日本農業の発展と農業経営の安定、農村・地域振興、安心・安全な食料の安定供給の視点にこだわった報道を追求します。

日本農民新聞 2019年11月25日号

2019年12月6日

JA全中 専務理事 比嘉政浩 氏アングル

 

JAの経営基盤強化へ~課題と取組み方向

 

JA全中
専務理事
比嘉政浩 氏

 

 JAグループでは、第28回JA全国大会決議の重点の一つである「持続可能な経営基盤強化の確立・強化」に基づき、さらなる取組みを強化するための検討を開始し、年度内に基本的方向をとりまとめることとしている。現状での課題と取組みの考え方を、全中の比嘉専務に聞いた。


 

JA自己改革の成果

農協改革集中推進期間を終えての課題から。

 今年5月に、5年間の「農協改革集中推進期間」を終え一定の評価を受けた。7月の参院選における与党公約では「准組合員利用規制の検討は『組合員の判断に基づくもの』とされ、農林水産大臣も与党決議をふまえて検討することを明言している。
 その背景には、この間の全国のJAにおける自己改革の取組がある。例えば、実需者ニーズに応じた作物転換や業務用品種への挑戦、労働力確保、生産資材価格の引下げなどの取組みなどがある。全体の販売品販売高は3年間で8%増加した。こうした数字が一定の評価につながったと受け止めている。
 さらに、全農の事業改革の取組みも大きく寄与した。直接販売は米、園芸とも拡大し、農薬では通常より2、3割安い超大型の担い手直送規格の供給を伸ばしている。この他にも、海外営業拠点の整備や直販に向けた広域集出荷施設の整備、実需者への出資・業務提携、肥料の銘柄集約など、積極的で発信力の強い動きも評価につながった。
 農業者の世代交代という大きな変わり目の時期にあって、農業者の所得増大を重視したJAグループの自己改革は、今後も継続していかなければならない。一方、与党公約は実効的に実現してもらわなければならない。これにむけて、協同組合としての“筋”を通すためにも、准組合員の位置づけのもう一段の明確化が今後の課題だと思っている。

 

厳しい経済環境がJA経営を直撃

JAの経営基盤強化の必要性は?

 平成27年の第27回JA全国大会と今年3月の第28回大会の決議内容は、自己改革の実践や組合員とのメンバーシップの強化など、多くの部分が継続されているが、大きな相違点は、28回大会で新たに「持続可能なJA経営基盤の確立・強化」を重点課題に掲げたことだ。
 長引くマイナス金利等の影響で、メガバンク3行でさえ人員や店舗の削減計画を公表し、10年後には地銀の6割が赤字になると日銀が試算するなど、わが国の金融機関の収支見通しは極めて厳しい。そうした中、農林中金は昨年度、信連等に対する奨励金の引下げを決定しており、それがJA経営に大きな影響を与えることが懸念されている。厳しい経済情勢は厳しさが続くことを前提に経営基盤強化に取り組まねばならず、景気はやがて上向くといった安易な楽観論に頼って改革を先送りすることがあってはならない。
 この10月、新体制となった規制改革推進会議が、重点的フォローアップ事項に、改めて「JAグループの信用事業の健全な持続性の確保」を掲げたことも、今後の課題として押さえておく必要がある。

 

組合員との対話に時間をかける

JAの経営基盤強化の考え方は?

 28回大会でも、持続可能な経営基盤強化へ、経済事業の収支改善と効率的な組織体制の必要性を打ち出しており、この加速化と重点化が求められている。
 JAごとに収支見通しをたて、JA全体で目標利益を定め、経済事業部門の利益目標を決めて、伸ばすべき事業は伸長を図りつつ、経済事業の収支改善、拠点再編に取組まなければならない。
 一方で、准組合員の利用制限等、5年後条項による農協改革の議論が再燃する懸念があるなか、引き続き組合員の皆さんからの評価が非常に大事である。組合員から「JAはよくやっている」と言われる状況を作り上げる高めていくこと、維持していくことが重要だ。
 いま我々は、農業者の所得増大を中心に据え農業振興に汗を流し、組合員の皆さんに一定の評価を頂いている状態のなかで、拠点再編を含めた収支改善をする、この両方を両立させなければならない極めて難しい局面に立たされている。
 そのためには、組合員との“対話の時間”を出来るだけ豊富に持つことが一番だ。一般企業のように「明日からこの店を閉めます」と紙を一枚貼ってすますわけにはいかない。組合員に早い段階から状況を説明し、情報を共有して意見交換を重ね、時間をかけてご理解をいただく。そのためには、全国連・県域・JA段階ではできるだけ早くから情報を共有しておくことが必要だ。
 例えば、新たな事務機器等を導入し効率化をめざすにしても、どれだけの費用が要り、どのようなことが可能になるのか等々の情報が早い段階でJAに伝わらなければ、支店の再編も具体的に検討がすすまない。全国連の提案を聞きJAが判断し、組合員との対話の時間を十分とり、拠点再編を実践する。組合員とJAの対話に時間をかけるためにも、JAと県連・全国連の間で情報の齟齬があってはならない。全中役職員も分担して全県に赴き、個別に話し合いを続けている。
 およそ15年前に支所統廃合に取組んだ時には、推進目標をもたない渉外を置く等、JAからたくさんの知恵が生まれた。例えば、経済事業でもこのときにAコープ等のレギュラーチェーン化や生産資材の県域単位での配送など、新しい事業モデルが出てきた。
 今回も、JAからいろいろな知恵が出てくると思う。また、全国連も新たな事業モデルを提案し続けるだろう。それらを共有し、組合員の皆さんから評価を得ながら経営の収支改善に取組んでいかなければならない。

 

それぞれの役割・機能を活かし一体で

全国連一体となったJA経営支援の取組みが始まっているが、その現状と方向性は?

 JAの経営収支の改善のためには、全国連それぞれが役割を発揮していく必要がある。全農は県本部等が中心となって各JAに対しモデルJAを参考に課題解決策を提案するとともに、広域・県域で対応すべき課題についてマスタープランを作成して取り組むとしている。農林中金は店舗・ATMの再編に向け、新たな店舗の在り方を提案し、加えて営農・経済事業に関する見える化ツールという分析ツールを活用した個別支援を開始している。共済連はJAの将来にわたる収益安定化に向け収益・費用両面での検討を始めている。全中はこれらを含めた「JA経営基盤強化にあたっての基本的考え方」を示しているが、これを改定し、総合的な情報提供、人材育成の場の提供等に尽力していきたい。
 全国のJAから、「全国連はもっと一体的であるべし」とのご意見を繰り返しいただいている。一層工夫していきたい。

 

合併構想は早期の実現が肝心

さらなる県域JAやJA合併の方向がでてきているが。

 JA合併に関しては以前と違い、全中が全国俯瞰的な合併の方針を示しているわけではない。大事なことは、構想がある合併は早期に実現すべきであること。合併構想があるのに実現を先延ばしにしていると、その間にいろいろな改革が停滞する。
県ごとに農業のあり方や地域条件も違うので、各県、各地域で組織のあり方を決め、合併構想を定め実現していく。その実現が遅れれば遅れるほど、効率的な例えば人事制度の見直しも配送体制や施設の再配置も遅れていく。速やかに実現し合併効果を早く顕在化することが大事だ。

 

JA経営支援機能はメリハリを大事に

一般社団法人となった全中のこれからの取組みは?

 「代表」「総合調整」「経営相談」という3つの機能を果たすことを組織決定いただいた。代表という意味では、農政、広報に果たす役割はこれまでとまったく変わらないと思っている。一方、JAグループ全体のため、JA経営を支援する機能に関しては、メリハリを大事にしながら取組んでいく。不祥事や経営不振問題の解決には、引き続きしっかり対応していく。これまで同様、JAが主体となった前向きな努力を、中央会が支援するという姿勢を貫いていきたい。

 

3月末には対応方向をとりまとめ

今後のスケジュールは?

 「持続可能なJA経営基盤確立・強化の基本的対応方向」に関しては、「農協法5年後見直しを見据えたJA自己改革の取組方針」の組織協議とあわせ、3月末を目途にとりまとめをしたい。3月末は多くのJAの年度替わりで、一方、毎年4~5月には規制改革推進会議が議論を重ねる時期である。この時期に自らの取組み方向を対外的にも明確にしていくことが大事だ。年度の節目に外の目も意識して、取組むべき方向をきちんと打ち出していきたい。


 

〈本号の主な内容〉

■アングル
 JAの経営基盤強化へ~課題と取組み方向
 JA全中 専務理事 比嘉政浩 氏

■第23回JA女性組織フレッシュミズ全国交流集会
 食のたいせつさを 学ぼう つたえよう
 -フレミズ SDGs-

■かお
 JA共済連 常務理事に就任した3氏
 岩下秀樹 氏
 高橋一成 氏
 早水徹 氏

行友弥の食農再論「『じゅうねん』がつなぐ未来」

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