なぜ、国産野菜か?
 私が惣菜や弁当を担当するようになった1998年当時、ごま和えやお浸しは、中国産の冷凍ほうれんそうを使って作っていた。工場では解凍されたほうれんそうをアクリル板上に流しながら夾雑物を取り除いていた。その過程でどんどん黒ずんでいくが、解凍したそのままを使うことは出来ないと言う。夾雑物をとり汁気を切った冷凍ほうれんそうのごま和えやお浸しが、果たしてお客様のニーズなのか。このメニューを常に売場に置かなければいけないという、売り手側の思いこみでやっているとしたら、大きな勘違いをしているのではないかと思った。
 試しにある地区で、フレッシュのほうれんそうを近くから仕入れてごま和えやお浸しを提供したら、こちらの方が圧倒的に売れた。たとえ年間を通じて売場に並べることができなくても、私どもの目指さなければならないのはこの世界だと思った。しかし、青果物としてスーパーマーケット等に出荷するやり方のままでは、コストが3〜4割も上がる。そこで、段ボールから通い容器に変える、袋詰めをやめる、規格を量販店向け長い丈にしてより美味しくより収量を増やす等々、生産者とともにコスト圧縮の方法を勉強しながら取り組んできた。いろいろな課題はあったが、とにかくベクトルを国産に合わせ、それを可能にする方法を追求してきた。

現在の商品に占める国産野菜の使用割合は?
 07年度の実績で93.8%、約10万tになる。因みに肉は27.2%で鶏37.4%、豚20.7%の状況となっており、50%までもっていきたい。野菜では、ニンニク、ショウガ、タケノコなどが、まだ国産化が出来ていない。これらは100%国産とまではいかなくとも、とりあえず国産を使う努力をしようと国内産地との相談を始めている。

国産野菜使用で最も留意したことは?
 鮮度が大事だった。工場から店頭までのコールドチェーンは確立されているが、畑から工場までのコールドチェーン確立が必要だった。例えば、朝採りレタスを真空予冷しチルド車で気温5℃前後に保って市場に持ってきても、一晩市場の土間におかれてセリに掛けられる時には25℃を超えている。そこで、まずレタスから市場を介さない物流ネットワークでコールドチェーン確立に取り組み、葉物・果菜類等の非加熱野菜で順次システムを構築してきた。
 産地は季節により移動し、直接工場に搬入することが不可能な場合も多い。そこで、全国9ヶ所にプロセスセンターを設けている。中卸や荷受業者に当社専用のチルド庫を用意してもらい、産地が遠い場合、そこに一度集荷してから、当社工場に出してもらうシステムをとっている。

産地との連携のポイントは?
 前述のように、生産者だけでなく流通段階も含めたチームワークが必要だ。例えば、今回受賞対象となったほうれんそうでは、テンアップファーム-横浜丸中青果-当社というように、全国各地区に当社の野菜を担当する生産者のグループ、中卸・荷受業者がおり連携プレーで取り組んでいる。
 志の高い生産者といかに深く取り組めるか、そうした方々との輪を広げパートナーシップを大事にしていくことが、この取り組みを継続させ国産の比率を上げ続けていくポイントだと思う。リスクは絶対片方にしわ寄せてはならない。リスクはみんなで応分に負担していく方向で取り組めば、効率も上がるし仲間もどんどん増えていくだろう。

消費形態が変化する中での商品化の方向は?
 小家族化が進む中で野菜を丸ごと買うと、どうしても歩留まりが悪くなる。私どもの中食を利用することで1人暮らしの方でもバランスの良い食事を摂っていただけるようなメニューを提供していきたい。
 そのためには、キチンとした原材料を仕入れなくてはならない。トレース出来ないものを使うわけにはいかないし、農薬や肥料などの栽培管理基準も生産者と決めていきたい。硝酸態窒素を少なくする施肥方法や、殺菌剤を用いた洗浄が不要なイボなしキュウリ「フリーダム」の生産提案など、健康危害の懸念を低減するような野菜づくり・製品づくりを生産者の方々と検討していきたい。

これからの産地への期待は?
 出来るだけ規模を集積して意欲ある方に効率のよい生産をしていただきたい。コストよりむしろ、単位当たりの収量、1人当たりの生産量をいかに高めるかに視点をおき、経営としての農業を確立して欲しい。
 農産物は100%同じ形に作れない。私どものグループ事業会社にはスーパーマーケットもあるしレストランもある。そこでは青果物を青果物として販売するだけでなく、例えば形の悪いニンニクは調味料として使う等、規格外の野菜まで全てを使い切ることが出来る。青果物はたくさん穫れると安くなり、少ないと高くなるという市場経済の矛盾を常に抱えている。しかし、私どもは、相場が上がったからといって簡単に商品の値段を上げるわけにはいかない。安い時期に安く仕入れるよりも、再生産可能な一定の値段で継続的に提供してくれるパートナーが必要だ。青果物そのままだけでなく中食の原材料としての生産にパラダイムシフトしていただき、お互いに智恵を絞っていろいろな使い方を考えていけば、取り組みの幅はさらに広がっていくと思う。


2008年6月 5日号 第2821号
このひと
     株式会社セブン-イレブン・ジャパン
         取締役常務執行役員 井阪隆一 氏
 農水省の「第1回国産野菜の生産・利用拡大優良事業者表彰」で、セブン-イレブン・ジャパンが取り組んでいる「ほうれんそう国産化推進チーム」が農林水産大臣賞を受賞。また、「きゅうり品質向上推進チーム」が生産局長賞を、「契約栽培推進チーム」が農畜産業振興機構理事長賞を同時受賞した。生産者・流通業者とチームを組んで国産野菜の利用拡大に取り組む、同社の今後の方向と課題等について井阪取締役に聞いた。