今国会に提出されている「種苗法の一部を改正する法律案」に対して、野党による「食の安全・安心を創る議員連盟」(篠原孝会長)は20日、反対の声明を発表した。
反対声明では、同改正案について、優良な種子の海外流出を防ぐためという「目的は支持する」としつつも、「『改正種苗法案』にはそうした危険を阻止する直接的条文は見当たらない」「現行の種苗法では、農家の自己の経営内での自家増殖は明文をもって認められていた。それが今回削除され、原則禁止されるとなると、原則が大きく変わることになる」と指摘。また「育成権者と農家との個別の契約によっては、従来通り自家増殖が認められるというが、許諾料を毎年払ったり、高接ぎ毎に許諾料を払うと明らかにコスト増につながる」「自家増殖は登録品種以外は禁止されず、米は84%、野菜は91%が自家増殖可能だと説明しているが、今後登録品種が増えていくことが予想される」「自家増殖は農民が持つ当然の権利として認められてきている。今回の『種苗法の一部を改正する法律案』はこの途を閉ざすことになる」などとし、「我々は今このコロナ禍騒ぎの中、進取の気概に富んだ農民に制約を設ける改悪には断固反対する」としている。
篠原会長は「(自家増殖は)自由にできて当然だ。その第一点が根本的に間違っており、この法案に我々は断固反対ということで声明文を作った」とコメントしている。
【改正種苗法案の概要】
1 育成者権者の意思に応じて海外流出防止等ができるようにするための措置
(1)育成者権が及ばない範囲の特例の創設…①登録品種の種苗等が譲渡された後でも、当該種苗等を育成者の意図しない国へ輸出する行為や意図しない地域で栽培する行為について、育成者権を及ぼせるよう特例を設ける。※これにより、海外へ持ち出されることを知りながら種苗等を譲渡した者も刑事罰や損害賠償等の対象となり得る(育成者権の侵害罪は10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金)。②輸出・栽培地域に係る制限の内容は農水省HPで公表し、登録品種である旨及び制限がある旨の表示も義務付ける(10万円以下の過料)。(2)自家増殖の見直し…育成者権の効力が及ぶ範囲の例外規定である、農業者が登録品種の収穫物の一部を次期収穫物の生産のために当該登録品種の種苗として用いる自家増殖は、育成者権者の許諾に基づき行うこととする。
(3)質の高い品種登録審査を実施するための措置…審査内容の充実のため、出願者から審査の実費相当額を徴収するとともに、出願料及び登録料の水準を引き下げる。
2 育成者権を活用しやすくするための措置…①品種登録簿に記載された特性(特性表)と被疑侵害品種の特性を比較することで両者の特性が同一であることを推定する制度を設け、侵害立証を行いやすくする。②育成者が特性表の補正を請求できる制度、裁判での証拠等に活用できるよう育成者権が及ぶ品種か否かを農林水産大臣が判定する制度を設ける。