TPP11は来年1月の発効見通しが示されるとともに、日米物品貿易協定(TAG)交渉も来年1月から開始される。TAGはFTAではない、いや、FTAを詭弁を弄してTAGでごまかしているにすぎない、との論議もある。要はアメリカがTPPを超える水準での貿易自由化を日本に強要しようとして圧力を強めていることに変わりはない。
こうした貿易自由化の進展、農産物貿易の拡大、すなわち低価格農産物の輸入増加を想定し、その対策として取り組まれてきたのが「農林水産業・地域の活力創造プラン」であると理解される。2016年11月に改訂された中身をあらためて確認しておけば、(1)国内外の需要を取り込むための輸出促進、地産地消、食育等の推進、(2)6次産業等の推進、(3)農地中間管理機構の活用等による農業構造の改革と生産コストの削減、(4)経営所得安定対策の見直し及び日本型直接支払制度の創設、(5)農業の成長産業化に向けた農協・農業委員会等に関する改革の推進、(6)更なる農業の競争力強化のための改革、(7)人口減少社会における農山漁村の活性化、(8)林業の成長産業化、(9)水産日本の復活、(10)東日本大震災からの復旧・復興、となっている。そしてそのキーコンセプトが「強い農業の創造」であり、「農業・農村全体の所得を今後10年間で倍増」させることを目標としている。まさに農業の産業化、大規模化・大量生産によるコスト低減の徹底を対策の主眼としている。
このところ現場を歩いてみて感じる第一が、地域力の低下である。確かに一部の農家、もしくは集落法人等への農地の集積が進行しているようには見えるが、農業の産業化というようなことではなく、頼まれれば農地を荒らしておくわけにはいかない、ということで結果的に農地の集積につながってはいるものの、その次がいない。中には若手農家で、地元農家と連携もし、規模拡大を実現しているものもあるとはいえ、ごく一部にとどまっているのが実情だ。すなわち農業の産業政策を徹底してもその効果は限定的であり、逆に地域・担い手が分断され、中小農家の脱落を促進する力のほうが強く作用していると言わざるを得ない。
あらためて思うのは、農業は地域で守る、ことの重要性である。大規模農家だけで農業を守ることはできない。畦の草刈り、水路の整備をはじめ農村・農業環境の維持は、中小農家、家族経営があってこそ可能であり、そうした中で大規模化も可能となる。特定の農家の大規模化による農業の産業化ではなく、多様な担い手がいて、これを上手に連携させての地域農業を推進していく、産業政策と地域政策とをバランスさせた政策こそが求められる。これを基本としながら都市住民との交流を促進し、地域農業によって生産される農産物を支持する消費者をグリップしていく(=コミュニティ農業)、さらには農家同士の物々交換や手作りの領域を増やしていくことによって地域循環を膨らませ、現金支出を抑制していく。
このように考えていくと、地域農業、コミュニティ農業、地域循環を創出していくには、農協が大きな役割を果たしていくことが欠かせない。今こそ農協の出番ではないか。
(農的社会デザイン研究所代表)
日本農民新聞 2018年11月5日号掲載