日本農業の発展と農業経営の安定、農村・地域振興、安心・安全な食料の安定供給の視点にこだわった報道を追求します。

日本農民新聞 2023年7月5日号

2023年7月5日

このひと

 

JA女性組織活動のこれから

 

JA全国女性組織協議会

会長
久保町子 氏

 

 JA全国女性組織協議会は、5月25日の通常総会で、令和5年度の活動計画を決定するとともに新執行部を選任。新会長に久保町子さん(長野県JA信州うえだ)が就任した。久保新会長に、令和5年度のJA全国女性協の活動とJA女性組織のこれからへの想いを聞いた。


 

「食」中心にSDGsにも向き合って

まず、会長就任の抱負から。

 今、私たちの抱えている課題をみんなで共有し、組織を〝丸く長く〟という思いで、まとめていければと思っている。

 私たちに何ができるかを考えたときに、営農に携わっていない部員も多いなかで、やはり「食」を中心に据えて考えるべきだと思っている。食を預かる母として、農業者でもあり消費者でもある立場から、食を取り巻く活動を充実させていきたい。

 私の地元では米消費拡大に向けて米粉を使ったお菓子作りなどの料理教室を開催しているが、各地域で地元産物を活用し様々な工夫をしてほしい。

 女性組織をあげて取組んでいるSDGsも、17の目標のうち、私たちが一番向き合っていかなければならないものを選んで、例えばフードドライブ活動などにより一層力を入れていきたい。

 

若い世代とともに新しい活動へ挑戦

JA女性組織が抱える課題をどう受け止めているか。

 一番の課題は部員の減少。特にコロナ禍で活動が制限されたことで集まることができなくなった。それが続いて「集まらなくてもいいんだ」と、みんなが思ったことが一番のネックだ。

 このことも踏まえ、これからはこれまでの活動に加え、違った視点で新しい活動を考え、挑戦していく必要性を感じている。その一つとして、アフターコロナとなった今、IT機器の活用を通じて、対面の活動と組み合せて新しい時代の女性組織活動を進めたいと思う。

 キーワードは、〝勉強〟の積み重ねだと思う。組織も高齢化が進んでいるなか、例えば自分達の食や地域の伝統食など、次代に受け継いでいかなければならない食の課題を始め、若い世代と一緒に積極的に勉強会等を開いていきたい。

 フレッシュミズも、組織のない都道府県がまだまだ多い。2年間全国理事を務めたが、フレッシュミズの理事も2名いて、考え方が非常に刺激になったし勉強になった。どうしても固定観念がでてしまいがちだが、若い人達と一緒に活動することによって新しい風を吹かせたい。全国の会議にも、もっともっと若い世代がでてきてほしい。そうすると組織の雰囲気が変わってくるのではないか。

 JA運営への女性参画もまだまだ進んでいない。JA組織はまだまだ男性社会。女性理事15%の目標は、あくまでも目標で、そこに至ればよいのではなくさらに増やしていく目安ではないか。部会の長などの組織にも女性を登用して欲しい。せめて副部会長ぐらいからでも始めてみたらどうか。

 正組合員加入に関しては、女性部でも会合のたびに必ず声がけしている。しかし「父ちゃんが(息子が)、なっているからいい」「一家でそんなに正組合員にならなければいけないのか」と、躊躇されることが多い。何のために正組合員が必要なのか、なぜ女性にも加入してもらいたいのか、JAの役職員はもっと明確にわかりやすく説明すべきだと思う。私たち女性部も、JAがあってこそ活動ができていることを、もっとしっかり認識しなければならない。

 

「つながろう☘、まもろう☘、かかわろう☘」実践へ

農業を取り巻く課題と女性協活動について。

 4年度からのJA女性組織3カ年計画「JA女性 想いをひとつに かなえよう?」の実践2年度目として、3つの重点実施事項「つながろう☘」「まもろう☘」「かかわろう☘」を確認し、JAを拠りどころに地域や仲間と実践していく。

 「国消国産」をキーワードに、食料を取り巻く現状や、食料安全保障、農業の多面的機能などについて学習し、仲間とともに様々な活動を通じて消費者や地域住民に食と農の大切さを発信していきたい。

 今日の肥料・飼料を始めとした農業資材価格高騰は、海外からの輸入に依存していることから起きている。飼料にしても耕作放棄地がどんどん増えていくなかで、水田を活用して子実用とうもろこしや飼料用米等をもっと作るべきだと思う。

 環境問題では、長野県中央会ではバイオ炭の生産に取組んでおり、女性協議会も参加している。まだ、試験的な段階だが、稲作農家のもみ殻や果樹農家の枝を燻炭にして活用することを、女性部に拡げようと呼びかけている。J-クレジットまでつながればと思っている。

 環境問題もSDGsも、地域の仲間、全国の仲間とともに、何ができるかを考え協力し合うことから始めていきたい。

 

「仲間」と「感謝」を忘れずに

自身の活動の原点は?

 長野県上田市の果樹農家に生まれた。稲作農家に嫁ぎ兼業で寮の管理人を夫婦でしていたが、21年前に夫が亡くなった。

 機械の使い方は夫から教わっていたこともあり、未経験ながら田んぼや畑を耕していた。その後、農業技術員から奨められ花き(ひまわり、コスモス)に転換し、栽培ハウスも建てシャクヤクも栽培し始めた。このときにJA女性部に誘われ加入した。

 当時、JAの生活指導員が非常に活発な人で、彼女の指導のもとに、空いている畑を借りて野菜を作り直売所に出荷し、自分達の活動資金を得たことが楽しかった。私の場合、自分で農業を始めたことで女性部と出会い、JAと関わり、素晴らしい仲間ができた。

 夫が亡くなったときは途方に暮れたが、みんなが助けてくれた。「一人ではできないことを仲間とともに」。このスローガンがぴったりな女性部活動を続けてきた。これからも『仲間』『感謝』を忘れずに、多くの課題をみんなで解決につなげられるよう、明るく、楽しく活動していきたい。


〈本号の主な内容〉

■このひと
 JA女性組織活動のこれから
 JA全国女性組織協議会 会長 久保町子 氏

■JA全農 令和5年度事業のポイント
 〈くらし支援事業〉
 JA全農 くらし支援部 山崎智弘 部長

蔦谷栄一の異見私見「直面する問題への対応に終始した中間とりまとめ」

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