日本農業の発展と農業経営の安定、農村・地域振興、安心・安全な食料の安定供給の視点にこだわった報道を追求します。

日本農民新聞 2020年10月5日号

2020年10月5日

農水省枝元真徹農林水産事務次官このひと

これからの農政の展開方向

農林水産事務次官
枝元 真徹 氏
生産基盤強化を着実に
食料安全保障と輸出に力

 この8月、農林水産事務次官枝元真徹氏が就任した。新事務次官に、今後の農政の展開方向を聞いた。


〝不安定な時代〟の重責に全力で

就任の抱負から。

 ここ数年、非常に大きな自然災害が相次いでいる。加えて、農業においては国内で26年ぶりにCSF(豚熱)が発生し、ASF(アフリカ豚熱)も世界各地で蔓延している。さらに、今年に入って世界中で新型コロナウイルスの感染が拡大し、農林水産関係を含めて社会全体に大きな影響を及ぼしている。こうした非常に不安定な時代に、事務次官という重責を担い非常に緊張している。

 いろいろな課題があるなか、本省、地方組織の農林水産省職員が一体となって、大臣はじめ政務3役の指導の下、全力を尽くしていきたい。

コロナ対応加味し「基本計画」実行

新たな「食料・農業・農村基本計画」の力点は?

 農政においてもいろいろな改革に取り組み、それがよい方向に進んでいる。しかし、担い手や労働力不足の問題など、農業・農村を持続的に発展させていくためには、様々な課題があることも事実だ。

 「基本計画」は、人や農地をはじめとした経営資源に関わる課題を整理し、生産基盤の強化をめざしていくことを重点にまとめさせていただいた。産業政策や農村政策等を含めて、打ち出された今後の方向性を着実に実行していくのが我々の役目だ。

 今回のコロナ禍で、国民の食料やその流通に対する関心が非常に高まってきている。一方で、その影響から農林水産物等の輸出強化の大切さを改めて痛感した。

 こうした状況を考えると、「基本計画」の方向性やその具体的内容は間違っていない。これに“コロナ”という新しい時代の対応方向を加味し、きちんと実行していくことが一番大事だと思っている。

世界に打って出る日本農業に

国際貿易への取り組みは?

 TPPをはじめ、日EU、日米の経済協定がまとまり、日英協定も大筋合意に至った。また、RCEP(東アジア地域包括経済連携)の協議も進んでいる。

 TPPにしても、日EUにしても、守るべきところはきちんと守れたし、攻めるべきところについても、いろいろなきっかけがつくれた。それを十分活用し積極的に攻めていく。海外との競争下で、生産性・競争力を強化し、より世界全体に打って出るような日本農業にしていきたい。

 連携協定や経済協定は、その一つの手法だ。RCEPが締結されると、世界全体を一つの市場とする環境がほぼ整うことになり、しっかり対応していきたい。

自己改革の歩み止めない農協組織に

農協改革の現状とJAグループへの要望は?

 農協組織の役割やその重要性は、これまでもこれからも変わらない。そのなかで自己改革を進められ、一定の評価を得ている。

 農家組合員の所得向上を基本としながら、農業・農村地域を活性化させていく農協の役割は、昔も今も変わらない。その仕事の手法を自らが改革してきた。目的は明確であり農政の方向ともずれていない。改革の歩みを止めないことが大事だ。

 目的に向かい、常に改革や仕事の見直しを重ねていくことを期待している。

生産現場への実装が課題

スマート農業の今後は?

 現在実証段階で、非常に進んでいるものもあるし、コスト面を含めてまだ課題がある点などが次第に明確になってきた。

 今後、日本の人口減少、農家の減少は避けられない。これに対応し、より省力的でより低コストな農業を展開していくためには、例えば、ドローンによるピンポイントでの農薬散布など、スマート農業を現場にきちんと実装させていくことが緊急の課題だ。

 我々も、技術面やその周辺も含めて一生懸命後押ししていく。例えば、道路規制面での無人走行トラクタの対応など、各省庁を跨る課題も多い。農林水産省が中心となって連携を推し進めていきたい。

 「スマート農業」という言葉だけしか知らないという農業者も多い。今、日本全国であらゆる作物で実証中なので、ぜひ一度見ていただき自分の経営として考えていただければありがたい。

米政策の基本は需要に応じた生産

米政策の方向は?

 需要に応じて生産していただくことが、基本中の基本だ。農林水産省として在庫状況など幅広い情報を提供しているところであり、現場で様々な情報をよく分析していただき需要に応じた生産をしていただきたい。

変化の波を取り込み発展に結ぶ

これからの農政のポイントは?

 食料安全保障を強化し輸出を伸ばしていく。世界との競争関係の下で生産基盤をいかに強化していくか。コロナ禍で、新しい生活のあり方や消費のあり方、国民の考えも変化してきている。地方や農村漁村に対する“陽の当たり方”も変わってきている。

 コロナで農林水産業や食品産業が多大な影響を受けている部分を、きちんとケアしながら、その“変わった波”をきちんと取り込んで生産基盤を強化し、農林水産業の発展に結びつけていきたい。


〈本号の主な内容〉

■このひと これからの農政の展開方向
 農水省 農林水産事務次官
 枝元真徹 氏

■食料産業局長に太田氏
 農水省幹部人事=10月1日付

■これからのJA組織と全中の役割
 JA全中 専務理事
 馬場 利彦 氏

■副会長に青山氏=家の光協会

■会長に櫻井氏=農協観光

■JA全中令和2年度JAファーマーズ・マーケット基礎セミナー
 JA全中 営農・くらし支援部営農担い手支援課  伊藤 悟 審査役
 JA全中 営農・くらし支援部  山本 雅之 特別研究員
 JAきみつ  市原 喜春 経営部次長兼直売課課長

蔦谷栄一の異見私見「『土中環境』も加味した流域治水を」

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