日本農業の発展と農業経営の安定、農村・地域振興、安心・安全な食料の安定供給の視点にこだわった報道を追求します。

日本農民新聞 2022年2月5日号

2022年2月5日

JAグループ国産農畜産物商談会
出展者インタビュー

 

わがJAの商品開発・農業生産振興の取組み

 

沖縄県 JAおきなわ
農業振興本部
特産加工部 考査役
上原正重 氏

 

 JA全農とJAバンクは2月1日から3月31日まで第16回「JAグループ国産農畜産物商談会」をオンライン開催している。2007年開催の第1回「農畜産物展示商談会」から出展しているJAおきなわは今回、特産加工部が〝イチオシ〟のシークヮーサーで機能性表示食品をはじめ加工品各種をPRしている。上原正重考査役に商品開発、農業生産振興について聞く。


 

機能性で注目のシークヮーサー

シークヮーサーの加工品に取組んだ背景は?

 シークヮーサーは、以前は少ない量を県内で消費してきたが、20年ほど前にテレビで機能性が紹介され注目されたことで一気に取扱業者が増加した。しかし全国展開していくには、生産量の安定に向けた栽培技術向上や柑橘の特性である隔年結果対策など多くの課題抱えていた。そこで県からの支援を受け、栽培技術向上や栽培面積の拡大による生産量増加に繋がった。
 現在、生産量は県全体で4千t程度あり、JAおきなわはその約半分、2200tを取扱い、1500t程を果汁として搾っている。歩留まりは約50%なので約750tの果汁を加工品にして販売している。
 シークヮーサーは、成分に含まれているノビレチンやタンゲレチンが血糖値や血圧の抑制で注目され、これまでたびたび注目を浴びたが、2019年にテレビで認知症に関連した情報が紹介され、かつてないくらいの出荷量となり以降高い水準で推移している。
 加工品の中心は果汁100%の『シークヮーサージュース』。2020年からは機能性表示食品の「中性脂肪が気になる方のシークヮーサー」を販売している。在庫を抱えていた時代に機能性についてしっかりとしたエビデンスをつけて販売していくのがよいのではないかと考え、沖縄県や研究機関と連携してヒト試験も行った結果、中性脂肪の数値に顕著な低減がみられた。それを論文化して発表し、消費者庁へ機能性表示食品の届出をし受理された。これはシークヮーサーとしては、画期的なことだった。

 

好評価の新しい分野にも力

販売拡大への商品開発やターゲットは?

 液体以外の加工商品も訴求し、『シークヮーサー顆粒タイプ ヒラミン(無加糖)』を開発した。「ヒラミン」は、シークヮーサーの和名「ヒラミレモン」からとった。液体では使いづらい場面を粉末状にすることで、ノビレレチンが手軽にとれるようにし、取扱やすいスティック状に包装した。いろいろな料理にかけたり混ぜたりでき非常に好評を得た。
 粉末状での需要が結構あることがわかったが、県内には規模が小さい加工機械しかなく、製造は大きな量を扱える県外の工場に依頼した。
 昨年の食品・飲料展「FOODEX」に出品した際、首都圏の高級スーパーの経営者が訪れ、非常に魅力のある商品だと興味をもっていただいた。できた料理に振りかけるだけでシークヮーサーの味が楽しめ健康にもいい。
 こうした評価をいただいている新しい分野に力を入れ、どんどん展開していきたい。
 同時期に『シークヮーサー 黒糖しょうがパウダー ヒラミン+(プラス)』も開発した。女性が好んで飲む生姜糖にシークヮーサーパウダーを入れたら非常に味がいい。酸味と甘みとスパイシーさがマッチし、生姜焼きなどにかけても美味しくなる。沖縄の基幹作物のサトウキビから作る黒糖の販売拡大になるコラボ商品を作ろうというのがスタートだった。黒糖はミネラルを含み身体によいことから、こうした商品を出すことで、シークヮーサーとともに認知度向上を狙った。
 初めは飲料の開発を検討したが、どれも茶色になってしまう。そこでいろいろなブレンドした商品を考えた結果、シークヮーサーと生姜の機能性もいかして訴求することにした。ターゲットは30代以上の女性。パッケージのデザインやチラシも女性が担当し、いろいろな用途のメニューなども紹介している。

 

原料の契約生産で安定供給

シークヮーサー果実の生産拡大は?

 県の事業も活用しながら、農家を営農指導員とともに回り、取り木や苗木の増殖により3年で本格出荷に結び付けている。収穫期は8月~1月くらいまで。青切り(酢みかん)用の生果で9月下旬まで出荷し、10~12月ぐらいまでが加工用、12月中旬には黄色く完熟し糖酸のバランスが良い生食用として県内スーパーに並ぶ。生食でも美味しいが柑橘類のシーズンで他のミカンとの競合も激しい。粉末や顆粒も果汁から作ることから9割以上が果汁用として出荷される。果汁用は工場で搾り冷凍保管し、年中出荷できる体制をとっている。
 柑橘の特性である隔年結果性によりモノが足りない年など生産が不安定で、農家の安定出荷に繋がっていない。これを平準化しようと一方では販売を強化しながら集荷も強化してきた。これを同時並行で進めるため農家との契約栽培を行なっている。
 かつて台風等の影響で生産量の落込みが続いた事で在庫がなくなり、販売先の食品メーカーなどに迷惑をかけたことがある。これでは世間に通用しない。約2年分の在庫を常時もつようにして安定供給していくためには、契約生産は不可欠。農家と共にしっかり原料を確保していかなければ、安定供給は難しい。契約農家からの出荷率はほぼ100%になっている。

 

認知度UPへ店頭で販促

加工商品の販売方法は?

 既存の商品ではないのでまずは知ってもらうことが先決。当JAのファーマーズマーケットやAコープなどのスーパーでの販促員による販売を繰り返している。テレビCMも通じて使い方を普及するような宣伝も徐々に拡大していきたい。
 JAおきなわのブランド商品としても展開しているが、一番多いのは業務用で加工原料として出荷。それぞれのメーカーで焼酎やジュースに使われている。地元企業のオリオンビールからも、シークヮーサー果汁を使った様々なアルコール飲料が販売されている。

 

新たな付加価値の創出へ

商談会への期待は?

 国産農畜産物商談会に出展して10年以上になる。沖縄から全国に営業展開するにしても各地に人を置くことはなかなか難しいなかで、「商談会」は非常に有効だ。バイヤーが一堂に集まるところで実際に商品を見ていただき、説明も聞いてもらいアピールできる非常にいい機会として重要視している。実際に成約にもつながっているので、今後とも力を入れていきたい。
 一昨年の商談会では香料メーカーがブースを訪れ、シークヮーサーの成分に着目した。商品開発担当に来てもらい、搾汁残さを提供したところ、皮から良い成分がとれることから取引に繋がった。
 これまで廃棄していたものを有効活用して新たな付加価値を創り出す。こうした展開にも目を向けていきたい。


〈本号の主な内容〉

■JAグループ国産農畜産物商談会 出展者インタビュー
 わがJAの商品開発・農業生産振興の取組み
 JAおきなわ 特産加工部 考査役 上原正重 氏

■家の光協会が実施・展開する 読書関連の取組み
 家の光読書ボランティア養成講座・スキルアップ講座
 食農教育紙芝居コンクール

■第16回 JAグループ国産農畜産物商談会
 2月1日~3月31日にWeb開催

■JAおきなわ 商品開発・農業生産振興の取組み
 黒糖&さとうきび
 青果&花

蔦谷栄一の異見私見「食料安全保障を欠落した みどり戦略の法制化論議」

 

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