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〈行友弥の食農再論〉災厄続きの1年

2018年12月25日

 「今年の漢字」が「災」に決まった。災害続きの日本だが、確かに今年は格別だ。愛媛や広島を襲った西日本豪雨、大阪北部地震、北海道胆振東部地震、相次ぐ台風、気象庁が「一つの災害」と表現した記録的猛暑。2月には福井県で37年ぶりの大雪も降った。
 「災」という字は燃えさかる炎に見えるが、上半分の「巛」ははんらんを繰り返す「あばれ川」を表すという。津波や高潮を含め、水が猛威を振るう日本にふさわしい気もする。
 水と言えば、水道法が改正された。人口減による収入減と設備老朽化で自治体の水道事業は危機にひんしている。改正の柱は事業の広域化(市町村を超えた連携)と民間に運営権を売却する「コンセッション(公設民営)方式」導入である。
 前者に異論はないが、問題は後者。水道事業は地域独占で競争原理が働かないため、民営化すると水道料金が高騰し、運営もずさんになりやすい。海外では失敗続きで、パリやベルリンなど再公営化した例も多いのに、なぜいま導入するのか。
 もう一つ「水」絡みでは水産改革法も成立した。地元漁協に漁業権を優先的に割り当てる仕組みを(条件付きながら)やめる。資源管理の対象魚種では、漁船ごとに漁獲枠を割り当てる制度を導入。漁業権などの審議をする海区漁業調整委員会の公選制を廃止。いずれも漁協の力を弱め、漁業者の意見が行政に反映されにくくなる。
 規制改革推進会議では「漁業権は入札で決め、売買できるようにせよ」といった議論も出たそうだ。農業委員会の公選制も2年前に廃止されたが、水道法改正も含めて根っこは同じ。地域の自治を否定し、農地や水、漁場などの公共財を市場原理に委ねる思想である。
 もちろん、漁業も水道事業も改革は必要だろう。しかし何より解せないのは、これらの重要法案がまともな国会審議もなく成立してしまったことだ。「外国人材」の導入を巡る入国管理法改正も含め、政府・与党の強引さと拙速さは常軌を逸している。
 やはり今年は災厄続きの1年だった。だが、決まったものは仕方がないと「水に流す」わけにはいかない。いずれも今後の運用を国民が監視していく必要がある。
(農中総研・特任研究員)

日本農民新聞 2018年12月25日号掲載

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