日本農業の発展と農業経営の安定、農村・地域振興、安心・安全な食料の安定供給の視点にこだわった報道を追求します。

日本農民新聞 2026年4月15日号

2026年4月15日

〈本号の主な内容〉

■このひと
 国内産米粉の構造課題と需要創出への転換
 NPO法人 国内産米粉促進ネットワーク(米粉ねっと)
 理事長 萩田敏 氏

■「JA全中刷新プラン」について聞く
 JA全中 代表理事専務 秋吉亮 氏

■令和8年度 農業倉庫保管管理強化月間
 4月15日~6月30日
 「保管米麦の品質保全とカビ防止・防虫・防鼠」
「保管米麦の水害事故の防止」
「自主的衛生管理の実行」を重点取組み項目に


 

 

このひと

国内産米粉の構造課題と需要創出への転換

 

NPO法人
国内産米粉促進ネットワーク
(米粉ねっと)

理事長
萩田敏 氏

 

 NPO法人国内産米粉促進ネットワークは、令和8年2月に生産者、加工事業者、流通、外食、消費者を横断的につなぐプラットフォームとして「ご当地米粉めん倶楽部」を設立した。理事長を務める萩田敏氏に「ご当地米粉めん」による市場形成と持続的普及戦略を聞いた。


 

「市場として成立する需要の創出」へ

国内産米粉の現状(消費・需給)は?

 国内産米粉は、パン・菓子用途を中心に一定の広がりを見せているものの、全体としては依然として限定的な市場規模にとどまっています。主因は、用途や品質に対する認知不足に加え、安定的かつ継続的な需要が十分に形成されていない点や米粉価格が小麦粉に比べて依然高い点もあります。

 一方で供給面では、米粉用米の生産は一定程度確保されているものの、実需との結び付きが弱く、需給のミスマッチが生じやすい構造となっています。特に加工用途ごとの品質要求と供給の適合、ロット確保、価格面での安定性が課題です。持続的な普及には、用途別に需要をしっかりと作り込み、それに対応した生産・供給体制を構築することが不可欠です。

国内産米粉をめぐる情勢と米粉関連政策への要望・期待と課題をどう捉えているか。

 これまで米粉は幾度かブームを経験してきましたが、その多くは補助事業や一時的な話題性に支えられる側面が強く、継続的な需要の創出には十分には結び付いてこなかったのが実情です。現在は、食料安全保障や輸入小麦価格の変動リスクを背景に、政府においても米粉の利用拡大を重要施策として位置付けていただいており、今後の展開に大きな期待が寄せられています。

 一方で、現行の施策は設備導入や商品開発支援など、供給面の強化に重点が置かれている傾向も見受けられます。今後は、これらの取組みに加え、「市場として成立する需要の創出」という観点から、実需に裏打ちされた用途特化型の支援、すなわち「どこで、誰が、どの用途で継続的に利用するのか」といった点まで踏み込んだ政策の充実が期待されます。

 また、民間の米粉関連団体が進める普及活動や需要開拓の取組みに対するご支援を一層強化いただくことで、官民が連携した形での普及推進が進み、より実効性の高い需要拡大につながるものと考えます。

 

「米粉ならではの価値」の確立が重要

国内産米粉普及の必要性は?

 主食用米の需要減少が続く中で、水田農業の持続性を確保するためには、米粉は単なる選択肢ではなく「戦略的用途」として位置付ける必要があります。特に、年間約460万トンに及ぶ輸入小麦の一部を国産原料に転換することは、食料安全保障の観点からも極めて重要です。

 その際に重要なのは、「小麦の代替」ではなく、「米粉ならではの価値」を確立することです。グルテンフリー、地域性、環境負荷低減といった付加価値を明確化し、用途ごとに市場を再設計することが不可欠です。

 

地域の農産物や食文化と結び付けた米粉めんが高評価

令和8年2月1日に「ご当地米粉めん倶楽部」が設立されました。本倶楽部の概要、設立の背景・趣旨は?

 こうした構造的課題を踏まえ、私どもは「消費起点で需要を作る」ことを最優先に据えました。特に米粉麺は原料使用量が大きく、需要拡人が直接的に米の消費増につながる分野であり、戦略的な突破口と位置付けています。

 また、単なる汎用商品としてではなく、地域の農産物や食文化と結び付けた「ご当地米粉めん」とすることで、差別化と継続的需要の両立が可能になります。

 こうした考えのもと、生産者、加工事業者、流通、外食、消費者を横断的につなぐプラットフォームとして「ご当地米粉めん倶楽部」を設立しました。

2月1日に開催された設立総会とご当地米粉めんの試食会の手応えは?

 本倶楽部は、米粉麺事業者および関連機械メーカーを中核とし、生産者、流通、飲食店、自治体、消費者が参画する「実需連携型」の組織です。単なる情報交換にとどまらず、商品開発、販路形成、契約栽培の推進まで踏み込んだ連携を進めていきます。

 設立総会と試食会には全国から参加があり、「小麦麺と遜色ない」「食感が良い」といった品質面の評価に加え、「地域性を感じる」といった付加価値への評価も高く、「ご当地米粉めん文化」への共感は9割を超えました。これは、品質の課題が一定程度克服され、今後は「流通と認知」の段階に移行していることを示しています。

 

「日常的に選ばれる食品」として定着するように

今後に向けた方向性・提言は?

 今後の普及に向けては、①用途特化型の需要創出、②実需に基づく契約栽培の拡大、③地域ブランド化による差別化、④継続的に食べられる場(外食・中食・給食)の確保、が重要です。

 一過性のブームではなく、「日常的に選ばれる食品」として定着させることができるかが成否を分けます。私どもとしては、「ご当地米粉めん文化」の創出を通じて消費を拡大し、その消費が生産を支える持続的な好循環を全国に広げていきたいと考えています。

 

米粉用米の持続的利用拡大と水田農業の維持発展に貢献

NPO法人国内産米粉促進ネットワークの歩みと今後の取組みについて。

 NPO法人国内産米粉促進ネットワーク(米粉ねっと)は、国産米の新たな需要創出と米粉利用の普及を目的に設立され、これまで一貫して「用途別の需要開拓」と「実需に基づく普及」に取り組んできました。

 設立当初は、米粉の認知向上と利用拡大を目的に、展示会出展やセミナー開催、レシピ提案などを通じた普及啓発活動を中心に展開してきました。特に、業界展示会における「米粉パビリオン」の継続的な実施により、米粉の用途提案や事業者間のマッチングの場を創出し、米粉市場の裾野拡人に寄与してきました。

 その後、単なる普及啓発にとどまらず、米粉の用途別基準の整理や品質評価に関する検討など、実務に直結する課題にも取り組み、事業者が活用しやすい環境整備を進めてきました。こうした活動を通じて、米粉の「使いにくさ」や「品質のばらつき」といった現場課題の可視化と改善に努めてきたことが特徴です。

 一方で、これまでの取組みの中で明らかになったのは、「供給側の整備だけでは需要は拡大しない」という点です。継続的な市場形成には、消費を起点とした需要創出と、それに連動した生産・加工の連携が不可欠であるとの認識に至りました。

 こうした課題認識を踏まえ、現在は特に原料使用量の大きい米粉麺分野に注力し、「ご当地米粉めん倶楽部」を設立しました。今後は、本倶楽部を中核に据え、商品開発、販路開拓、情報発信を一体的に推進するとともに、生産者と加工事業者を結び付ける契約栽培の促進にも取り組んでいきます。

 また、家庭用・外食・中食・給食といった各分野において、継続的に消費される仕組みづくりを進めることで、一過性ではない「日常食」としての定着を目指します。加えて、地域資源と結び付けた「ご当地米粉めん文化」の創出により、地域ブランド化と需要の持続性を両立させていく考えです。

 今後は、消費拡大を起点とした需要の見える化と、それに基づく安定的な生産体制の構築を進めることで、米粉用米の持続的な利用拡大と水田農業の維持発展に貢献してまいります。

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