日本農業の発展と農業経営の安定、農村・地域振興、安心・安全な食料の安定供給の視点にこだわった報道を追求します。

日本農民新聞 2019年7月5日号

2019年7月5日

JA全国女性組織協議会 会長 加藤和奈 氏このひと

 

JA女性組織活動のこれから

 

JA全国女性組織協議会
会長
加藤和奈 氏

 

女性の意識改革に力
SDGsの視点で活動を再確認

 JA全国女性組織協議会は5月16日の通常総会で、新会長に加藤和奈氏(JAあいち女性協議会会長、JAあいち海部女性部部長)を選任した。加藤氏に、就任の抱負と、これからのJA女性組織活動への想いを聞いた。


 

〝わがJA〟意識を醸成

会長就任の抱負を。

 まずは各地の女性がJA運営への参画を進めるよう、私たちを含め、女性組織に参加する方々の意識を変える活動を行いたい。
 JA自己改革は、JAだけが進めるものではなく、組合員の意識改革が不可欠。私たち女性組織もJAの一員として〝わがJA〟意識を持ち、JAへ意見を出して、自己改革を進めてもらえるように取り組みたい。

 

地域ごとの想いふまえて活動を

3か年計画について。

 今年度からの3か年計画「JA女性 地域で輝け50万パワー☆」では、〝食を守る☆〟〝農業を支える☆〟〝地域を担う☆〟〝仲間をつくる☆〟〝JA運営に参画する☆〟の5つの課題と、国連が採択した持続可能な開発目標『SDGs』を理解・意識した活動に取り組むことを採択した。
 これまで女性組織が行ってきた活動を、SDGsが掲げる17の目標をふまえて振り返ると、当てはまる活動や足りなかった部分、また「これならできそう」と新たな目標を見つけることができるはずだ。
 各県・地域には特産物をはじめとした〝個性〟がある。私は女性協の監事を2年務める中で、土地柄を活かした各地の活動が大切だと実感してきた。
 女性組織の活動も、単協や県域ごとに様々な想いが込められている。JA全国女性協が一つの指針を出し、それをふまえた活動を各女性組織が考え、実践する形が望ましいだろう。
 個人的には生産者として、近年特に話題に上る食品ロスについて関心がある。
 日本は多くの食品を輸入しているにもかかわらず、多量の食品を廃棄している現状は、非常に心が痛む。
 例えば、売れ残り廃棄が多いと聞く〝恵方巻〟等の行事食を、私たち女性組織が子どもたちと作る等の食農教育を行い、食の意識を高めることで、食品ロスの低減、そして間接的に自給率向上へ寄与することもできるのではないか。

 

子育て世代にも食農教育を

フレッシュミズ世代については?

 農業の重要性を実感した子育て中の女性たちにも、フレミズ活動や組織活動に参加してもらえる道筋をつくりたい。
 フレミズ世代は自分の子どもに食べさせる食の安全性に高い興味・関心がある。
 テレビ等でも食の安全や栄養面に関する報道は多いが、食に直結する「農業の大切さ」を忘れているように思う。
 まだフレミズ活動に参加していない子育て世代の方に、食農教育等の体験を通じて農産物生産の過程や重要性を学んでもらえば、農業の大変さや収穫の喜びを知り、おのずと食べ物が大切だという意識も生まれるのではないか。
 愛知県内では、女性組織の大枠の中に世代の異なる方々が参加し活動しているため、フレミズ世代のみの組織を確立していない。
 活動の際は、例えば自分のお姑さんに聞きづらいことを相談したり、フレミズ世代の託児を私たちが手伝ったりと活動の中で互いに助け合える利点もある。
 中には家族3世代で女性組織に入っている方もいる。
 ただしフレミズ世代の方の中には、子どもの就学を機に仕事を始めたり、学校行事が忙しくなったりと、だんだん参加が難しくなる事情もあるので、時間が取れたときに参加してもらえるように、関係をつないでいる。

 

安心して営農できる農政に

農業を取り巻く状況をどう受け止めているか。

 監事を務めた2年間で、TPP等の農政課題に触れる機会がたびたびあった。
 私たちは消費する側でもあり、生産する側でもあるが、どちらの想いも置きざりなまま、政治的な面が先行しているように感じた。
 生産者の立場としては、安心して営農できるように進めてもらいたい。

 

発言しやすい仕組みでJA参画拡大を

JA運営への女性参画に向けては?

 JA女性協では、3か年計画では、女性のJA運営参画を正組合員は30%以上、総代は15%以上、理事等は15%以上を目標にしている。
 ほとんどの家庭では、女性が家庭の財布を握り、食卓も守っていると思う。家族の健康も考えて食品を選ぶ立場から、様々な想いや考えを持っているので、もっと女性の意見を聞いていただきたい。
 ただ残念なことに、多くの方は会議の場で発言することが苦手だと思う。私もこれまで様々な会議に参加してきたが、耳なじみのない難しい言葉が多く、理解することに時間を費やしてしまい、意見が出せない時もあった。
 JA役職員だけでなく組合員全体に向けた内容であれば、今後女性のJAへの参画を拡大していくためにも、組合員が理解しやすい内容だと嬉しい。それぞれの想いを積極的に発言しやすい仕組みづくりにもつながるはずだ。
 他方、私は今後様々な会議等へ参加する機会が増え、学ぶ場も増えるだろう。私自身が学びを深めて、女性組織の仲間に「こういうことなんだよ」と伝えられるよう努めたい。


 

〈本号の主な内容〉

このひと JA女性組織活動のこれから
 JA全国女性組織協議会 会長 加藤和奈 氏

農林中金総合研究所 新中期経営計画の方向とポイント
 (株)農林中金総合研究所 代表取締役社長 齋藤真一 氏に聞く

■JA生活文化活動担当者研究交流集会
 東日本・西日本2地区で開催=家の光協会

■JA全農新3か年計画と2019年度事業のポイント
〇総合エネルギー事業
 JA全農 総合エネルギー部 和田雅之 部長

■全国農協カントリーエレベーター協議会総代会

■麦のカントリーエレベーター品質事故防止強化月間

蔦谷栄一の異見私見「『家族農業の10年』で変えていくために」

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