日本農業の発展と農業経営の安定、農村・地域振興、安心・安全な食料の安定供給の視点にこだわった報道を追求します。

日本農民新聞 2018年11月25日号

2018年11月25日

このひと

 

国内産米流通と米穀機構の役割

 

米穀安定供給確保支援機構
理事長
福田晋 氏

 

 米穀の安定供給確保を支援するため、米穀販売業者やその団体、米穀の生産・出荷・加工等の事業者の組織する全国団体で構成する米穀安定供給確保支援機構(=米穀機構)の理事長に、6月、福田晋氏(九州大学教授、農学博士〔食料流通学〕)が就任した。福田新理事長に、国内産米の流通のこれからと米穀機構の役割を聞いた。


 

米の安定供給へ蓄積と知識活かし貢献を

米穀機構の理事長就任にあたって。

 私は、九州大学大学院で農業経済の中の食料流通学を専門としており、米の流通に関しては川上の産地から川下の消費までのマーケティング等を研究していたので、これまでの蓄積や知識を少しでも活かすことが出来ればと思った。
 米穀機構は、食糧管理制度がいろいろ変化してきた中で、公益目的事業を第三者的な役割で果たしていく組識として平成16年に設立された組織であり、そうした立場から私も貢献できるのではないかと引き受けた。

 

米ビジネス活性化のベースに改正食糧法

米流通の現状への認識は?

 平成16年に食糧法が改正されて以降、米の流通は基本的に自由化され、ある意味では他の生鮮農産物等と同列の位置づけとなった。そうした中で、生産者サイドでは非常に大規模な農業経営体も出現し、いかに生産していかに販売するかに腐心し、販売戦略をもった稲作経営に取組んでいる。
 一方で、米の消費は依然として低迷しているが、消費の仕方は非常に多様化してきた。
 その意味では、産地サイドからみても流通サイドからみても、米業界はもっと活性化していくべきではないか、その可能性があるのではないかと考えている。
 米ビジススを活性化するベースが改正食糧法であったと捉えている。
 ただ、ここにきて生産調整のあり方が30年産米から変わった。”減反廃止”のような見方もされるが正確ではない。生産者、生産団体が主体となった取り組みがうまくいくかは、この先の大きな課題である。
 平成30(2018)年産の状況をみていると、従来のやり方を踏襲していかなければまた過剰米が増えると、産地サイドの多くは見ており、それを踏まえて臨んだのが今の姿になっているのではないかと感じる。

 

消費情報提供や流通安定へ信用保証事業

そうした中での機構の役割は?

 この機構は当初、過剰米対策、集荷円滑化事業の主たる担い手としてスタートした。直接の米の需給自体は政策面からも大きく動くことはないと思われるが、時代の動きに的確に対応し需給の安定をいかに支援するか、”縁の下の力持ち”的役割がある。
 例えば、正確な消費の情報を伝え、生産サイドや中間業者サイドは、それを見ながら的確な行動に移せるようにすることが非常に大事な役割ではないかと思う。
 一方、米の需給安定は流通安定がベースになる。これを担保するのは信用保証事業で、機構会員である米卸売業者の経営安定に資することも、変わらない重要な役割である。
 米の需給安定に対して当機構がダイレクトに表面にでるのではなく、”黒子”のような存在だが、きちんと需給安定を支えていく。まずは、機構に任せておけば大丈夫というふうな存在でありたいと思う。

 

多様化する食べ方や用途に拡大の余地

米消費拡大も業界全体として大きな課題だが。

 「これ」という切り札がなかなかない。しかし、主食用米は家庭だけではなく外食や中食でと、食べ方が変わってきている。米としての用途もかなり多様化してきており、それぞれにビジネスチャンス拡大の余地はまだまだあると思う。従来からの方策に加え、そこに向けた消費拡大策を練っていかなければならない。「夏越(なごし)ごはん」のような行事食の提唱や普及なども仕掛けており、よりごはんが身近になるような方策を打っていきたい。

 

研究成果を政策や生産・流通現場に繋ぐ

これまでで思い出深かった仕事は?

 農業経済学は、いかに研究の結果を政策や生産・流通現場に反映できるかを非常に大事にしている。改正食糧法が施行され、米の流通が自由化し”売れる米作り”の発想が大事になってきたとき、九州大学の地元である、福岡県下の消費者のニーズを調査した。その結果、3割程度が「安さ」を求め、1割弱が 「特別に栽培された付加価値の高い米」、他の多くは「品質」を重視していた。そこで同じ品質の米を、もう1ランク上げて供治することに消費の可能性が残っているのではないか、そこに力を入れたらどうかと提案し、実践の動きに繋がったことがある。
 もう一つは、生産目標数量の配分の仕方を、売れる米作りに努力している産地に対しプラスαの仕組みづくりを提言し、幾度かの実践を経て福岡県下の生産調整の方策として受入れられた。
 我々の研究成果が実際の政策や生産現場に繋がったという意味で非常に印象深かった。
 これまでの蓄墳を活かして、米の安定供給の確保と、稲作農業や米関連産業の発展に少しでも寄与していきたい。


 

〈本号の主な内容〉

■このひと 国内産米流通と米穀機構の役割
米穀安定供給確保支援機構
理事長
福田晋 氏
■協同組合の役割発揮へ わがJAの自己改革実践(4)
 JA花咲ふくい  冨田勇一 代表理事組合長
 JAグリーン近江 大林茂松 常務理事
■第22回 JA女性組織フレッシュミズ全国交流集会
■JAグループ茨城における営農支援の取り組み
■かお
 JA共済連常務理事の 鹿嶋伸行 氏
■災害に強い施設園芸づくりに向けて
 雪害防止に向けた技術対策
■栽培技術を活かした産地再生へ
 第2回 全国きゅうり養液栽培サミットから
■キュウリの施設栽培における病害虫防除のポイント
 埼玉県農業技術研究センター 生産環境・病害虫防除技術担当部長
 宇賀博之 氏
行友弥の食農再論「多文化共生への覚悟」

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