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「農林水産業みらいPJ」の19年度助成先が決定=みらい基金

2019年12月19日

過去最高の応募、8件に総額6億7780万円

 一般社団法人農林水産業みらい基金(代表理事=大橋光夫昭和電工㈱名誉相談役)は11日、2019年度助成対象事業を発表した。

みらい基金農林中金が農林水産業や地域の活性化に貢献する取組みに費用を助成するために200億円を拠出して2014年設立。

 同基金が展開する「農林水産業みらいプロジェクト」は、前例にとらわれず創意工夫にあふれ、直面する課題の克服にチャレンジしている地域の農林水産業者の取組みに対し、「あと一歩の後押し」を通じて、農林水産業と食と地域のくらしの発展に役立ててもらおうというもので今回で6回目。様々な農林水産業者の取組みの参考となるよう、厳正な審査を行った結果、今年度の助成対象事業として8件(前年比3件増)・助成総額6億7780万円を決定した。助成対象事業1件あたりの最大助成額は1億8804万円、最小助成額は2519万円。

 今年度は6月7日から7月31日にかけて一般公募を実施、全国から過去最高の95件(前年度90件)の応募があった。応募のあった95件の内訳をみると、〈産業別〉では、農業=65件(前年比7件増)、林業=11件(同4件増)、水産業=19件(同6件減)、〈地域別〉では、北海道・東北=21件(同1件減)、関東・甲信越=21件(同8件増)、東海・北陸・近畿=24件(前年同)、中国・四国=14件(同1件減)、九州・沖縄=15件(同1件減)となっている。

 なお、同基金ではこれまでに、2014年度=6先、2015年度=8先、2016年度=9先、2017年度=9先、2018年度=5先に助成を行っており、来年度についても、「募集要項の見直しを行いながら、農林水産業の発展に向けた助成事業を行っていく」とコメントしている。

みらい基金助成対象事業の紹介

株式会社オール真庭
(岡山県真庭市/プロジェクト名=持続可能な地域と農業を目指して~地域参加の生産・加工と地産外消)

みらい基金助成対象事業オール真庭

 同社は、地元企業、自治体、地元JA等多様な地域の主体が出資し設立された株式会社で、これまで主に真庭市の県外アンテナショップ運営を担ってきた。真庭市は、「蒜山(ひるぜん)大根」の産地だが、小規模な兼業農家が多いこともあり、アンテナショップにおいては、同時期に同品種が大量に出荷され、値崩れや廃棄コストが発生する一方、顧客ニーズが高い商品が不足する等の課題があった。このプロジェクトは、同社が農家と連携し、契約栽培による計画生産を行うことで、生産・出荷時期の調整や新たな品種の栽培等を推進するとともに、共同で利用できる農産品加工施設や集荷配送拠点を整備することで、真庭地区で生産された農産物を「全て売る」仕組みを構築するもの。あわせて、真庭市が進めるバイオ液肥の活用とも連携し、コスト削減・付加価値化についても取り組む。川下のニーズを把握できる同社が農家と連携し、ロスの少ない農産物の生産に繋げるとともに、加工施設整備により、農産物の廃棄量削減・付加価値化を図り、小規模農家の多い地域における持続可能な農業モデル確立に繋げることを目指す。


Kamakura Industries株式会社
(神奈川県鎌倉市/プロジェクト名=1日農業バイトdaywork)

みらい基金助成対象事業Kamakura Industries

 農業(特に機械化の難しい野菜類の栽培)においては、「繁忙期だけ労働力が欲しい」ニーズがあるものの、労働力が必要な期間が短く、気象条件に左右されやすい特性もあるため、派遣会社等の活用が難しく、繁忙期の労働力の確保が深刻な課題となっている。このプロジェクトは、これらのニーズに対応すべく、1日単位の農業アルバイトのマッチングサービスアプリを開発し各地への本格展開を目指すもの。期間を1日単位とすることで、本職を持った地域住民を広くターゲットとし、副業で農業を手伝ってもらうなど、きめ細かいマッチングが可能であることが特徴。北海道十勝地域において、地元JAとも連携しつつ先行的に取り組んだところ、正社員や若年層など、これまで農業現場に足を運んでいなかった層が求職者として同サービスに登録しており、マッチング実績も高いことが確認されている。今後、一般企業や自治体職員の副業解禁の流れも想定されるなか、同サービスの展開を通じて、地域農業のボトルネックである人手不足を解消し、農業の規模拡大や、農業の担い手・求職者双方の所得向上に繋げていくことを目指す。


十勝グランナッツ合同会社
(北海道帯広市/プロジェクト名=十勝の夏空と大地から新たな食の発信―生産の効率化による落花生の産地創造)

みらい基金助成対象事業十勝グランナッツ

 十勝地域においては、小麦・甜菜・豆・馬鈴薯の4品目の輪作による大規模生産が行われているが、元来食品加工率が低く、近年では連作障害がみられるなどの課題がある。落花生は、日本ではテーブルナッツとしての用途が一般的だが、海外ではピーナッツバターやオイルとして活用されており、加工用途については伸びしろのある作物。しかしながら、国内主要産地においても、高齢化等により生産量は減少傾向であり、わが国の自給率は10%程度にとどまっている。こういった状況下、生産者・大学・企業等が連携して落花生の産地化を目指す「十勝グランナッツプロジェクト」に取り組んできた。その結果、本格的な生産拡大に向けては、生産者の労力が大きい洗浄・乾燥・選別作業がネックとなっており、これらの作業のレベルが生産者間で異なることもブランド化に向けた障壁となっている。今回の事業では、プロジェクトの中核である同社が、落花生の洗浄・乾燥・選別作業を機械化のうえ一括で担うことで、新たな輪作品目として、落花生の生産規模拡大や品質斉一化によるブランド力強化を進め、落花生の新たな食文化の定着と自給率向上を目指す。


宮崎ひでじビール株式会社
(宮崎県延岡市/プロジェクト名=クラフトビールを中心とした持続的な地域農業モデルの構築と普及)

みらい基金助成対象事業宮崎ひでじビール

 同社は、宮崎県でクラフトビールを製造するメーカー。これまで、宮崎産・九州産の大麦・ホップを活用したビールづくりに向けて、協力農家と試験的な取組みを継続してきた。大麦は稲作の裏作として平野部で、ホップはその特性を活かして中山間地域で栽培する計画だが、ホップについては、本来は比較的寒冷な地域が適地であるため、農業試験場などとも連携しながら取り組んでいる。今回のプロジェクトでは、これまでの取組みを一歩進め、同社が参入農家への圃場新設費助成や災害等にともなう最低所得補償制度等を創設し、地域の大麦・ホップ生産を支援する。あわせて、ビール製造の過程で発生するビール粕について、畜産農家に安価で供給し、畜産農家の飼料コスト削減を図るとともに、牛肉加工品については同社が販売面もサポートする。地域のビールメーカーが核となって、大麦・ホップ生産の支援・全量買取を行うことで、農業所得向上や中山間地域の新たな農業モデル確立に繋げるほか、畜産農家との連携を進めることで、地域資源循環の実現を目指す。


株式会社東京チェンソーズ
(東京都西多摩郡檜原村/プロジェクト名=檜原村トイビレッジ構想で、稼げる林業を目指す)

みらい基金助成対象事業東京チェンソーズ

 同社は、多くの若いIターン者を中心に運営されている林業サービス会社。これまで、同社は東京おもちゃ美術館等とも連携し、未利用材を活用した玩具等、子供向けブランド商品の開発に取り組んできたが、乾燥や皮むきの作業体制が確立されていないことによる干割れの発生やコスト増が課題となっていた。今回のプロジェクトでは、ボトルネックとなっている乾燥から皮むきの工程を効率化するための設備を整備するとともに、干割れしない乾燥技術の確立を目指す。あわせて、外部専門家を活用し、玩具のデザイン性を強化することで、商品力の向上を図る。また、同プロジェクトは、木育拠点となる「森の美術館」をオープンするなど、トイビレッジ構想を推進する檜原村をはじめとした地域関係者と連携を取った取組みとなっている。「木を一本まるごと使い切る」発想のもと、木の玩具としての未利用材の活用をこれまでより一歩進めることで、林業の六次産業化を通じた地域貢献や林業の収益力向上を目指す。


富山県森林組合連合会
(富山県富山市/プロジェクト名=広葉樹のエネルギー利用への新たな取組)

みらい基金助成対象事業富山県森林組合連合会

 富山県の山林は、比較的人工林が少なく、天然の広葉樹林が多いのが特徴。広葉樹は、主に菌床きのこ生産のためのオガ粉や、バイオマス発電所の燃料として活用されてきたが、活用されているのは幹の部分だけで、枝の部分は伐採現場に放置されることもあった。放置された枝は、広葉樹の天然更新の阻害要因となるほか、最近では豪雨災害時に流出するといった悪影響が出始めている。今回のプロジェクトでは、県内4つの森林組合を束ねる同会が、ドローンと地上レーザによる計測データを活用して枝の資源量を推定する技術を確立し、現地で枝をチップ化し、伐採された幹とあわせて低コストで搬出し、バイオマス燃料として活用するまでのプロセスを事業化し、森林組合への推進を図る。地域のバイオマス発電所においても、県内産の原木・チップの使用量が増加することは、輸送コストの削減等、採算面だけでなく、地域資源の循環の観点からもメリットがある。幹だけでなく枝も含めた資源量の把握や、採算性の評価、バイオマス燃料としての活用を可能とすることで、森林所有者の手取り増加、広葉樹の天然更新の促進、災害防止に繋げることを目指す。


株式会社ケーエスフーズ
(宮城県本吉郡南三陸町/プロジェクト名=南三陸海と陸の恵み活用プロジェクト)

みらい基金助成対象事業ケーエスフーズ

 東日本大震災で大きな被害を受けた南三陸町の漁業は、震災後一時復活傾向にあったが、近年は藻場の「磯焼け」により、アワビをはじめとした魚類・貝類の漁獲量に深刻な影響が出てきている。「磯焼け」の主要な原因としてあげられるのが、キタムラサキウニの異常繁殖による海藻類の食害。これまで、漁業者による自主的なウニの駆除・粉砕作業を行ってきたが、潜水士資格を有していないことや、潜水専門業者の委託についてもコストがかかることから、漁業者の負担は大きく、有効な駆除には繋がっていない。今回のプロジェクトでは、地域の水産加工会社である同社が、漁協と連携して漁業者の潜水士資格取得をサポートするとともに、漁業者が駆除したウニを買取り、陸上でナマコとともに畜養して身質を改善し、商品価値を高めて販売する仕組みを構築する。畜養にあたっては、ワカメ等の残渣やコンブのほか、地域のJAとも連携し、規格外の農産物も活用する計画。漁協や大学、自治体、JAなど、地域の多様な主体と連携しながら、藻場の再生を通じた地域漁業への貢献、地域の新たな収益源確保や雇用創出を通じた地域活性化を目指す。


閖上赤貝組合
(宮城県名取市/プロジェクト名=先端技術を用いたサステナブルな自発経営型漁業モデルの構築)

みらい基金助成対象事業閖上赤貝組合

 閖上地区は全国的な赤貝の産地。過去の乱獲や東日本大震災による資源量減少などの影響を受けながらも、漁獲ルールの導入、漁具の改良、重量分別機導入による出荷基準の統一等を通じて、これまでも閖上赤貝の品質の維持や資源管理の取組みを行ってきた。しかしながら、近年になって、赤貝の漁獲量の減少や身色の悪化といった問題が出てきている。漁業者も漁場の変更や漁の時間短縮など、試行錯誤しているが、赤貝は、調理者が貝を開けるまでは身色が分からないため、抜本的な解決には繋がっていなかった。今回のプロジェクトでは、赤貝漁業者の団体である同組合が、大学等と連携し、近赤外線や画像解析技術を活用した非破壊での身色判別技術を確立し、身色が悪いと判別された赤貝については海に戻して身色の回復を図る。あわせて、簡便な種苗生産システムを導入し、漁業者自らが資源生産・管理・保護を行う漁業モデルの確立に取り組む。閖上赤貝という地域資源のブランド力の維持・向上に加え、資源量の維持・拡大を通じて地域漁業の持続可能性を高めることを目指す。

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