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国内農業系研究機関で初の農業AI研究用スパコン等を導入=農研機構

2020年6月18日

 農研機構は、国内農業系研究機関で初となるAI研究用スーパーコンピューター「紫峰(しほう)」と農研機構統合データベース「NARO Linked DB(ナロ リンクド データベース)」の本格稼働を5月から開始した。農研機構はこれまで、組織全体としての計算機資源が未整備だったが、今回の導入により農業情報研究基盤が整備され、データ駆動型農業の一層の推進が期待されるという。

 「紫峰」は研究者100名が同時にAI用の計算を行うことが可能な計算速度を有する。国内農業研究機関で、同クラスの速度を持つ計算機の導入は初めて。大量の画像のリアルタイム処理が必要なジャガイモ病害株を検出する場合、導入前の同機構で1haの画像処理に200時間(画像50万枚。個人PCで500日かかる処理)を要したが、「紫峰」では2時間で可能になることが示された。

 また同機構の全研究データを一元的に集約する「ナロ リンクド データベース」は、これまで機構内の個々の研究センター・部門で所有していた病害虫、気象、遺伝資源、ゲノム情報など各種研究データを収集し、研究者がデータに横断的にアクセスして利活用するための統合データベースとして構築した。多様な形式のデータ同士を組み合わせて利用しやすい形式での出力、AIでの処理に適した形式での提供など、研究をサポートする機能を備える。

 今回の本格稼働は今後、センサーなどから自動的に収集される環境データ、人や家畜のデータ、微生物を含む環境中の生物データなどの新たなビックデータと、蓄積された農研機構の研究データをAIで解析することで、認知症機能改善の健康維持食や、砂漠や海岸で収穫できる穀物のような画期的な新品種など、新技術につながる可能性があると見込んでいる。また、AIスパコンと統合DBを用いたAI技術に関する教育も進め、数年以内に機構内に400名のAI研究者を育成する予定。

 農研機構は16日、オンライン上で記者会見を開き、久間和生理事長が今回の本格稼働について「研究の質と連携を大幅に向上させるものであり、農業・食品産業にイノベーションをもたらすものと期待している」と語った〔写真は「紫峰」と久間理事長。農研機構提供〕。

 政府目標のソサエティ5・0実現のためのデータ駆動型農業の重要性の高まりや、農水省におけるスマート農業の促進などを受けて、農研機構でもAI研究およびデータ連携のための農業情報研究基盤の整備が求められていた。2018年に理事長直属の農業情報研究センターを設置、農業AIの研究と、農業データ連携基盤の整備を進めてきた。

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