日本農業の発展と農業経営の安定、農村・地域振興、安心・安全な食料の安定供給の視点にこだわった報道を追求します。

日本農民新聞 2025年12月25日号

2025年12月25日

〈本号の主な内容〉

■このひと
 農業支援サービスの展望
 (一社)農林水産航空・農業支援サービス協会
 会長 福盛田共義 氏

■第43回 JA全農酪農経営体験発表会
 酪農家の地域との連携による持続可能な酪農経営基盤確立へ

■GAP Japan 2025
 日本GAP協会が開催
 GAPに関する国内外の事例を紹介
 アワードでは3組織を表彰

■JA全農グループを支える営農・経済事業のIT活用の現状と今後の対応
 ㈱全農ビジネスサポート
 代表取締役社長 小畑俊哉 氏

■JA共済を支えるシステムの現状と今後の対応 
 ㈱中央コンピュータシステム
 代表取締役社長 村井雄一 氏

■かお
 製粉協会 会長の 前鶴俊哉 氏

行友弥の食農再論「センサスの憂うつ」

■YEAR’S ニュース2025


 

このひと

 

農業支援サービスの展望

 

(一社)農林水産航空・農業支援サービス協会

会長

福盛田共義 氏

 

 農業者の高齢化・労働力不足等に対応した多様な農業支援サービスが生まれている中、サービス事業者の育成・向上を図り農作業の受託等を促進する(一社)農林水産航空・農業支援サービス協会が9月、設立された。前身の(一社)農林水産航空協会長から引き続いて新協会の会長に就いた福盛田共義氏に、今後の展望を聞いた。


 

農作業等受託 スマート技術で生産性向上

農業支援サービスとは。

 農業の生産現場で農作業を代行したり、スマート農業技術を駆使して生産性向上を支援したりするなど、農業者の生産活動に対しサービスを提供することで対価を得る業種のことだ。他にも農業用機械のリース・レンタル、作業者の技能研修や人材の供給・派遣、データの分析・提供等を行う業者が、サービス事業者に含まれる。

前身の農林水産航空協会との違いは。

 新しい食料・農業・農村基本計画の策定が新協会設立のきっかけとなった。今後20年で基幹的農業従事者が約116万人から30万人へと激減が予測される危機的状況の中で、同計画では外部から農業をサポートする人々も担い手の一員として育成し活動を支援する方向性が示された。

 前身の協会は、空中散布など防除に関わる作業の受託事業者をまとめ、機体の点検や操縦者の訓練・教育、安全対策等の事業を行ってきた。これを踏まえ、新しい協会は航空機利用にとどまらず、地上の農業機械を含めた農作業受託全体を束ね、農家を支援する各種事業の立ち上げをねらいとして設立された。

 

専門作業・機械設備・人材供給・データ分析を支援

支援にはどのようなタイプがあるか。

 農水省の分類で主に4つある。播種や防除、収穫などの農作業を受託する「専門作業受託型」、機械・機具のリース・レンタル、シェアリングなどを行う「機械設備供給型」、作業者を必要とする農業現場に人材派遣等を行う「人材供給型」、航空・衛星写真等の農業関連データを分析・提供し営農に役立てる「データ分析型」だ。これら全てを行う「複合型」の事業者もある。

 当協会としては、空中散布による防除作業を請負う事業者への支援に携わってきた経験を生かし、当面は作業受託を重点に取組んでいきたい。

 

「標準サービス」基準に認定 スタートアップガイドも

策定される「標準サービス」とは。

 農水省の委託事業で検討が進んでいるが、ドローン防除の代行、除草作業の代行、水稲等の収穫作業の代行という主に3つの分野に関し、事業者が備えるべき標準的なサービスのレベルを規定するものだ。つまり、農家やJAが安心して頼める品質レベルの基準を、農水省が定めることになる。当協会は、標準サービスに基づき事業者を認定・公開する業務に携わりたいと考えている。

 具体的な規定項目としては、受注する際に作業の段取りをきちんと説明すること、料金表や契約書の作成、安全点検、機械等の点検・整備の記録、操縦・運転者の教育実施、不測の事故が発生した際の対応マニュアル整備、事故に備えた保険加入–などが想定される。

 これらを遵守する優良な事業者育成のツールとして、標準サービスを活用し、業界全体のレベルを上げていきたい。

「スタートアップガイド」作成については。

 基本計画では、農業支援サービスを行う事業体数について、2020年の5700から2030年には7900に増やす目標が定められた。また、農水省が行った生産者のアンケート調査では、専門作業受託型をはじめとする各サービスに対し、今後、有償サービスの利用を希望するとの回答が多かった。

 農家のニーズに応えるためにも、スタートアップの事業者を育成する必要があり、「スタートアップガイド」作成が同省の委託事業として進められている。

 ガイドの全体概要はまだ明らかになっていないが、会社設立の準備や事業計画の立て方、資金調達、必要な機械や人材の導入、トラブルが生じた場合の対応、法令上の手続き等について、当協会では事業者の相談に応じる態勢を整えていく。

 

受託、委託の両者が経営できる支援の仕組みを

国に要望したいことは。

 事業者にとって一番の懸念は、冬場の農閑期の収入をどうするか、つまり年間を通しての収入源の確保だ。

 また、平地の農地と中山間地域とでかかる費用が違うため、受託する事業者側は異なる料金設定を希望するのに対し、委託する農業者側はあまり高額では負担できないといったギャップも生じ得る。

 受託側、委託側の両者が経営的に成り立つ支援の仕組みを作り上げないと、業界としても成り立たないし、営農継続、耕作放棄地の発生防止という目的も達成できなくなってしまう。事業者の意見を踏まえ、必要があれば国にも要望したい。

 

受託事業体と委託集約 双方をJAグループに期待

JAグループに対する期待は。

 当協会としては、JAグループに2つお願いしたい。一つは自らサービス事業体となるか、子会社を設立するなどして、農作業の受託やスマート農業技術の導入などに努めていただきたい。

 もう一つは委託する側の立場で、大規模生産者に対してはスマート農業技術などを支援し、中小規模の生産者に対してはある程度まとまった形で、信頼できるサービス事業者に作業等を委託する、その取りまとめ役をお願いしたい。

 

事業者の育成が第一 国への要望・提言も

今後の取組みについて。

 信頼される業界、サービス事業体を作ることが当協会の目的であり、事業者の育成が第一と考えている。また、既にサービスを行っている事業者のレベルを向上し、信頼を高め、農業者やJAに選んでもらえる仕組みを作りたい。

 業界の現場では、これから様々な問題が出てくることも予想される。そうした情報をまとめて国に要望・提言するなど、サービス事業の受託・委託の双方がやりやすくなる環境づくりに努めたい。委託料の負担についても支援する政策を要望するなど、農地を農地として継続し、耕作し続けられるよう、当協会としても貢献したい。

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