このコラムは1月15日に書いている。昨日は正月の門松や注連飾りを焼く光景を見た。筆者の住む地域では「どんど焼き」と呼ぶ。調べてみると「どんど」の語源は「歳徳(とんど)」、つまり歳神(としがみ)のこと。この歳神がいる縁起のいい方角が「恵方」である。毎年変わるが、今年は東北東だとか。 福を呼ぶため、この恵方を向いて節分に太巻き寿司を食べる風習が関西地方の一部にあった。その「恵方巻」が大手コンビニチェーンによって全国に広がったのは、ここ十数年ほどのことか。 しかし、節分の需要を当て込んで製造された恵方巻が大量に廃棄されている。予約販売が主流のクリスマスケーキと違って需給のミスマッチが起きや... 2019年1月25日
「今年の漢字」が「災」に決まった。災害続きの日本だが、確かに今年は格別だ。愛媛や広島を襲った西日本豪雨、大阪北部地震、北海道胆振東部地震、相次ぐ台風、気象庁が「一つの災害」と表現した記録的猛暑。2月には福井県で37年ぶりの大雪も降った。 「災」という字は燃えさかる炎に見えるが、上半分の「巛」ははんらんを繰り返す「あばれ川」を表すという。津波や高潮を含め、水が猛威を振るう日本にふさわしい気もする。 水と言えば、水道法が改正された。人口減による収入減と設備老朽化で自治体の水道事業は危機にひんしている。改正の柱は事業の広域化(市町村を超えた連携)と民間に運営権を売却する「コンセッション(公... 2018年12月25日
農地中間管理機構(以下「農地バンク」)の見直し方針が決定した。来年が農地中間管理機構法で定める、施行後5年を目途とする制度見直しの年となっていることにともなっての見直しではある。農水省の見直し方針案を了承するにあたって野村哲郎・自民党農林部会長が述べた「基本は(地域農家の)話し合いだ。人・農地プランがないといけない。そこに尽きる」との見解は重要で、まさしく的を突いた発言だ。 この数年、農地集積の停滞は明らかで、農地バンクの大幅な見直しは避けられない状況ではあった。すなわち2014年の施行時50.8%であった担い手への農地集積率を、23年度までに8割とする政府目標に対し、17年度は55.2... 2018年12月5日
以前、行きつけの居酒屋でベトナム人の若い女性が働いていた。名前はリンさん。「まだ勉強中」の日本語は少し怪しかったが、接客態度は明るく好感が持てた。「国に帰ったら日本語を生かせる仕事をしたい。日本にもまた来たい」と笑顔で話した。 1年ほどで姿を見なくなったが、コンビニなどでもグエンさん、ドンさんなど、ベトナム人らしい名札の従業員が増えた。逆に中国系らしい漢字の名前は少なくなった。世界第2位の経済大国は、もはや外国人を呼ぶ側になりつつある。 「労働者を呼んだつもりが、来たのは人間だった」。スイスの劇作家マックス・フリッシュがそう書いたのは50年以上前。スイスも小国ゆえの労働力不足に悩み、... 2018年11月25日
TPP11は来年1月の発効見通しが示されるとともに、日米物品貿易協定(TAG)交渉も来年1月から開始される。TAGはFTAではない、いや、FTAを詭弁を弄してTAGでごまかしているにすぎない、との論議もある。要はアメリカがTPPを超える水準での貿易自由化を日本に強要しようとして圧力を強めていることに変わりはない。 こうした貿易自由化の進展、農産物貿易の拡大、すなわち低価格農産物の輸入増加を想定し、その対策として取り組まれてきたのが「農林水産業・地域の活力創造プラン」であると理解される。2016年11月に改訂された中身をあらためて確認しておけば、(1)国内外の需要を取り込むための輸出促進、... 2018年11月5日