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改正種苗法案骨子案を自民農林合同に提示=農水省

2020年2月28日

育成者権活用に向け、品種登録制度の見直し図る

 農水省は、このほど開かれた自民党農林部会等の合同会議で「種苗法の一部を改正する法律案」の骨子案等を示した。近年、日本の優良品種が海外に流出し、他国で増産され第三国に輸出されるなど、日本の農林水産業の発展に支障が生じる事態が生じている。登録品種が販売された後に海外に持ち出されることは現行法上は違法ではなく、また登録品種が自家増殖された後に海外に持ち出されることは違法であるが、増殖の実態が把握できないため抑止できない状況にあった。このため、登録品種を育成者権者の意思に応じて海外流出の防止等の措置ができるようにするとともに、育成者権を活用しやすい権利とするため、品種登録制度の見直しを図るもの。

 同法案の主な改正事項では、輸出先国又は栽培地域を指定できるようにする。具体的には、登録品種について、育成者権者が利用条件(国内利用限定、国内栽培地域限定)を出願時に付した場合は、利用条件に反した行為を育成者権者が制限できるようにする。これにより、条件に反して海外への持ち出しや国内指定地域外での栽培が行われた場合、育成者権侵害となる。登録品種には、「登録品種であること」「利用制限を行った場合はその旨」の表示を義務付ける。

 また、登録品種に限り、農業者による増殖は育成者権者の許諾を必要とする(禁止ではない)ことで、農業者の自家増殖にも育成者権の効力が及ぶようにする。これにより、育成者権者の許諾の下で増殖を行うため、増殖を行う者や場所の把握が可能となり、目の届かない増殖がなくなり、違法増殖からの海外流出への対応が可能となる。

 なお、育成者権侵害は、流通差止や損害賠償請求等民事上の措置に加え、個人は懲役10年以下または罰金1千万円以下、法人は罰金3億円以下の刑罰の対象となる。

 さらに、「品種登録審査の充実」により、実費相当の審査手数料を徴収、併せて出願料や登録料を引き下げる。「育成者権を活用しやすくするための措置」として、農水省が品種登録時に品種の特徴を記録した特性表を使用した侵害品種の推定制度を導入するとともに、出願品種の権利侵害が疑われた品種が侵害品種か否かを農水省が判定する制度を創設する。

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