日本農業の発展と農業経営の安定、農村・地域振興、安心・安全な食料の安定供給の視点にこだわった報道を追求します。

日本農民新聞 2024年7月25日号

2024年7月25日

〈本号の主な内容〉

■アングル
 2025国際協同組合年に向けて
 2025国際協同組合年 全国実行委員会幹事長
 (日本協同組合連携機構代表理事専務)
 比嘉政浩 氏

■第102回 国際協同組合デー記念中央集会
 「協同組合はすべての人によりよい未来を築きます」テーマに7月9日開催

■JA全農 令和6年度事業のポイント
 JA全農 施設農住部 谷健太郎 部長

■施設栽培における果菜類の虫害防除対策
 農研機構 植物防疫研究部門 作物病害虫防除研究領域 生物的病害虫防除グループ長補佐 村上理都子 氏

■果菜類の病害防除
 農研機構 植物防疫研究部門 作物病害虫防除研究領域 生物的病害虫防除グループ長 窪田昌春 氏

■野菜栽培における土壌伝染性病害の防除対策
 農研機構 植物防疫研究部門 作物病害虫防除研究領域 博士(農学) 越智直 氏

行友弥の食農再論「牛肉・オレンジの36年」


 

アングル

 

2025国際協同組合年に向けて

2025国際協同組合年 全国実行委員会幹事長
(日本協同組合連携機構代表理事専務)

比嘉政浩 氏

 

 国連は昨年12月の総会において2025年を国際協同組合年(IYC2025)とすることを宣言した。これを受けて日本の協同組合は、IYCの趣旨に賛同するとともに「2025国際協同組合年全国実行委員会」を立ち上げ、協同組合への認知と理解を広げる取組みを進めることにした。IYC2025に向けた取組みの方向を、同実行委員会幹事長を務める日本協同組合連携機構(JCA)の比嘉政浩代表理事専務に聞いた。


 

SDGsさらなる促進のチャンス

2025年が国際協同組合年に制定された背景と受け止めは?〉

 国連が協同組合に対し、高い評価を与え期待していることが一番の根底にある。協同組合は社会全体がうまく回っているときには、あまり注目が集まらない。それが今、協同組合に対する評価・期待が高いということは、逆にSDGsの進捗が世界的にみても、今一つ見えてこないことが大前提にあるのではないか。

 協同組合を改めて高く評価し、SDGsを促進するよう各国に求めたことは素晴らしいことでありチャンスである。この機会を活かしていきたい。

 

協同組合間連携の気運高まる

前回IYC2012の成果と課題は?

 2012年は、国連が初めて国際協同組合年と定め日本政府も賛成した。しかし、当時は日本政府の積極的な対応を引き出せたとは言えない。

 一方で、この機会に協同組合が連携して共に取組もうとする気運はできてきた。6つの協同組合グループで組成していた日本協同組合連絡協議会(JJC)に加えて、IYC2012ではさらに3グループが参加し9グループが当時のIYC2012全国実行委員会に参加した。これが日本協同組合連携機構(JCA)につながっている。

 IYC2012全国実行委員会は、イベントや勉強会等で様々な情報発信をしたが、一番の成果は協同組合関係者が一緒に仕事をしたことにより、6年後の18年にJCA創立に繋がったことだと思う。労働者協同組合法成立の最終局面では、多くの協同組合が支持した。

 日本社会は課題が山積しているが、具体的解決方法がなかなか見いだせないなかで協同組合への期待が高まり、事業を通じた課題解決というアプローチが評価されつつある。

 

理解促進、認知度向上、SDGs達成へ貢献

IYC2025への具体的取組みは?

 IYC2025全国実行委員会は、協同組合の全国組織の代表者や今後連携を深めていきたいと考えている組織、趣旨に賛同いただける団体のみなさんで構成している。本当に課題を解決しようと思えば、個々の組織だけで出来ることは少ない。JAに関連することだけでなく、農福連携、子ども食堂支援やボランティアコーディネーターなど、様々な助け合い組織にも参加してもらっている。代表は山野徹JA全中会長、副代表は土屋敏夫日本生協連会長が務める。

 国連が定めたIYC2025の「協同組合はよりよい世界を築きます」のテーマのもとに、持続可能で活力ある地域社会の実現に資することを目指した活動を進めていく。

 第1に、協同組合への理解を促進し、認知度を高めること。特に協同組合が地域社会の課題解決やSDGsへの貢献など公益的役割を果たしていることを発信する。この際、オピニオンリーダー、研究者、政府・国会関係者への発信を重視するとともに、若年層・大学生の理解促進を図る。

 課題別の情報発信にも努めたいと思い、検討している。例えば、SDGsと協同組合、子育て支援と協同組合など、テーマを設定し、それぞれに課題と期待されることを発信していければ効果的だろう。

 第2に、協同組合の事業・活動・組織の充実を通じてSDGsの達成に貢献すること。協同組合の組合員のSDGsに関する関心は高く、国連も協同組合がSDGs達成へ一層貢献することを期待している。改めてこれを牽引していくような事業・活動・組織の発展を目指す。

 第3は、地域課題解決のため、協同組合間連携や様々な組織との連携を進めること。複雑化・深刻化する地域の課題に対処するためには、異種協同組合は最適な連携相手である。

 第4は、国際機関や海外の協同組合とのつながりを強めること。キックオフは、アジア全体のイベントにしたいと思っている。世界の協同組合から学び、日本の協同組合の取組みを発信する。

 

何を実現したいかを強く意識して

IYCに対する自身の思いは?

 2012年のIYCの時は実行委員会の事務局長だった。2012年を終えてつくづく思うのは、一年を経て終わる時にどのような状態でありたいか、何を実現したいか、を強く意識してチャンスを活かすべきだったということ。

 今回、大学に対し協同組合論の寄付講座等を行っている県域協同組合連携組織の交流会を開催する。大学で協同組合を教えるところが増え、その授業を受ける学生が増えることで将来に繋がっていくことを指向したいからだ。

 IYC2025に際し、国会決議を実現したいと考えているが、これも協同組合をめぐる諸制度の整備に関する機運の醸成を期したものだ。

 ちなみに、JCAでは、以前から協同組合法制度研究会を設置しており、同研究会から横断的な協同組合法制のあり方についても提言をいただいたところだ。JCAとしてはその趣旨に基づいてまず情報発信していきたい。協同組合関係者のみなさんの意見を踏まえて、今後対応を協議していく。IYC2025とは直接関係のあることではないが、なぜそういう議論になったのかの背景等を、JAグループほか協同組合関係者に年度内にも情報発信していきたいと思っている。

 

学び、実践し、発信する

全国の協同組合やJAグループへの呼びかけを。

 8月には、IYC2025全国実行委員会の名で、全国の協同組合にこれを機会とした各種行動を呼びかけていく。「学び、実践し、発信する」。特に学びと発信はIYCと相性がよい。国連事務総長の協同組合に対する期待と激励のビデオメッセージは今回ももらいたいと思っている。

 IYC2012の際は国連事務総長の動画は国連が協同組合を高く評価していることの情報発信の機会になった。

 またJA職員がIYC2025のバッジ等を身につけるよう提案したい。尋ねられたらその趣旨を答えられるように勉強しておく必要があり、学習と発信の機会となる。

 広報誌に載せることが出来るようなコラム記事や学習資材等も供給したい。

 IYCはチャンス。大いに学習し、発信してもらいたい。JA綱領には地域農業の振興と地域社会への貢献が掲げられている。JAは、農業の振興については、数値目標を含めた自己改革工程表で取組んでいる。

 それに比べると、豊かな地域社会を築くことに関しては、取組んでいても〝見える化〟されておらず、具体的な方針を出し切れていないと感じている。

 なぜ、国連は協同組合を高く評価しているのか。事業を起こし地域の課題解決に取組んでいるからである。地域社会への貢献を標榜しているJAは、方針を明確にし、見えるような形にしていくよう、もう一歩踏み込まなければならないと感じている。

 

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