筑波大発ベンチャーが開発、外来遺伝子等は含まずGABA含有量を増加
「ゲノム編集技術」を利用したトマトの届出が11日、厚労省に受理された。
ゲノム編集作物の流通ルールとして国内では昨年、届出制度が設けられ、その制度の下、筑波大学発ベンチャー企業のサナテックシード㈱(竹下達夫代表取締役会長、2018年設立)が、ゲノム編集技術を利用して得られた、血圧上昇抑制効果のある成分「GABA」を多く含むトマト(GABA高蓄積トマト)について、厚労省にゲノム編集技術応用商品として届出を行い受理されたもの。同日、農水省に対しても情報提供書が提出された。
ゲノム編集技術を利用して得られた農林水産物については、開発者から事前相談を受け、生物多様性への影響や飼料としての安全性の観点から問題がないか学識経験者へ意見照会を行い、問題ないことが確認された場合はその旨を開発者に通知するという手続を経て、届出を受け付ける仕組となっている。今回のトマトは、これらの手続を経た届出の1例目となる。
届出のあったGABA高蓄積トマトは、GABAの含有量をこれまでのトマトより増加させたことが特長。開発者は筑波大学生命環境系・江面浩教授。内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP、事業実施期間…平成26~30年)で開発された(申請者はサナテックシード)。トマトは、もともとGABAを合成する酵素を持っているが、ゲノム編集により、その酵素のブレーキの働きを抑えた。これにより、GABAを合成する酵素が常に働き、トマト中のGABAが増加した。なお、開発されたトマトには、外来遺伝子等は含まれていない。
家庭用苗をインターネットで販売
サナテックシード社は同日、ゲノム編集技術を利用したトマトとして受理された「GABA高蓄積トマト」(=シシリアンルージュハイギャバ)を、関連会社のパイオニアエコサイエンス㈱と共に国内で販売すると発表した。「既存のトマト品種のように果実を市場に流通するためには、生産者向けの種子の販売や生産者の生育時間や場所の確保から始める必要があることからすぐには行えないため、まずは当該トマトを理解し希望する人のみが自身で食べたい量だけ生産し、消費してもらうよう、家庭菜園向けに苗を提供する」としている。インターネットからの申し込みを通じて2021年春からの提供を開始する予定。また今回販売する苗、また今後市場に流通する予定の果実には、ゲノム編集技術を利用したことが分かるように、「ゲノム編集技術で品種改良をしました」「届出済」の文言を含めたマーク等を付けて販売する。