日本農業の発展と農業経営の安定、農村・地域振興、安心・安全な食料の安定供給の視点にこだわった報道を追求します。

農林中金・日本公庫・JA・村の4者が「飯舘牛」の再開を支援

2019年12月4日

「今後の地域農業の活性化、避難者の帰村や雇用の創出に」と

 農林中央金庫福島支店、日本政策金融公庫福島支店、ふくしま未来農協、飯舘村の4者はこのほど、山田豊・猛史(37歳、70歳)、天野浩樹氏(32歳)の飯舘村での肉用牛繁殖経営再開を連携して支援したと発表した。

 農林中金JA日本公庫は、3氏の営農再開計画の策定や行政機関との調整等を事業構想段階からサポートすると同時に、飯舘村の復興に果たす役割を評価し、運転資金、設備資金として農業経営基盤強化資金(=スーパーL資金)、土地取得資金としてアグリマイティー資金の融資を実施。飯舘村は、福島再生加速化交付金による牛舎の貸与、営農計画の策定の支援、また、人・農地プランへの位置づけを行い、地域の中心になる農家として支援した。

 飯舘村は、福島第一原子力発電所事故の影響により村内全域が警戒区域、計画的避難区域に指定され、全村民が避難を余儀なくされていたが、2017年3月31日に一部地域を除き避難指示が解除され、村民の帰村および産業の再開に向けて、村を挙げて取り組んでいる。飯舘村は特に、肉用牛の生産地として知名度が高く、地域ブランド「飯舘牛」は高級和牛として確固たる地位を築いていたが、震災を契機に「飯舘牛」の生産農家は避難を強いられ、ブランドは存続の危機に瀕している状況にあった。このため現在、村を挙げて「飯舘牛」ブランドの復活に取り組んでいる。

 山田豊氏・猛史氏は、震災以前は飯舘村で30頭規模の肉用牛繁殖経営を営んでおり、福島市へ避難後も肉用牛経営を継続してきた。避難指示解除時を契機に、飯舘村でもう一度肉牛生産を行いたいという思いが高まり、今回飯舘村での経営再開を決めたもの。日本公庫の農業経営基盤強化資金を利用し、肉用牛繁殖用母牛の導入や牛舎周辺の造成工事等に資金を充てる。約50頭の頭数を保有しているが、今回の融資を活用して新たに12頭を導入し、今後も順次飼養頭数を増加させる予定。

 天野氏は、祖父が相馬市で行う肉用牛の経営を手伝う兼業農家。震災後、自らの畜産に関する知識や技術が深まるなかで、専業農家として独立したいとの思いが高まる折に、飯舘村で独立できる機会があること、また以前から気にかけていた飯舘牛ブランドの復活に向けて、自らの技術を活かしたいという新たな思いが芽生え、飯舘村で肉用牛生産を行う決意をした。日本公庫の農業経営基盤強化資金、JAのアグリマイティー資金を利用し、肉用牛繁殖用母牛の導入や牛舎周辺の造成工事、事業用地取得等に資金を充てる。今後は、居住地、肉用牛経営のすべてを相馬市から飯舘村に移し、2020年までに融資を活用して素牛を順次導入、5年後には約80頭規模まで拡大させる計画。

 農林中金JAおよび日本公庫では、「今回の肉用牛経営の再開は、飯舘村の復興および『飯舘牛』ブランドの再興に向けて大きな意義を持つものと理解し、今後の地域農業の活性化、避難者の帰村や雇用の創出に繋がると考えている」とコメントしており、引き続き3氏をサポートしていくと同時に、東日本大震災からの復興や地域農業の振興に向けた取組みを支援していくとしている。飯舘村は、「飯舘牛」ブランドの本格的な再興に向け、3氏を地域の中核的担い手と位置づけ、「復興加速化交付金」による支援などを通じ、経営再開を後押ししていく方針。

keyboard_arrow_left トップへ戻る