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日本農民新聞 2020年11月15日号

2020年11月15日

農協観光会長・全国農協観光協会会長・櫻井宏氏このひと

新たな社会環境下でのNツアーグループの方向

㈱農協観光 会長
(一社)全国農協観光協会 会長
櫻井 宏 氏
組合員・地域住民の「ふれあいの場」 事業媒体に接点づくりをさらに深化

 9月、株式会社農協観光と一般社団法人全国農協観光協会の会長に、櫻井宏氏(岐阜中央会会長、JAぎふ代表理事組合長)が就任した。新型コロナウイルスの感染拡大で、旅行業界全体が大きな打撃を受けているなか、新たな社会環境下におけるNツアーグループの展開方向を聞いた。


事業回復に全力、事業転換や新規事業も

まず会長に就任した現在のお気持ちから

 今は思い切った抱負を述べられるような情況にはありません。いずれにしても、Nツアー・旅行事業の立て直しが第一です。簡単ではないし時間がかかるかとは思いますが、この危機的状況をグループ全体で共有しながら、何とか元に戻していくために精一杯努力します。

 旅行業界のデジタル化は、コロナ禍でさらに拍車がかかっています。農協系統の旅行事業もこれを踏まえた事業の転換を図っていく必要があります。

 また、単に旅行業だけでなく新たな事業への取組みも課題となっています。しっかり勉強し整理しながら、これからの事業の先頭に立っていきたいと思います。

起爆剤としてのGo Toトラベルに期待

コロナ禍での事業の状況は?

 新型コロナウイルス感染拡大の影響は大きく、未だ明確な回復状況に至っていません。海外旅行や外国人旅行の落込みは当然ながら、国内旅行においても団体やグループ旅行が相次いで中止となり、団体旅行を主力としてきた当社にとって大きな痛手となっています。また、外出自粛や県外移動自粛要請が続き、世間的に旅行に出かける雰囲気にならなかったことも大きいと思います。

 4~9月までの上期で前年比約10%の取扱いと大変厳しい業績です。この数字は大手旅行会社のおおよその平均値でもあり、業界団体全体で対応を協議しているところです。

 この状況は今後も続くと思われ、先行きを見通すことが非常に困難な状況ですが、まずは個人や少人数グループのお客様から国策であるGo Toトラベルをはじめ、ウィズコロナを見据えた様々な取組みを実施しなくてはならないと思っています。特にGo Toトラベルの利用が、事業を元に戻す起爆剤になればと期待しています。

安全・安心な旅行、農福連携や農泊にも力

新たな社会環境下で特に力を入れていきたい点は?

 このような状況下でも、JAグループの旅行会社として『受注型企画旅行』と『JA主体の募集型企画旅行』を中心とした団体旅行の強化に引き続き取り組んでいきたいと思います。これまでお世話になった利用者のみなさんが今は旅行を控えていても笑顔で参加いただけるよう、感染予防対策をしっかり実践し、安全・安心な旅行の提案を続けていきます。

 同時に、新規事業の農福連携事業に挑戦し、地元の魅力を価値に換える農泊事業も行っていきます。農業や地域を味方にし、その強みを活かした事業に力を入れていきたいと考えています。

コミュニケーションツールとして

地元JAでの観光事業への取組みは?

 JAぎふでは、地域活性化の取り組みのなかで、組合員・地域住民とのコミュニケーションツール、ふれあいの機会を増やす要素の一つとして、旅行事業に力を入れてきました。

 平成30年度の観光事業実績は、令和元年度のJA観光推進協議会全国会議で最優秀賞を受賞しました。同年は合併10周年の記念事業を軸に旅行事業に取組み、数字を大きく伸ばすことが出来ました。

 岐阜県下では、JA1支店1ふれあい企画旅行を実施しており、当JAもそれぞれの支店ごとに企画を実施しています。

 これからも地域の組合員や住民のニーズを十分反映した事業を展開していきたいと考えています。

 一方で、これまで団体旅行に積極的に参加してくれたお客さまの高齢化が進むなかで、若い層をどう取り込んでいくのかは、デジタルを駆使した非対面での新しい事業のあり方の追求とあわせて、これからの課題と受け止めています。

食と農に理解促進、日本農業や地域を応援

JAグループ事業の一環としての取組みは?

 JAグループの一員として、JAグループの目指す「豊かでくらしやすい地域社会の実現」に寄与するため、引き続き「食」と「農」に関する理解促進と日本農業や地域を応援する企画・提案を積極的に行なっていきます。

 例えば、JA支店ふれあい企画の促進をはじめ、JAくらしの活動や組合員のメンバーシップ強化、農業振興の応援団づくりに貢献するような企画を提案していきます。女性組織活動の活性化に向けた周年企画や他団体の女性組織との交流、フレッシュミズ交流促進への企画も提案していきます。

 また、JA介護保険と連携した「介護付旅行」や、高齢者にやさしい旅行や催しの企画提案など、高齢化社会の地域活性化と生きがいづくりに貢献していきます。さらに都市部、農村部それぞれの子ども達に向けた企画を提案し、JA食農教育と連携してJA事業への理解促進を図っていきます。

 全国農協観光協会では、昨年度からの中長期経営計画で「事業間で連携した「交流」で成功地域の創出と、そのための人材育成」を重点戦略の柱の一つとしています。成功地域を創り出した実績豊富な団体として、都市と農山漁村に暮らすあらゆる世代の人々に「喜び・満足・感動」という価値を提供し、地域づくりで社会に貢献することを目指します。

活き活きと暮らせる地域社会の実現に向けて

観光事業がJA事業に果たす役割を

 旅行は、単なる娯楽ではなく組合員・地域住民のふれあいの場を提供しています。正組合員・准組合員、老若男女の区別なく参加でき、JAと組合員・利用者、組合員・利用者同士のコミュニケーションが生まれる契機となります。

 時代によって求めるものは変わってきますが、JA事業の根本は組合員・地域住民が活き活きと暮らせることです。そこに、観光事業を媒体としてしっかりと埋め込んでいかなければなりません。ウィズコロナ下では安全・安心な旅行や地域の様々な活動への貢献など、引き続き接点づくりを深化させて発展を期したいと思います。


〈本号の主な内容〉

■このひと 新たな社会環境下でのNツアーグループの方向
 ㈱農協観光 会長
 (一社)全国農協観光協会 会長
 櫻井宏 氏

■最優秀賞に岐阜県・恵那農業高校
 第2回高校生農業アクション大賞

牛草大臣官房審議官(国際)がOECD農業委員会の議長に

■天皇杯は掛川中央茶業研究部会、山下・松﨑両氏等7点
 令和2年度農林水産祭「天皇杯」等の受賞者決定

JA全農たまごが持続可能性に配慮した「たまご」を発売
 鶏卵で「特色JAS」認証国内第1号

■国産肉消費が内食需要で好調
 さらなる国産消費拡大を

■47都道府県のおいしさで日本を元気に「ニッポンエール」

■地元の旬の味覚が味わえる「みのりみのる」のお店

関東甲信越1都9県の「地酒」と郷土の「酒肴」を毎月自宅にお届け=農協観光

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