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日本農民新聞 2020年10月25日号

2020年10月25日

全国農業会議所國井正幸会長このひと

新たな「基本計画」下での農業委員会の役割

全国農業委員会ネットワーク機構
一般社団法人 全国農業会議所 会長
國井 正幸 氏
農地利用の最適化を実現 地域の農業者と農地を守る

 全国農業会議所は、6月末の通常総会で、会長に國井正幸氏(栃木県農業会議会長)を選任した。國井新会長に、この4月から施行された新たな「食料・農業・農村基本計画」の下での、農業委員会系統の役割や活動に対する思いを聞いた。


「基本計画」、農委法見直しに適切に対応

就任の抱負から

 今年は、農業委員会系統にとって大きな節目の年に当たります。

 新たな「食料・農業・農村基本計画」が決定し、4月から今後5年間の取組みがスタートしました。

 もう一つは、平成28年に施行された「改正農業委員会法」が4年を経て、今年はその再評価、見直しの年に当たります。

 この2つに適切に対応していくことが、全国農業会議所の大きな役割です。農業・農村の代表者として、地域の農地を活かし担い手の期待に応える活動に今後とも全力を尽くしていきます。

総量としての農地確保へ集積推進

「基本計画」初年度への対応は?

 2015年に208万人だった農業就業者は、5年を経て168万人になり、10年後の2030年には140万人以下に減少すると見られています。

 一方、現在440万haの農地は10年後には414万haへの減少が見込まれています。

 つまり、農業就業者の減少率が農地の減少率より大きいということは、一人当たりの耕作面積を増やさない限り、現状の農業生産を維持できないことになります。

 農業にはいろいろな生産要素がありますが、そのなかでも農地は大きな生産要素です。農業委員会ネットワークは、その農地利用の最適化実現に向けて、人・農地プランなど地域の話し合いをリードしています。

 まず、耕作放棄地の解消などを含め、総量としての農地を確保していかなければなりません。

 就農人口が減少するなかで一人当たりの耕作面積を増やしていくためには、農地を集積していかなければなりません。日本の農業がますます国際競争に晒されるなか、生産性向上も大きな課題です。

 6月29日、全国農業会議所は国に対し、新たな基本計画の実現をめざして「農地利用の最適化を推進する多様な担い手、農業対策の強化」、「持続可能な農業・農村をめざす振興対策」、「農業委員会の体制整備」の3点を柱とする政策提案を行いました。農業従事者が営農しやすい環境の整備を起点として、「次世代に継承する活力ある農業・農村の再構築」をめざしていきたいと考えています。

条件不利地域への対策強化も

農地の維持・確保の課題は?

 現在の440万haの農地の4割は、中山間地と言われる条件不利地域に存在しています。傾斜地が多いこれらの地域での耕地の維持・拡大は難しく、過疎化も進んでいます。農業の果たす多面的機能をより発揮してもらいたいこれらの地域への対策の強化を、国に要望していくことも農業会議所の大きな役割です。これまで以上に地域政策に力点を置いた対策が必要です。

 現在、担い手が耕作する面積は農地全体の57・1%。政府はそれを80%にする目標を掲げています。それを達成するためには、条件不利地の農地を集約し担い手に経営してもらうことが必要ですが、集積のための農地整備には多大な労力や費用が必要です。そこを国が本気になって手当していかない限り、担い手への農地集積目標も、食料自給率の目標も達成できないと思います。

 平成12年からスタートした中山間地域等直接支払制度の第5期対策が今年度からスタートしています。これを機に、もう一度条件不利地域の支援の原点に返った制度強化を要請していきたいと思います。

ネットワーク機構は伴走型の支援を

農業委員会組織の体制整備に向けては?

 5年前の法改正で、それまで公選制であった農業委員は、市町村長が任命する制度に変わりました。都道府県には、農業委員会ネットワーク機構が置かれ、農業委員会では、委員会としての意思決定を行う農業委員と現場で農地利用の最適化を推進する農地利用適正化推進委員の、両方の委員が位置づけられています。

 今年の農業委員会法の検証・見直し検討に当たっては、全国町村会や全国市長会とも意思疎通をはかりながら、農業委員会それぞれの立場で再評価し改善点をあげることにしています。我々も実態を把握した具体的提案が出来るようにアンケート調査を行うことにしています。

 また、農地利用調整等を確実に進展させるため、都道府県農業委員会ネットワーク機構が、農業委員会の活動状況に応じた伴走型の支援が出来る予算措置を求めるなど、農業委員会の体制整備に取組んでいきます。

産業政策と地域政策の連携密に

農協系統との連携は?

 農業生産要素のうち、栽培技術や設備投資などの産業(経済)政策部分は主に農協系統が、農地や担い手育成、新規就農者受入れなど地域(構造)政策の部分は農委系統がと、ある程度の役割分担をしながら取組んでいます。

 各都道府県の農業会議には審議委員会が常設され、農地法に基づいた転用などを審議していますが、メンバーには農業委員会会長の他に農協系統からの代表も参加し重要な意見交換の場になっています。都道府県では農協中央会等とともに行政への要望も頻繁に行っています。

 厳しい状況にある日本農業の維持・発展のために、農業者と農地を守る取組へ、さらに連携を強化していきたいと思います。


〈本号の主な内容〉

■このひと 新たな「基本計画」下での農業委員会の役割
全国農業委員会ネットワーク機構
一般社団法人 全国農業会議所 会長
國井 正幸 氏

■「みどりの食料システム戦略」(仮称)策定へ<農水省>

■〝ウィズコロナ〟の時代
わがJAの自己改革の現状と今後

■災害に強い施設園芸づくりにむけて

〈行友弥の食農再論〉「自助」の条件

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