〈本号の主な内容〉
■このひと
2026年農政の課題と取組み
農林水産省 大臣官房長 宮浦浩司 氏
■かお
(一財)製粉振興会 理事長の 佐藤秀夫 氏
■水稲除草剤の最近の特徴と今後の展望
(公財)日本植物調節剤研究協会 研究所 試験研究部
第一研究室長 半田浩二 氏
このひと
2026年農政の課題と取組み
農林水産省
大臣官房長
宮浦浩司 氏
2026年の農政がスタートし、新たな食料・農業・農村基本計画に基づく農業構造転換集中対策など、着実かつスピーディーな推進を要する政策が目白押しだ。当面する農政の課題や提出予定の法案などについて、農林水産省大臣官房長の宮浦浩司氏に取組みの方向を聞いた。
農業現場の人材確保 目に見える成果が重要
■目下の課題認識と、官房長の役割から。
まず、農業構造転換集中対策を推進することが中心の課題になる。そのためには、昨年3月に各市町村で策定された地域計画(地域農業経営基盤強化促進計画)の継続的なブラッシュアップが必要であり、将来の地域農業のマスタープランとなっていく必要がある。農地の使い方や人材の確保、必要な施設の整備などが集約された地域計画を下地として、その上に農業構造転換集中対策を的確に反映させていくことが重要であり、とりわけ、若い世代や外部からの人材の確保など、農業の現場で目に見える成果を上げることが重要と考えている。
官房長は国会対応が第一の職務。国会では、立法府から行政府に対し、法律の執行に関する説明責任が求められる。内閣が国会に示す今後の立法、政策についても説明しなければならない。
また、省の業務を円滑に進めるためには、予算の確保、政策を的確に執行するための組織定員の確保も重要となる。本省のみならず地方組織にも影響することなので、財政・人事当局の理解を得るべく、各業務の意義をきちんと押さえておかなくてはならない。
生産基盤の強化など「基本計画」を推進
■昨年スタートした「基本計画」を推進するポイントは。
大きなテーマとしては、国民に対する食料の安定供給、脆弱化している生産基盤の強化、農村の定住人口の確保・維持などが挙げられる。
一昨年以来、コスト高によって加工食品を含む農水産物の価格上昇が著しくなった。生産力を強化しなければ、思うような価格で十分な食品を入手できない状況が顕在化してきており、農地の集約や人材の確保など生産基盤の強化には、最初に力を入れて取組むことになる。
「食料システム法」一歩一歩、実態に合う制度へ
■「食料システム法」に基づく食品業者への支援等は。
前職で食料システム法(*)の制定を担当した。合理的な費用を考慮した価格形成といっても、例えば、初めからコメの全ての産地・品種に関してコストの指標を作るのは難しく、当初から運用の難しさは関係者の間で共有されていた。
コスト指標の作成など、まず最初の一歩を踏み出し、少しずつ見直しを図りながら、より現場の実態に合った精緻な制度に広げていく必要がある。農林漁業者と食品産業の連携強化は必須の課題であり、できるだけスピード感をもって、事業者による取組みの計画認定や連携支援が実現できるようにしたい。
*食料システム法=「食品等の持続的な供給を実現するための食品等事業者による事業活動の促進及び食品等の取引の適正化に関する法律」の通称
みどり戦略「有言実行」で着実に後押し
■みどりの食料システム戦略については。
あらゆる分野で環境との調和は不可欠であり、肥料の抑制による環境負荷の軽減や農業生産におけるプラスチック排出抑制など、具体的な取組みを「有言実行」で進めていかなければならない。
この2年は、夏の猛暑により、高温による生産物の品質低下や収量の減少が目に見えて起こった。環境保全に対応しなければならないという理解は、国民の間でも生産者自身にも深まってきている。ただし、現実に生産や仕事のやり方を変えることには大きな障壁があり、そこを一歩乗り越えていただけるよう、着実な後押しに努めていきたい。
多様化するコメの流通 食糧法改正で対応
■国会提出予定の法案は。
農業構造転換集中対策の財源として、2026年度は当初予算案に日本中央競馬会(JRA)から臨時・特例措置として4年間250億円を国庫納入し、予算措置することが盛り込まれた。JRAの特別積立金の一部をこれに充てるための特別立法や、関連するJRA法改正の準備を進めている。
また、農業投資の拡大を図るため、系統資金を有効活用できるようにする法案を提出する。農林中央金庫法の改正を含め、系統資金をきちんと農業の現場に使っていただける法整備をしたい。
一昨年、わが国で初めて発生が確認された牛のランピースキン病を、家畜伝染病予防法に位置付けるための法改正も進める。さらに、豚熱に感染した農場の全頭を殺処分する仕組みから、検査により陽性を示したものに限り、選択的に殺処分する仕組みに、法律の見直しを図りたいと考えている。
食糧法に関しては、多様化するコメの流通に対応し、大手集荷・卸以外のほか、実需者にも利用量や在庫量を正確に定期報告いただくように改正する。また、備蓄米の売渡しでは、一般競争入札、随意契約ともに相当の時間がかかったことへの反省から、民間備蓄の仕組みを創設し、早い段階には民間備蓄米を市場に出し、政府備蓄米が届くまでのつなぎとできるよう、備蓄のあり方を見直す準備も進めている。
品種・種苗については、温暖化の進行で栽培品種を変えざるを得なかったり、生産者が減少する中で多収性品種を取り入れたりするなど、新しい環境に合った品種の開発、種苗の普及のための法案を作成中だ。
従来は、県の試験場ごとに品種を開発し、県間で競争する面があったが、今の時代、競争すべき相手は海外だ。国際的な権利保護も図りつつ、農研機構を中心に各県や民間とも協力し、品種の開発と種苗の普及をできるだけ短期間に進められる仕組みを作っていきたい。
JAグループ等との連携 揺るぎなく継続
■JAグループとの関係については。
農政を推進するうえで関係団体・機関との協力は不可欠である。これまでもJAグループをはじめ農業会議所、土地改良区など、さらに最近は食品関係の業界団体とも協力を強めてきた。こうした関係は今後も揺るぎなく継続し、農業の現場をよくするために、みんなでどうすべきか、という共通の問題意識のもと、連携していきたい。


