東京を中心に埼玉県も含め、自治体単位で一般市民を対象に、月2回、ほぼ半年間に及ぶ「農業振興と緑地を含めた都市農地保全の取組みや、農業経営の実情、市民の農への参画、地産地消の推進、持続可能で循環型の社会づくり、歴史などを学ぶ」農あるまちづくり講座を開催してきた。労働者協同組合と筆者が事務局長を務める川崎平右衛門顕彰会が中心になって立ち上げた都市農業研究会が主となり、地域によってはそこに住む市民を中心に実行委員会を立ち上げて主催者とし、これに共催する形も交えながら、西東京市、世田谷区、所沢市、足立区で既に修了し、この11月から日野市での講座をスタートさせた。
いずれも定員は20名とし、一部、自治体による後援の取り付けに時間を要して事前のチラシ配布がほとんどできず、受講者が10名程度にとどまったところもあったが、それ以外はほとんどが定員を上回った。そしてJAや自治体等の協力もあって、地元で農業や地産地消をも含む農的活動で活躍する、地域における食と農のキーマンからの具体的な取組みについての話しに耳を傾け、その後は熱い意見交換を重ねるなど、盛況を続けてきた。
5回目となる日野市での講座は、市民で実行委員会を立ち上げて主催者となり、企画も市民そして女性が中心となったこともあって、女性目線を重視。例えば講座の時間帯である19時から20時半は、子どもの世話や食事の用意等で会場に足を運ぶことができない女性も多いとして、Zoomでの参加を可能にするとともに、Zoom参加も難しい人、さらには復習したい人向けに一定期間見ることのできる動画配信も始めた。また講義と意見交換の時間をしっかり確保すると、受講生の自己紹介や交流する時間が限られることから、別途、参加者の「自己紹介シート」を作成して配布するなど、さすがと唸らされた。
受講者は、その後の追加もあって40名近い参加となったが、36名の時点での自己紹介シートを見ると、男女比はほぼ男2女3、農業者2名、JA職員3名、市職員3名、市議会議員2名、残り26名がそれ以外の一般市民となっている。この一般市民のうち既にせせらぎ農園等のコミュニティガーデンや家庭菜園、援農等具体的に農業に参加している人がほぼ半数を占め、新規就農や日野市への移住を目指す人もいる。加えて日野市の環境が影響して緑地や雑木林の整備に参画している人が5名いた。そして都市農地を残したい、農地保全も含めて総合福祉的な場所にしたいとの意見もいくつか明記されている。
ところで本講座は開催地を管轄するJAの後援を得てすすめてきており、JAの会議室の利用や栽培の基礎知識の講義、さらに足立区、日野市では組合長直々に講義いただくなど連携を強めてきた。管内には農業に関心を持つ市民が多く潜在しかつ増えてきており、これを顕在化させ関係性を持ち深めていくことは、JAが地域協同組合としてJAらしい活動を展開していくためにも欠かせない。JAが後援から共催に一歩すすめて地消地産、地域自給圏づくりのベースとして「農あるまちづくり講座」を活用・連携していくことを期待したい。
(農的社会デザイン研究所代表)
日本農民新聞 2024年12月5日号掲載