールを投げたのがワーカーズコープ連合会グループの日本社会連帯機構の永戸祐三理事長。そこでの喧々諤々の議論の末立ち上げたのが都市農業研究会で、開始したのが「農あるまちづくり講座」となる。
昨年9月にまず西東京市でスタート。6カ月にわたり、平日の午前中、12回の講義を行った。西東京市の都市計画、そこでの農地の位置づけなり現状、都市農業の実情、市民の農業活動、農業実践の基礎知識等。17名が参加。講師は基本的に地元で活躍している方々。会場はJA東京みらいの保谷支店会議室。ここでの試行・経験を踏まえて第二弾として世田谷区で行っているもので、現役世代が参加できるよう時間帯を平日の夜に変更。会場はJA世田谷目黒のファーマーズセンターの会議室。講義の中の「せたがやそだち」の取組展開と農業の実情、そして農業実践の基礎知識についてはJA東京中央が分担。また世田谷に本部がある生活クラブのメンバー数名も受講生として参加。まさにJAとワーカーズコープを中心に生協も含めた協同組合間連携によって農あるまちづくり講座は展開されている。
定員20名に対し29名の申込があったところで募集を打ち切ったのが実情で、予想以上の反応。女性が3分の2を占めると同時に、ハイキャリアの女性もかなり混じっているようで、男性も含めて農業についての関心や思いは強く、熱い意見が飛び交う。そして講義を受けて知識を得るだけでなく、実際に自らも農業をやりたい、ライフスタイルのなかに農業を取り込みたい、という人も多く、時代の流れを実感する。
こうした活動が可能なのも都市農地があってこそ。とりあえず〝2022年問題〟はクリアしたものの、次の10年先には都市農地売却の勢いが強まることは必至だ。情勢・環境は都市農地の半永久的保全措置の創出、そして揺らぐ食料安全保障を支えていくための地域自給度アップを求めている。講座を開催する中で、都市農地の半永久的保全のための提言・運動展開や首都圏での地域自給圏づくりという次の課題、ステップが見え始めている。
(農的社会デザイン研究所代表)
日本農民新聞 2023年5月18日号掲載