農林中央金庫と日本政策金融公庫は、雪印種苗㈱等と連携し、千葉県安房地域の酪農業の復興に取り組む㈱SO-up(館山市、代表取締役:黒川一夫 安藤真人)の創業を事業計画策定や融資・出資を通じて支援した。
千葉県の安房地域は、江戸幕府8代将軍徳川吉宗の時代(1728年)にインドの白牛3頭を輸入し、その生乳を原料に「白牛酪」というバターに似た乳製品の生産を開始したことから、「日本酪農発祥の地」と呼ばれている。その後、安房地域は、首都圏における生乳や子牛の生産地として栄えたが、近年、後継者不足、高齢化等により酪農家戸数が減少するなど、衰退が続いている。
今回の支援先であるSO-upは、地域の酪農業の現状に危機感を持った地元の酪農家2名とその理念に賛同した獣医師、地元運送会社役員の4名を中心に設立。各々の専門性を活かしつつ、行政や農業関連団体の支援を受けながら、事業開始に向け準備を進めてきたもの。このほど、搾乳牛約400頭規模の新牧場を建設、今月10日に竣工式を開催するとともに、酪農事業を開始した。搾乳ロボット等の先端技術を導入した大規模経営により、地域の生乳生産の維持・増加を図るだけでなく、新規就農希望者を受入れ、将来の安房地域の酪農の担い手育成にも取り組む計画。
農林中金と日本公庫は千葉県安房地域でのSO-upの理念や事業内容の重要性を鑑み、2017年10月から、雪印種苗とともにSO-upの新牧場建設のための経営計画策定等の支援を行ってきた。さらに、金融面での支援として、牧場の建設や乳牛の導入等に関する融資対応や円滑な事業運営を目的に、今年3月から9月にかけて、創業資金として2行合計で1372百万円の融資、また、農業法人への投資育成事業を行うアグリビジネス投資育成㈱や雪印種苗、千葉県みるく農業協同組合と連携し、3者合計で11百万円の出資を行った。
農林中金と日本公庫は、今後、運営協議会(仮称)の構成員として、SO-upに対し経営・技術の両面からの支援を継続、「農林水産業者への支援を通じて、農業の成長産業化に取り組むとともに、環境・社会課題の解決に貢献していく」とコメントしている。
【㈱SO-up】社名の「SO-up」は「South」「One」「Ushi(牛)」「Project」の頭文字をとったもので、「関係者一丸となり、千葉県南部(安房地域)で1番の酪農家となるなかで、地域の酪農復興を目指す。」という、代表者である地元の酪農家2名の思いが込められている。
※詳報は、日刊アグリ・リサーチに掲載しております。