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〈蔦谷栄一の異見私見〉「農あるまちづくり講座」で〝真〟の准組合員づくり

2023年8月5日

 本コーナーの6月5日号で書いたように、本年3月に世田谷区で「農あるまちづくり講座IN世田谷」を開講したが、先の6月27日に無事に終了した。月2回、第二、第四火曜日の午後7時から8時半まで、消費者・市民を対象に農業やまちづくりに関係した講義を行い、残った時間で意見交換等を行ってきた。

 定員20名に対し、申し込み締切りを間近にして、あっという間に20名を超え、あわてて募集を締め切った時点で参加者が29名になってしまったことに象徴されるように、本講座に対する消費者・市民のニーズには想定以上のものがあり、またきわめて熱心に受講いただいた。先に本講座を開いた西東京市では、リタイアした世代を対象に時間帯は平日の午前に設定したが、世田谷区では現役世代も参加できるように、ということで、平日の夜に変更してみた。結果的には現役世代が8、9割で、女性が7割ほどを占め、年代的には40代から50代が中心となった。受講者の多くは農業や食への強い関心を持っているだけでなく、自ら何らかの活動を展開しており、参加の目的も座学で知識を増やすという以上に、講座を通じて農業に参画している消費者・市民どうしでの協同活動やスローフード等の仲間づくり、コミュニケーションの拡大をねらいとする人が多いように受け止めた。したがって、講義を受講する以上に、自分やっていることの紹介や仲間づくりのための呼掛け等、自己表現をしたい、意見交換の時間がもっともっと欲しい、という雰囲気を強く感じさせられた。

 本講座は、主催は都市農業研究会。川崎平右衛門顕彰会とワーカーズコープ連合会東京中央事業本部が共催。世田谷区とJA東京中央、JA世田谷目黒が後援。JA東京中央には講座2コマを受け持っていただき、JA世田谷目黒にはファーマーズセンターの会議室を使わせていただくなど、特段のご協力をいただいた。またワーカーズコープが実質事務局を担ってもらうなど、協同組合間連携があってこそ本講座を成功させることができた。

 終了してあらためて強く感じるのは、この「農あるまちづくり講座」への消費者・市民のニーズが非常に高いこと、またJAの准組合員対策としてきわめて有効であるということである。こうした自ら体験農園やコミュニティガーデン等に参画し、農業をつうじてコミュニケーションを求めているたくさんの消費者・市民にJAの准組合員となってもらえれば、まさに准組合員は地元農業の応援団となって一緒に活動する存在となる。JA改革で正組合員と准組合員の比率が逆転していることが問題視されているわけであるが、むしろこうした准組合員とよぶに相応しい消費者・市民をつくっていくべく、JAグループあげてJA主導による「農あるまちづくり講座」を展開していくことこそが必要なのではないか。

 「農あるまちづくり講座」を通じて准組合員と正組合員とが交流し、准組合員に体験農園や援農等により農地を開放していくことが、農業の持続性を高めるとともに、地域コミュニティを活性化させ、あらたな地域づくりにつながっていく。扉を押し広げていきたいものだ。

(農的社会デザイン研究所代表)

日本農民新聞 2023年8月5日号掲載

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