新年早々、中部電力の浜岡原子力発電所(静岡県)3、4号機をめぐる不正が発覚した。再稼働へ向けた審査で同社が国に提供した基準地震動(想定される最大の揺れ)が意図的に過小評価されたものとわかり、原子力規制委員会は審査を白紙に戻した。
不正は関係者による昨年2月の公益通報で明らかになったという。通報がなかったらどうなっていたか。浜岡原発は南海トラフ巨大地震の想定震源域にある。災害リスクを軽視すれば、15年前の東京電力福島第1原発事故に匹敵する過酷事故になりかねない。
福島の事故を受け、国内の全原発がいったん運転を停止した。しかし、翌年7月には関西電力大飯原発(福井県)3、4号機が近畿地方の電力不足に対応して「例外的」に運転を再開。現在の新規制基準が導入された後は2015年8月の九州電力川内原発(鹿児島県)1号機を皮切りに、着々と再稼働が進められてきた。現在、運転中の商業用原子炉は14基に上る。
「世界で最も厳しい」と政府が誇る新基準も、判断材料のデータをねつ造されたら無意味だ。規制委の山中伸介委員長は「水平展開(浜岡のケースを踏まえて他も点検)は考えていない」と発言したが、それでいいのか。運転中の原発もすべて止め、一から審査をやり直すべきだ。そもそもデータを事業者の「自己申告」に任せる審査方法に根本的な問題がある。
東京電力は今月20日に行うはずだった柏崎刈羽原発(新潟県)6号機の再稼働をトラブルで延期した。福島の事故後、同社が初めて動かす原発だ。昨年9月に新潟県が行った県民意識調査では「再稼働の条件は整ったか」という質問に6割が「そうは思わない」、「東電が運転するのは心配」に7割が「そう思う」と答えた(いずれも「どちらかといえば」を含む)。それでも花角英世知事は再稼働を容認した。東電が「地域活性化や防災」のためとして1000億円を県に寄付すると表明したことも影響しただろう。
福島の被災地では人口減少や高齢化が一気に進み、多額の復興予算を注ぎ込んでも元には戻らない。目先のカネと引き換えに安全を「過小評価」することは許されない。
(農中総研・客員研究員/飯舘村地域おこし協力隊)
日本農民新聞 2026年1月25日号掲載


