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日本農民新聞 2021年4月5日号

2021年4月5日

JA共済連村山美彦代表理事専務このひと

JA共済連 令和3年度事業のポイント

JA共済連 代表理事専務
村山 美彦 氏

医療保障とサービス一体的に
デジタル技術活用し新たな接点

 JA共済連は3月18日、臨時総代会を開催し令和3年度事業計画を決定した。令和元年度からの「JA共済3か年事業計画」の最終年度となる3年度の事業のポイントを村山美彦代表理事専務に聞いた。


「3Qコール」を契機とした組合員・利用者へのフォロー活動の実施

この1年を振り返って、まずは新型コロナへの対応から。

 令和2年度事業はコロナの感染拡大の最中にスタートしました。これまでのように積極的な訪問活動ができない中にあって、このような環境だからこそ加入を希望する組合員・利用者のニーズに対し、感染リスクを回避しつつ応えていくことが推進活動の課題となりました。

 そこで、対面による「3Q訪問」の代わりにLAやスマイルサポーターが電話による「3Qコール」によって加入状況の確認を実施するとともに、様々な情報を提供し、要望があれば感染対策を徹底して訪問する形をとりました。世の中で在宅勤務が広がりを見せる中、「3Qコール」によって日頃会えなかった若い層とも接点を持つことができたとの声も多くありました。こうしたことも背景に、若い世代を中心に生命保障系の実績が伸び、2年度の重点取組事項に掲げていた生命保障へのシフトに舵を切れる契機になったと思います。

 また、今年度は「JA共済アプリ」「Webマイページ」といった非対面接点・手続き拡充や、JAと組合員・利用者が非対面で面談できるシステムもスタートできるように準備を進めています。その意味で、昨年度はIT化の準備を着実に進めた1年でもありました。あわせて、我々の仕事面でも在宅勤務に対応するためのオンライン環境を整備し、連合会とJA間でも体制を整えてきました。

新事務手続きで進むJAの事務負荷軽減

2年度事業に対する評価と課題は?

 平成31年度からの3か年計画のスローガンとして“安心と信頼の「絆」を未来につなぐ~地域のくらしと農業を支えるJA共済~”を掲げて、「足元の事業基盤固めと将来に向けたイノベーション等への対応を両面から展開することによって、組合員・利用者と深めた安心と信頼の絆を未来につなげていく」という思いを込めて、取組みを進めてきました。

 まず、「契約者の確保に向けた生命保障を中心とする保障提供の強化」では、コロナ禍での訪問自粛や7月の豪雨災害等の自然災害が発生する厳しい事業環境でしたが、事業量目標は前年並みの実績を確保しました。特に生命共済は、アポイント取得の徹底や3Qコールの活用で前年を上回る実績となりました。一方で、生存分野の未保障者は依然として多く、引き続き生命保障複数加入の取組み強化を通じた未保障分野の保障拡充を図る必要があります。

 「新たなJAファンづくりに向けた農業・地域に貢献する取組みの強化」では、農業分野については、農業リスク診断活動や農作業事故の未然防止活動に取組むとともに、農業経営を取り巻くリスクに対して共栄火災と連携し、共済・保険一体となった保障提供を行ないました。

 地域活動については、「地域・農業活性化積立金」を活用し、県域ごとに地域の特性を活かした独自施策等に取組んできました。3か年で240億円の設定でしたが、新型コロナ対策としてさらに30億円を追加しました。今後も農業関連施策を含め、地域活性化に向けた取組みを強化するとともに、地域貢献活動の認知度向上に向けた取組みを強化していく必要があります。

 「事業の効率化・契約者対応力の強化および健全性の向上」では、タブレット型端末機「Lablet′s」を活用した新事務手続きについては、ペーパーレス割合では長期87.8%、自動車94.1%、キャッシュレス割合は長期91.8%、自動車85.0%となっています。

 Lablet′sは信用事業との共有が進んでおり、43県344JAで約1万5500台がJAの複合渉外担当に活用されています。

次期3か年の架け橋となる施策を具体化

令和3年度事業の基本方針は?

 今次3か年計画の最終年度に当たることから、同計画で掲げた目標の達成に向け、元年度や2年度の取組状況や課題を踏まえた施策を展開します。また、次期3か年計画の策定の年でもあることから、施策展開も見据えて、その架け橋となる施策の具体化に取組みます。

 そして、今次3か年策定時には想定していなかったコロナの影響も踏まえた施策を展開します。

契約者といつでもどこでも繋がりを ニーズに応じた医療共済へ仕組改訂
「JA共済アプリ」「Webマイページ」登録促進へ

重点取組事項は?

 第1に、「保障・サービスの一体的な提供を通じた生命保障対策・契約者フォロー活動の徹底」です。今次3か年計画の総仕上げに向けて、この取組みを徹底することで、強固な事業基盤の構築と持続可能なJA経営基盤の確立・強化に取組みます。
昨今の医療情勢の変化を踏まえ、入院外医療も含めた医療費を保障するため、短期入院でもまとまった金額を給付する一時金方式へ変更するなど、ニーズを捉えた医療保障への仕組改訂を実施します。一方で、健康増進に資する取組みとして「げんきなカラダプロジェクト」を展開し、各種イベントや情報発信等で、生命保障分野のリスク予防、組合員・利用者や地域住民との関係を強化していきます。

 契約者フォロー活動の徹底に向けた体制整備・育成強化では、LA・スマイルサポーターの役割・取組内容の整理による協働体制の構築に取組みます。連合会は、3年度中に「JAにおける共済事業実施体制強化指針」の改訂を行います。
第2に「デジタル技術を活用した新たな接点構築・環境の整備」です。新たな生活様式に対応した接点構築・活動環境の整備を通じて、組合員・利用者の利便性向上、さらなる事務負荷軽減に取組みます。

 まず、身近な非対面接点として展開する「JA共済アプリ」に登録すれば、万が一の事故連絡もすぐにできるようになります。また、契約者向けWEBサイトである「Webマイページ」への登録によって加入状況や契約内容が即座に把握でき、必要な手続きも実施できるようになります。これらをいつでも・どこでも契約者と繋がりかつ繋がりを深める戦略基盤として、登録促進に取組みます。

 一方で、利用者情報基盤等の構築やオンラインを活用した活動・研修環境を整備します。既存システムに蓄積している契約データに加え、JA共済アプリやWebマイページ等から得られた情報等も集約し一元管理する「担当者共通支援システム(コロンブス)」をJA支店(所)のLAやスマイルサポーター、管理者が活用することで、契約者からの手続き等に対して「まとめて」「抜け・漏れのない」対応を実践します。連合会としては、さらなる契約者対応力強化に向けて、一元管理する情報の拡張も含めた検討を進めます。

 第3は「組合員・利用者本位の活動の徹底およびコンプライアンス態勢強化による信頼性向上」です。

 高齢者への共済推進にかかる対応を強化するとともに、組合員・利用者の信頼感・満足度のさらなる向上のためCS改善活動を強化します。

 また、不祥事件等の未然防止に向けて連合会の定める事務手続きに基づく取組みの徹底を図ります。

「攻めの活動」と「守りの活動」の両輪で

これら3年度の重点事項と併せ、今次3か年計画に基づいて展開する取組みの今年度のポイントは?

 まず「万全な保障充足に向けた総合保障の提供」では、エリア戦略の更なる実践に取り組み、ニーズを捉えた仕組みを提供します。これを補完するため共栄火災の事業を積極的に活用します。支店(所)ごとの市場性や契約構造を踏まえ、ニューパートナー獲得やクロスセルなどの「攻めの活動」と、既契約の解約未然防止や次世代への契約継承等の「守りの活動」の両輪による事業活動を展開します。

 「農業・地域への貢献を起点とした新たなJAファンづくりの促進」では、自己改革の理解促進に向けた情報発信を強化するとともに、農業リスク分野の保障提供など農業経営の安定化に向けた取組みを強化し、組合員・地域住民等との更なる関係強化に取組みます。

 新たなファンづくりでは、組合員はもとよりこれから組合員となる新規就農者や、食と生活面を視点に准組合員や地域住民への対応を強化していきます。

 「新技術の活用等を通じた事業の効率化と契約者対応力の強化」では、JAの事務負担軽減に向けた取組みをさらに強化し、業務の効率化と契約者・利用者対応力の強化に取り組みます。また、大規模自然災害に備えた迅速かつ適正な損害調査方法を確立するとともに、自動車損害調査体制を再構築し契約者サービスを強化します。

 そして「永続的な保障提供に向けた健全性・信頼性の向上」では、リスク管理の高度化やリスク対応力の強化を図るとともに、共済事業としてのSDGsの達成への貢献に向けて取り組みます。

 また、資金運用の取組みを強化するとともに、資金運用業務の効率化を図ります。昨今の超低金利で国債運用も厳しさを増すなか、リスクはとりながらも一定の収益を上げるような運用に向けて、農林中金アセットマネジメント(NAZM)での資産運用の強化へ体制をシフトしていきます。

 JA共済連ではこのほど、「組織・経営改善支援実践部」を新設しました。連合会はさらなる収益が減少の局面にあることに危機感を持ち、共通化できる部分は全国やブロックに集約する等、徐々に組織を変えていくなかで機能も体制も変わっていくような組織改革をめざしたいと思います。また、研修部における系統人材育成を「JA支援企画部」に移行しました。同部はJAがどのような“骨”を持ち、どのような“筋肉”をつけるかを支援する部署として、JA支援・指導にかかる連合会職員の育成、JA役職員の人材開発・育成、JA役職員研修を担います。

「よりそう」「とどける」「つながる」

次期3か年計画策定の向けての環境認識と姿勢は?

 前述のように、この1年コロナの影響もあり、「よりそう」「つながる」ためのインフラがずいぶんできてきました。これを上手く活用していくことを第1に考えなければなりません。

 “ひと・いえ・くるま”の総合保障の拡充に引き続き取組むとともに、地域・農業活性化積立金を活用しての農業支援、新規就農支援などにも取組んでいきたいと考えています。

 准組合員を含めた組合員数はトータルとして大幅に減少していないものの、JA共済の契約者数は減少を続けている現状を踏まえ、我々は正組合員・准組合員の別なく組合員の生活を守る保障の提供という原点に、もう一度戻る必要があります。

 そのためには、JAの職員自体が減っているなかで個々のLAだけでないチームプレーが必要です。例えば前述の担当者共通支援システム「コロンブス」などを活用してそれぞれが全体の動きを把握し、支店(所)でチームをつくることによって省力化を図りながらも、組合員・利用者と寄りそう部分をさらに強化していくことが求められます。

 「よりそう」。組合員・利用者と寄りそう様々な場面をつくる。

 「とどける」。医療保障や健康増進に資する仕組みなど、ニーズを捉えた保障やサービスをと届ける。

 「つながる」。SDGsへの取組みや農業保障、損保、損害調査など、それぞれの強みを持った様々な企業や団体と連携しながらサービスの提供を具体化していく繋がり。加えて、脱炭素や災害支援も含めて“関係人口”での繋がり。

 次期3か年計画は、この3つをテーマにも検討していくことにしています。
こうした取組みを広めていくことによって、まだまだJA共済は安心と信頼の絆を未来につなげていくことができると確信しています。


〈本号の主な内容〉

■このひと JA営農指導のこれから
 JA共済連
 代表理事専務 村山 美彦 氏

■農水省が令和3年度入省式、野上農相が訓示
 「省全体で総合力を発揮」「強い農林水産業を実現」

■「農業DX構想」をとりまとめ公表=農水省
 「農業・食関連産業の現場」等3分野の取組課題

■中山間地域等の特性を活かした複合経営のモデルを策定=農水省

■「ミス日本みどりの女神」に小林優希さん

■令和3年度のJA共済事業計画を決定=JA共済連
 次期3か年計画の懸け橋となる施策の具体化など

■JA共済連全国本部が組織機構を改編=4月1日付

■「げんきなカラダプロジェクト」を開始=JA共済連
 利用者・地域住民のげんきなカラダづくりをサポート

農林中央金庫が新たな執行役員体制を始動=4月1日付
 代表理事は奥理事長、八木最高執行責任者の2名

新潟食料農業大学・渡辺好明学長インタビュー
 農業系教育機関のいま

〈蔦谷栄一の異見私見〉「みどりの食料システム戦略」を1丁目1番地に

■農村プロデューサー養成講座を5月開講=農水省

■令和3年産水稲の10a当たり平年収量を決定=農水省
 全国平均単収は前年産同の535kg10県が引上げ

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