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〈行友弥の食農再論〉コンビニおにぎりから考える

2023年4月25日

 ある大学で非常勤講師を務めているが、講義で毎年「コンビニおにぎり」の話をする。おにぎり1個に使われる米の量を45gとして、農家が受け取る米代金は10円強で、諸経費を差し引いた農家の手取り(家族労働費)は3円程度。農林水産省の統計に基づいた乱暴な計算だが、大きくは違わないだろう。

 学生の多くはショックを受けるようだ。講義後に提出する感想文に「もうコンビニおにぎりは食べない」と書いた子もいる。そういう時は「食べていいんだよ。農家にとってはコンビニも大事な売り先なんだから」と説明する。

 「流通・加工業者が暴利をむさぼっているわけではない」とも話す。いつでも手軽に食べられる利便性を消費者に提供するため、多くのコストがかかっていることを理解してもらうことが授業の意図だ。

 農水省の試算によると、2015年に国内で生産された食用農林水産物は9.7兆円で、輸入を足しても11兆円余り。それが飲食の最終消費額では83.8兆円になる。このギャップを埋めることは難しいが、食べる側もその意味を考え、自らの消費のあり方を見つめ直してほしい–そんな思いで語っている。

 物価が急騰し、生産者がコスト増に悩むなか「もっと価格転嫁を進めよ」という声が高まっている。「暴利をむさぼっていない」と書いたが、小売業界の交渉力が強過ぎ、生産者や加工業者がしわ寄せを受けている面もある。そこは是正が必要だ。

 一方、農林水産物は値上げすると安い輸入品に市場を奪われ、場合によっては需要そのものが縮小してしまう悩ましさがある。「価格転嫁より、生産者の所得を直接支払いで補償した方が合理的」とする意見には説得力がある。

 それでも、と思う。税金で所得を補えば生産者も消費者も(納税者としての負担は増えるが)痛みを感じずに済む。しかし、そこで本質的な問題が覆い隠されはしないだろうか。

 海外の生産者や消費者も含め、私たちは一つの地球を分かち合っている。今日、自分が何をどう消費するかが、誰かの人生を、自分自身の未来を変えるかも知れない。政策論を超えて、そのことを皆で考えたい。

(農中総研・客員研究員)

日本農民新聞 2023年4月25日・5月5日合併号掲載

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