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日本農民新聞 2019年5月5日号

2019年5月5日

アングル

第28回JA全国大会決議を受けて

 

農林水産省
経営局 協同組織課長

日向彰 氏

 

 

選ばれ利用される農協に
JA大会決議の着実な実践を

 

 JAグループは第28回JA全国大会決議で、「農業者の所得増大」「農業生産の拡大」「地域の活性化」を軸とする創造的自己改革のさらなる実践を誓った。農協改革集中推進期間が終わる5月末を前に、農水省で農協を担当する経営局協同組織課の日向彰課長に、JAグループの自己改革進捗に対する認識と今後の期待を聞いた。


農業構造が一大変化

JAグループをめぐる情勢認識を。

 日本の農業の将来を見据えると、構造が大きく変わっていくことは間違いない。小規模経営ももちろんあるが、今でも一定の経営層が農業生産の多くを担う傾向が強くなってきている。これまで農協を利用していた農業者が減少していくことは、現在の組合員の年齢構成からみても抗いようがない。
 JAグループは今、こうした農業構造の一大変化に合わせて自らのビジネスを変えられるかどうかという、極めて大きな岐路に立っていると言える。
 担い手の農協離れが言われて久しい。しかし逆に、農協が担い手離れを起こしているという側面はないだろうか。全国の現場で農協や担い手の方々と意見交換していると、農協が担い手にメリットを提供できずにいるためメリットがある方に流れてしまっているように感じることが多い。
 担い手、そして5年先10年先その地域で農業を担っていく人たちに、いかに農協がメリットを提供し、競争を勝ち抜いていくかが問われていく。農協は農業者に選ばれ利用されてこそ価値がある組織。その価値を実現している姿をきちんと示すことができるかどうかという極めて重要な時期にかかっている。ここが踏ん張りどころだと思う。

 

改革実践でさまざまな芽が

JA自己改革をこれまでのところどう見ているか。

 5月末までが農協改革集中推進期間なので、現時点で評価することは時期尚早だが、改革の実践によってさまざまな芽が出てきていることは確かだと認識している。もちろんずっと以前から継続して取り組み、実を結んできたことも多々あるだろう。
 最大の課題の一つである販売力強化に向けては、農協内で人員をシフトして体制強化を図りながら農業者へのさらなるメリット還元に努めている例や、資材の有利調達を徹底追求している例など多くの意欲的な取り組みが見られる。
 引き続き、一つでも多く改革の取り組みを進めていただくことによって、農業者から「自分の農協はよくやっている」と評価してもらい、より利用してもらえるようになっていただきたいと思う。

連合会組織については?

 現場の単位農協は、総合事業として経営を展開している。一方、県段階・全国段階では、ややもすると縦割り思考のままそれぞれの事業を推進しているきらいがある。
 農協をサポートしていくうえでは、農協が行っている総合事業を縦割りで分断することなく、県段階・全国段階が互いに連携し一体となってサポートすることが重要ではないか。それぞれの持つ強みを生かしながら連携して農協を支える方向に、もっと踏み込めるのではないかと私は思うし、そのように頑張っていただきたい。
 事業別に見ると、経済事業については、JA全農が2017年度に「『農林水産業・地域の活力創造プラン』に係る全農の対応」とそれに基づく年次計画を策定して以来、めざす姿に向けた取り組みを着実に実践されていると認識している。
 今年度からの全農新3か年計画でも、農業現場での新しい課題対応に向け、全農として汗をかくという姿が見える。農協や農業者から「全農よくやってるね」と評価されるよう、計画を着実に進めていただきたい。
 輸出促進については全農だけの問題ではないものの、年次計画の目標にはやや届いていない部分がある。日本の人口減少が進む中で、輸出は大きな実需となる。全農でなければできない部分も多いため農協や農業者の期待は大きいと思うので、産地のまとめ役として、できることはどんどん取り組んでいってほしい。それは必ず将来につながるはずだ。
 共済事業については、少子高齢化がとくに農村部において激しいうえに、全国的にも人口減少が進むにつれ、事業環境はますます厳しくなっていくことが想定される。
 農水省には生保・損保企業からの出向者もいるが、彼らと意見交換していても、民間保険会社は活路を求めて海外市場にどんどん進出していっていることが窺われる。
 JA共済が将来にわたって引き続き組合員・利用者の役に立っていくためには、こうした状況下で競争に勝って経営を維持・強化していかなければならない。こうした問題意識を持って、しっかり組織協議していく必要があるように思う。
 信用事業についても、金融界全体の事業環境が厳しさを増す中、いかに新たなビジネスモデルを確立していくかが重要だ。その際、健全性確保とともに、資金を地域で回して地域経済を発展させる重要性をよく噛みしめながら、事業を運営する必要があると思う。
 あらためて胸に刻んでいただきたいのは、1990年代半ばの住専問題だ。系統信用事業も多く融資していた住宅金融専門会社が膨大な不良債権を抱え、6850億円の公的資金が注入されたことに国民からたいへんなお叱りを受けた。住専問題が農協改革の端緒だ。
 信用事業の健全性確保についてはこれまでも、農水省とJAグループが一体となって取り組み、一定の基準に達していると考えている。引き続き気を引き締めていかなければならない。
 全中については、一般社団法人としてこれまで以上に純然たる会員組織になる。指導権限のあるなしという問題ではなく、会員にどれだけメリットを提供できるかが重要になるだろう。そして会員からの信任を得て、役割を果たしていっていただきたい。

 

「しっかりとした」大会決議

JA全国大会決議について。

 第28回JA全国大会に向けては私自身も参加した。大会決議については、今回は事前に県域での決議を行いながら組織協議を積み重ね、JAグループの総意として、自己改革を不断に追求していくことを確認するしっかりとした決議がなされたととらえている。
 重要なことは、決議した事項をしっかり実践していくこと。農業者・組合員から評価されるようにするためには、PDCAサイクルをしっかり回しながら着実に実践していく必要がある。大いに期待しているし、頑張っていただきたい。
 協同組織の原点は、組合員との意思疎通をしっかり行うところにあると思う。組合員と常日頃キャッチボールをしていくことが重要だろう。例えば、担い手のもとに足繁く通ってやり取りするTACのような取り組みを担当者だけが行うのではなく、若手から幹部まで全職員総出で組合員のもとに顔を出していくという姿勢が重要なのではないか。
 もっともこれはJAグループだけの話ではない。我々自身も、農業者あっての農水省。農業者と、そして担当課としては農協と、常日頃コンタクトをとりキャッチボールをしていかなければならない。
 協同組織課では昨年来、全ての都道府県で、農協との対話を行ってきた。職員が出向いて都道府県担当者と共に農協を訪ね、意見交換を重ねてきた。私自身も着任以来この1年半、相当数の意見交換を現場で重ねているところだ。

JAが地域に果たす役割も大会決議で謳っている。

 JAグループが地域において、生活インフラの拠点として諸々の活躍をされていることは重々承知しており、その取り組みの地域社会における位置づけには重みがあると考えている。そこに地域社会があり、人々がそこで生活している以上、たいへん重要な取り組みだ。
 ただ一方で、その取り組みによって赤字を垂れ流しているのであれば、望ましい状態とは言えない。地域みんなに必要な施設・事業であるのなら、なぜその負担を農協、ひいてはその組合員だけが背負わなければならないのか、そこはあらためてよく考える必要があると思う。
 言うまでもなく農協は慈善団体ではない。きちんと経営していかなければならない。必要な施設・事業であれば、市町村から補助金などの支援を得るなり、連携を強めるなりしながら運営することが望ましい。少なくとも、収支の状況をしっかり組合員に開示し理解を得て、総意のもとで取り組む必要がある。

 

准組合員の位置づけ・役割は理解

准組合員の事業利用問題については?

 准組合員の位置づけや役割については、我々も現場の農協と日々キャッチボールする中で理解している。
 現時点では、2021年3月までは准組合員の事業利用実態について調査するとの改正農協法の規定に基づき、政府としてしっかり、ミスがないよう調査・集計を行っていくことに尽きる。そのうえで議論は、21年4月以降に始まることになると思う。
 まだ先の話だが、関係者の意向を踏まえるべきとの国会附帯決議や、組合員の判断に基づくべきとの与党決議の趣旨を踏まえて適切に対処していく。

 

国民の共感得るJAグループに

JAグループへの期待を。

 JAグループは地域社会のためになるよい取り組みをたくさん行っている。そうしたことが広く国民に伝われば、自ずとJAグループへの国民的評価は高まっていくだろうと思うし、そうなることを願っている。
 そのために必要なのは、発信力だ。堂々と世の中に出していってもらいたい。JAグループの広報もよくなってきているとは思うが、より広く受け入れられるようになることを期待している。
 地域にはさまざまな社会的課題が山積している。その解決に向けて、JAグループが率先して乗り出す姿は、とくに広く注目され評価されるのではないか。
 例えば、現在注目されている社会的課題の一つに、障がい者雇用の問題がある。農業分野でも「農福連携」として推進強化が始まっているところだ。実際に取り組みを進めるうえでは難しい課題も多いだろうが、できることから始め、JAグループが率先して社会的課題に取り組んでいる姿を、広く示していただきたいと思う。
 そうした取り組みを通じて、JAグループが国民の共感を得ていくことを期待してやまない。ぜひ頑張っていただきたい。


〈本号の主な内容〉

■新天皇陛下が即位
 5月1日 令和幕開け

■アングル 第28回JA全国大会決議を受けて
 農林水産省 経営局協同組織課長 日向彰 氏

■家の光協会 事業3か年計画のポイント

■JA全農 新3か年計画と2019年度事業のポイント
 米穀生産集荷対策部 栗原竜也 部長

蔦谷栄一の異見私見「協同組合内協同でアクティブ・メンバーシップを後押し」

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