日本農業の発展と農業経営の安定、農村・地域振興、安心・安全な食料の安定供給の視点にこだわった報道を追求します。

日本農民新聞 2022年3月30日(増刊)号

2022年3月30日

アングル

 

JA共済連
新3か年計画と4年度事業計画

 

JA共済連
代表理事専務
村山美彦 氏

 

 JA共済連(青江伯夫経営管理委員会会長、柳井二三夫代表理事理事長)は3月28日、臨時総代会を開き、令和4~6年度のJA共済3か年計画と、令和4年度事業計画を決定した。JA共済をめぐる事業環境・課題と今後の方向性、計画のポイントについて、村山美彦代表理事専務に聞いた。


 

〝生命回帰〟実現も保障課題別に強化を

JA共済事業をめぐる状況と令和3年度事業を振り返って。

 令和元~3年度のJA共済3か年計画では、3つの重点取組事項を掲げ、3年度はその最終年度として事業を展開してきました。

 重点取組事項の第1は、契約者数の確保に向けた、生命保障を中心とする保障提供の強化でした。

 重点施策目標は2年連続で目標達成しているものの、推進総合目標は2年連続で未達となりました。コロナ禍で訪問活動が満足にできないなか現場で苦労されている状況が、3年度も続いたことが影響しているようです。

 生命保障の実績は、医療共済の仕組改訂などもあって伸長した一方で、建物保障の実績は減少となりました。目指してきた〝生命回帰〟を実現した形にはなりましたが、各JAの保障充足状況等に応じた保障課題別の取組強化は必要だと考えています。

 生命保障の内訳を見ると、年金共済や一時払終身共済のウェイトが高く、保障性仕組みを十分に提供できていない状況です。万全な生命保障の提供に向けた万一保障と、生存保障への取組強化が必要となっています。

 第2に、新たなJAファンづくりに向けた農業・地域に貢献する取組みの強化です。

 農業リスク分野では、農業リスク診断活動の全国展開に取組んできましたが、県域・JAごとの取組格差が大きいことが課題です。引き続き、活動の浸透・定着に向けて取組む必要があります。

 地域貢献活動では、「ひと・いえ・くるま」の活動に「くらし・営農」分野を加えるとともに、地域・農業活性化積立金を活用した県域ごとの独自施策等に取組んできました。

 特に「地域のくらし・営農に貢献する取組み」(「くらし・営農」分野)に積極的に活用されていることから、今後も、地域活性化と、組合員・地域住民との接点づくり・関係強化に向けて取組みを強化していく必要があると考えています。

 第3に、事業の効率化・契約者対応力の強化、健全性の向上です。

 組合員・利用者の利便性向上、JAの事務負荷軽減に向け、ペーパーレス・キャッシュレス手続きの対象範囲拡大や、固有事務手続きの削減に取組んでいます。

 今後も、事務負荷軽減、契約者対応力の強化に向けては、事務効率化への取組みと事務負荷軽減効果を踏まえた共済事業実施体制の整備を進めていく必要があります。

 あわせて、連合会による高品質なJA指導・サポートの実践に取組んでいくことが求められます。

 健全性の向上については、永続的な健全性・信頼性の強化に向けて経営体力の積上げおよびリスク削減、統合リスク管理態勢の段階的な整備・高度化に取組んでいます。

 今後も、巨大災害や金利変動等のリスクへの対応と統合リスク管理態勢の強化に取組む必要があると考えています。

 

対面・非対面で繋がり強化へ

令和4~6年度JA共済3か年計画のスローガンと主要課題は?

 JA共済では、大きな環境変化のなかにあっても、変わらぬ「安心」を提供し続け、「農」や「くらし」の未来に向けて、地域とともに支えていくことを目指し、令和4年から6年までのJA共済3か年計画において「新たな時代に、変わらぬ安心を~地域とともに、農業とくらしの未来を支えるJA共済~」をスローガンに掲げ、取組みを進めてまいります。

 その中で、これまでの総括と事業環境の変化を踏まえ、令和4~6年度JA共済3か年計画の策定にあたっては、課題を以下のように整理しました。

 第1に、保障・サービスの提供強化です。

 JA共済は、もしもの時の保障にとどまらず、交通安全や認知症の予防など、暮らしについて幅広く安心を提供する事業を展開しています。

 一方で、例えば今後、自動車運転の自動化が進めば、自動車共済の形も変わってくるでしょう。

 こうした変化を捉えながら引き続き、新たなニーズを捉えた保障・サービスの提供、接点・手続きを見直していくことが必要です。

 また、生命・農業分野を中心とした保障提供の強化に努めていくことも重要だと考えています。

 とくに、我々の使命である正・准組合員への保障提供は万全にできているのか、そうした問題意識をもって、もう一度原点に立ち戻る必要があるのではないでしょうか。

 そのためには、組合員・地域住民との繋がり強化が欠かせません。

 組合員もかつてほど、日中お会いできる方が多い状況ではありません。コロナ禍の影響も続いています。そうした中、対面による接点だけではなく、非対面による接点も充実させていく必要性が増しており、そのための仕組みを整備しています。

 第2に、持続可能な経営基盤の確保です。

 あらためて、全契約者・組合員への活動を実践する共済事業実施体制の構築が必要だと考えています。

 また、共済事業の長期安定的な展開も重要です。持続可能な経営基盤の確保により、JA共済がさらにまた農業・地域に貢献できる、このことを、組合員にもよくご理解いただく必要があると考えています。

 第3に、健全性・信頼性の強化です。

 JA指導・サポート機能の発揮に向けた連合会の体制構築を図るとともに、共済責任を全うするためのリスクコントロールと経営体力を確保していくことが必要です。
組合員・利用者から選ばれ続けるための信頼性強化につなげていきたいと考えています。

 

農業分野を「ひと・いえ・くるま」に続く 第4の柱に

令和4~6年度JA共済3か年計画の基本的考え方、重点事項は?

 基本的考え方として、組合員・利用者に「寄り添い」、包括的な安心を「届け」、農業・地域社会とより広く・より深く「繋がっていく」ことで、組合員・利用者一人ひとりに寄り添った安心と満足の提供に努めます。

 併せて、持続可能なJA経営基盤の確立・強化を実現するよう取組んでいきます。

 重点取組事項の第1は、新たな生活様式への対応の加速です。

 組合員・利用者一人ひとりに寄り添った安心と満足の提供を実現するため、仕組み・サービスの一体的展開、対面接点と非対面接点の融合で利便性を向上させることにより、生命保障を中心とした万全な総合保障の提供に取組んでいきます。

 非対面接点としては、「JA共済アプリ」「Webマイページ」などの新たなツールも活用しながら、「繋がっていく」ことを追求していきたいと思います。

 農業分野については、「ひと・いえ・くるま」に続く第4の柱になるよう、取組みを強化していきます。

 第2は、共済事業の長期安定的な展開です。

 持続可能なJA経営基盤の確立・強化を実現するため、全契約者・組合員に〝寄り添う〟活動の実践と、共済事業実施体制の整備、さらなる事務負荷軽減に取組んでいきます。

 また、JAの経営管理・経営改善(PDCA)の実践支援、システム整備に引き続き取組みます。

 第3に、長期にわたり契約者が安心できる土台・スキームづくりです。

 JA共済事業を下支えする健全性・信頼性を強化するため、JA指導・サポート機能の強化に向けた連合会組織の整備、職員の育成に取組みます。

 併せて、統合リスク管理態勢の高度化・強化、CS向上への取組みとコンプライアンス態勢の強化による信頼性の向上に取組みます。

 

Webマイページ、JA共済アプリ活用

令和4年度事業計画については?

 令和4年度からのJA共済3か年計画の初年度として、4年度の事業計画では、3か年計画の重点取組事項と連動した計画とし、これを着実に実践していくための取組施策を展開します。

新たな生活様式への対応の加速

 第1に、新たなニーズを捉えた保障・サービスの一体的展開です。

 その一つとして、「ひと保障」の取組強化として、「認知症共済」を4月に新設するとともに、保障・サービスの一体的展開として「げんきなカラダプロジェクト」における認知症関連サービスを拡充します。

 「いえ」「くるま」分野の保障提供強化に向けては、多発・激甚化する自然災害に対応した「いえ保障」の充足、競争力確保に向けた自動車共済の保障拡充などに取組みます。

 また、多様化する組合員・利用者ニーズに対応するため、共栄火災海上保険㈱をJA共済の補完として活用し、共済と保険の一体的な保障提供に取組みます。

 第2に、デジタル活用による手続き整備と利便性の高い接点の構築です。

 Webマイページを活用して非対面でできる手続きを拡充し、利便性向上を図ります。

 併せて、対面と非対面の融合による組合員・利用者との接点強化として、JA共済アプリの機能拡充を実施するとともに、Webマイページの登録促進にも取組みます。

 第3に、農業保障の取組強化と農業・地域への貢献です。

 農業保障の取組みを、「ひと・いえ・くるま」に続く第4の柱に位置付け強化するため、農業保障ラインナップを整備・拡充するとともに、農業者を「個人農業者」「農業法人」に区分して取組みを展開します。

 併せて、JAの事業活動を通じた農業・地域への貢献により、JAファンの拡大を目指していきます。

 また、SDGs達成に向けては、保障・サービスの提供や地域貢献活動の実践、ESG投資の強化などを通じ、農業と地域社会の持続可能性の確保に取組みます。

共済事業の長期安定的な展開

 全契約者・組合員に〝寄り添う〟活動として、全契約者への「3Q活動」、未加入組合員等への「はじまる活動」を実践していきます。

 具体的には、LAやスマイルサポーターによる活動を基軸とし、非対面ツールの活用や他部門職員との連携等により、JAの総力をあげて全契約者・組合員に〝寄り添う〟活動を実践していきます。

 また、デジタル活用等による事務効率化、抜本的な事務の簡素化として、契約者の利便性向上およびJAのさらなる事務負荷軽減に向けた取組強化を進めてまいります。

 加えて、JAの共済事業のPDCA実践支援にも引き続き力を入れていきます。

長期にわたり契約者が安心できる土台・スキームづくり

 さらに高品質なJA指導・サポートの実践・展開に向けた取組みとして、連合会職員のさらなる育成強化が必要となります。

 また、新たな健全性規制を見据えた統合リスク管理態勢の高度化・強化として、リスクコントロールおよび経営体力の積上げによる健全性確保を図ります。

 CS向上への取組みおよびコンプライアンス態勢強化等による信頼性の向上としては、組合員・利用者の「声」を活かしたCS向上への取組み、組合員・利用者に選ばれ続けるためのコンプライアンス態勢の強化にも努めていきます。


〈本号の主な内容〉

■アングル JA共済連 新3か年計画と4年度事業計画
 JA共済連 代表理事専務 村山美彦 氏

■第13回 JA戦略型中核人材育成研修全国研究発表会
 JA全中が開催

■JA全農グループ事業をサポートするわが社の成長戦略
 (株)全農ビジネスサポート 代表取締役社長
 久保田治己 氏

■JA共済システムを支える現状と対応
 (株)中央コンピュータシステム 代表取締役社長
 村井雄一 氏

■農林中金・JAバンクを支える情報システムの現状と今後の方向
 農中情報システム(株) 代表取締役社長
 吉田光 氏

■生分解性マルチ 活用現場を訪ねて
 茨城県龍ケ崎市

■「ESG投資の潮流と森林・林業・木材産業の将来像」でフォーラム
 農林中金総合研究所

■ウンカ類における適切な防除
 JA全農 耕種資材部

■JAグループ石油事業
 和田山セルフSS(兵庫県)での取組み

■JA営農経済事業の強化・改善へ
 全農のJA支援の取組み(JA秋田おばこ)

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