〈本号の主な内容〉
■アングル
JA共済 令和8年度事業に向けて
JA共済連 代表理事専務 角野隆宏 氏
■労働力支援の仕組みが支える持続可能な地域農業
域の農家同士の連携から生産振興・地域振興を
■生分解性マルチの利用拡大に向けて
千葉県香取郡神崎町 須賀啓介氏を訪ねて
アングル
JA共済
令和8年度事業に向けて
JA共済連
代表理事専務
角野隆宏 氏
JA共済連は3月19日、臨時総代会を開き、令和8年度事業計画を決定した。JA共済事業をめぐる事業環境・課題と今後の方向性、8年度事業のポイントを角野隆宏代表理事専務に聞いた。
75周年を期にJA共済の使命と「絆」を再確認
■まず、創立75周年を迎えて。
JA共済連としてこの1月31日、創立75周年を迎えました。県域との組織統合から25周年の節目でもあります。
75年を振り返り、私どもが守り続けていくものは何か、そして時代の変化に応じて変えていかなければいけないことは何か–1月16日に開催した創立75周年記念式典および1月21日に開催した連合会全本部参加のオンラインイベントでは、本会としての〝不易流行〟について、役職員一人ひとりがいま一度確認する機会になりました。JA共済の使命は、「組合員・利用者の期待と信頼に応え、『安心』と『満足』を提供し続けること」、「ひと・いえ・くるまの総合保障の提供を通じて、組合員・利用者の豊かな生活づくりに努めること」、「豊かで安心して暮らすことができる地域づくりに貢献すること」。これらのことをあらためて確認し合い、新たに作った「絆」の一文字を記した団結旗の下、役職員一同決意を新たにしたところです。

団結旗
団結旗には、JA共済が創立以来、大切にしてきた相互扶助(助け合い)の精神を未来へと受け継いでいくこと、組合員・利用者の皆さまとの信頼関係はもとより、職員同士においても改めて強固な信頼関係を築いていくこと、そして大規模自然災害が発生した際に、全国から集まる仲間が、厳しい現場において互いに支え合うための心の拠り所としての象徴となることへの願いが込められています。
現在、創立75周年の節目を記念する取組みの一環として、75年の歩みを振り返る記念展示「共済プラーザ」と、記念モニュメント「絆の環(わ)」をJA共済ビル(東京都千代田区)2階エントランスホールにて公開しています。

共済プラーザ

絆の環(わ)と48本部の決意のたすき
「共済プラーザ」は、写真とARを用いて本会75年の歴史や現在の取組み、地域貢献活動を紹介するもので、「絆の環」は、JA共済の旧ロゴマークである「結び目」をモチーフとして、47都道府県本部と全国本部の48本部が互いに支え合い、組織として歩みを重ねてきた「絆」を象徴する48個の「結び目」を造形化したものです。
「共済プラーザ」はJA共済ビルにて5月末まで公開しており、6月以降はJA共済幕張研修センター(千葉県千葉市)に設置する予定です。
環境変化に対応したAI活用による推進支援
■JA共済事業をめぐる現況と令和7年度事業に対する評価と課題は。
令和7年度は、JA共済3か年計画(令和7~9年度)の初年度として、重点取組事項である、①保障・サービス提供等の深化、②事業推進体制等の再構築、③農業・地域社会の持続的発展への貢献に力を入れてきました。
その結果、令和7年度は好調な事業実績を残すことができました。とりわけ、がん共済やこども共済について、組合員・利用者のニーズに合致した仕組改訂等を実施できたことが大きな要因であると捉えています。組合員・利用者のニーズを正確に捉え、納得感のある保障を提供するとともに、LA(ライフアドバイザー)を中心とした推進活動が活発に展開されたことで、手応えのある一年となりました。
一方で、農業従事者の減少に加え日本の人口そのものが減少に転じているいま、JA職員の雇用の確保は年々難しさを増しており、LA数についても減少傾向が続いています。これまでのように、LA数の増加を前提として事業量の拡大を図るモデルは通用しなくなりつつあり、LA数が減少する中でも、いかに組合員・利用者一人ひとりに寄り添った保障を継続的に提供していくかが、事業推進体制の大きな課題となっています。
こうした課題への対応として重要となるのが、LAが本来注力すべき推進活動に集中できる環境を整えることです。推進活動に付随する事務負担を可能な限り軽減し、実際の推進活動に注力できるようにする必要があります。LA数が減少する状況下においても、ニューパートナーや加入意向のある方などへの訪問件数を増やせるような体制づくりが急務です。
そのための具体策として、AIを含むデジタル情報基盤の拡充・活用があげられます。例えば資料請求サイト等から得られる情報を精緻に分析・活用し、加入意向が高まったタイミングでLAに適切に情報提供する仕組みを構築することで、推進の効率化や成約率の向上が期待できます。
デジタル情報の活用を通じて、本会としてJAを支援する領域をいかに拡充していくかも重要なポイントです。
また、窓口業務を行うスマサポ(スマイルサポーター)を含めたチームとしての体制を確立していくことが重要です。来店者のニーズ把握やアポ取得等の窓口における役割をスマサポが担い、LAが対話型の推進活動に専念できる環境を整えることで、推進の質と効率の向上を図ります。あわせて、育児休業からの復帰者等をはじめ、時間の融通が利きやすい働き方のLA業務に関心を持つ職員など、LAにチャレンジしたい人材も柔軟に組み込める体制としていくことがポイントであると考えています。
時代の変化に対応した、こうした〝進化系〟の推進体制づくりを進めていけるかが、今後の共済事業における重要な課題です。
一方で、JAにとって特に重要な基盤は組合員です。JA共済の事業は農家の皆さまをはじめとする組合員に支えられており、農家および農業法人のニーズを正確に把握し、それに応えていくことが事業運営の根幹となります。正組合員は減少傾向にあり、准組合員についても大幅な増加が見込みにくい状況ではありますが、組合員との接点を広げ、関係性を深めていくことができれば、結果として共済事業への加入拡大にもつながると考えられます。
そのため、組合員基盤の強化に向けては、共済事業としても経営資源を積極的に投入し、JAの取組みをしっかりと支援していく必要があります。
そこで、現在力を入れて取り組んでいるのが「つなぐaction! プロジェクト」です。本プロジェクトでは、JAファンの拡大に向けて、JAの企画・広報・運営機能の強化と実践支援を行うとともに、地域住民等が集まる場やSNS等を活用した効果的な広報活動を通じて、情報発信と情報収集を一体的に展開しています。
さらに、農業基盤の強化を着実に支援していくため、農家・農業法人のニーズを丁寧に把握するとともに、共栄火災とも連携しながら、万全で一体的な保障を提供できるよう、仕組みの見直しに取り組んでいきたいと考えています。
対話型推進活動を強化 組合員基盤強化にも力
■令和8年度事業の方向と重点取組事項について。
令和8年度は、JA共済3か年計画に掲げる取組事項を着実に遂行する年度と位置づけ、令和7年度の取組状況を踏まえた課題認識のもと、事業運営を進めていきます。
特に注力すべき取組みを明確化したうえで、「各種施策の取組状況を踏まえた強化・改善」「内外の環境変化へ的確に対応するための新たな施策の展開」という2つの視点に基づき、具体的な施策を展開していきます。
ニーズを捉えた推進活動の浸透・定着
重点取組事項の第1は、「ニーズを捉えた推進活動の浸透・定着」です。
とりわけ、対話型の推進活動の展開強化は、早急に取り組むべき重要な課題と位置付けています。JAでは、推進活動にかかるPDCAサイクルを着実に回すとともに、デジタル情報基盤を活用したニーズを捉えた推進活動を展開するため、情報活用やアポイント取得にかかる計画を策定します。本会は、こうしたJAの取組みを後押しするため、実践支援に取り組むとともに、デジタル情報基盤を活用した推進活動の促進に向け、情報活用にかかる計画策定の支援に取り組みます。
また、組合員・利用者への最適な保障提供に向けて、LAによる対話を通じた推進活動の徹底を図ります。これを支援するため、本会はLA育成を支援する研修・育成プログラムの充実や育成者の強化に向けた取組事例集の提供等を行います。
さらに、JAではスマサポによる来店者のニーズ把握やアポ取得等、窓口における推進力の強化に取り組みます。これに対し、本会はカウンターセールス実践マニュアルや取組事例集の提供等を行います。
加えて、資産形成ニーズを踏まえた仕組改訂等を実施するとともに、満期到来時における保障切れ防止対策等の強化に取り組みます。
組合員・利用者本位の業務運営の徹底も重要な取組みです。FD取組方針(組合員・利用者本位の業務運営に関する取組方針)に基づく取組みを着実に実践し、その状況を振り返りながら、継続的な業務改善に取り組みます。
また、組合員・利用者からの「声」に耳を傾け、いただいた「声」を活かした業務改善を図るため、研修の展開、情報発信の強化、優良事例の展開等に取り組みます。
共済推進コンプライアンスの強化に向けては、JAにおいて、情報提供義務および意向把握・確認義務等の確実な遂行、高齢者対応における70歳未満親族の同席、一時払仕組みを中心とする不適切な解約推進の未然防止を徹底します。これらを後押しするため本会では、組合員・利用者向け資材の改修や高齢者対応にかかるシステムデータ項目の充実化、解約推進にかかる保障提案時・引受審査時における事前確認強化にかかるシステム対応を進めます。
組合員・地域住民との接点づくりと共済事業としての関係性強化
重点取組事項の第2は、「組合員・地域住民との接点づくりと共済事業としての関係性強化」です。
まず、情報発信と情報収集を一体的に行う広報活動を通じて、JAファンづくりと関係性強化を進めていきます。
JAの活動を後押しするため、地域で親しまれている著名人等をJAのイベントに派遣し盛り上げる等の「つなぐaction! プロジェクト2026」の展開を通じたJAの企画・広報・運営機能の強化と実践支援を行うとともに、地域住民等が集まる場やSNS等を活用した効果的な広報活動等の実践支援に取り組みます。
また、デジタル情報基盤等を活用した共済事業としての関係構築・強化に向け、ライフプラン設計に役立つウェビナー配信等の情報発信による見込者づくりや、長期新契約手続き時におけるWebマイページ自動登録の実装等に取り組みます。
次に、総合事業としての〝寄り添う〟活動の浸透・定着を図るため、JAは事業・部門の枠を越えた訪問活動やJAくらしの活動等を展開し、広報誌を活用した情報提供や組合員のニーズ把握等に取り組むとともに、LAやスマサポ等は収集した情報を活用し、専門性を活かした「3Q活動」「はじまる活動」等の〝寄り添う〟活動に取り組みます。
本会は、広報誌掲載用コンテンツ等の資材提供や研修を通じた支援を行うとともに、家の光協会提供の支店協同活動等に活用できるコンテンツ「JAサテライト プラス」の活用事例の共有等に取り組みます。
事業推進体制の再構築の促進
重点取組事項の第3は、「事業推進体制の再構築の促進」です。
JA職員・LAの減少が進む中、重点取組事項1「保障・サービス提供等の深化」を実現するためには、推進者が専門性を発揮できる質の高い推進体制を構築する必要があります。
そのため、「LA・スマサポを中心とした訪問・拠点相談体制の構築」「情報活用機能・役割の明確化」「JAの実情に応じた補完チャネルの整備」等に取り組みます。
特に、デジタル情報基盤の拡充・活用については、情報活用、研修・育成、体制づくり等の普及企画機能の発揮に向けた取組みを進めるとともに、AI活用の検討・展開を通じて、JAの普及企画機能やLAの活動を支援し、「事業推進体制の再構築」の実現を図ります。
AI活用については、「AI見込度判定」「AIロープレ」「AIアシスタント」等の検討・展開を進め、LAやLA管理者等の業務の一部をAIが担うことで、LAは推進活動に、LA管理者等は人材育成にそれぞれ集中できる環境の構築を目指します。
人・職場づくりの取組促進
重点取組事項の第4は、「人・職場づくりの取組促進」です。
エンゲージメント向上に向けた重層的な育成策を展開し、職場活性化・チームづくりを推進します。
JAは、職員のES向上に向けて、職場活性化やチームづくり(協働体制構築)の徹底に取り組み、本会は、取組事例・資材の充実を通じて、その浸透・定着を支援します。
またJAは、LA・スマサポ等の個々の課題に応じた活動管理・人材育成に取り組み、本会は、実行計画の策定や実践支援、新たなLAトレーナー研修の展開等を通じて後押しします。
こうした取組みの定着に向け、JAは支店における定期的なミニ研修の開催や支店内ミニイベントを実施し、本会は研修コンテンツや受講者向け研修資材のさらなる充実化等に取り組みます。
連合会のさらなる機能発揮
重点取組事項の第5は、「連合会のさらなる機能発揮」です。
県域・JAの状況に応じたJA支援強化策の展開や、JA向け研修の講師体制の見直し、共済事業体制総点検運動の継続等を通じて、JAへの指導・サポート機能を強化します。
あわせて、JAの事務負荷軽減に向け、火災共済のペーパーレス手続き導入や決裁業務の効率化等に取り組みます。
さらに、AIを活用し、業務プロセスの効率化や付加価値の向上を図るため、投資対効果等を踏まえたAI活用の重点的な取組領域を設定し、計画的な導入・展開を進めます。あわせて、安全かつ効率的にAIを活用できる環境を整備するため、AI共通基盤の構築、AIガバナンス体制の確立による適切なリスク管理、ならびにAIを正しく活用できる人材の育成に取り組みます。
加えて、JAにおける推進・事務のさらなる効率化等に向けて、AIを活用したロープレツールの展開等を通じ、人材育成の強化を進めます。
南海トラフ地震等の大規模自然災害の発生を見据えた対応力の強化も重要な取組みです。災害発生時における迅速かつ適正な損害調査および共済金支払等の実践に向けて、南海トラフ地震対応計画の周知・浸透を図るとともに、JA調査員の確実な動員による万全な損害調査体制の構築、再建築価額簡易評価表および修理費早見表の改訂に取り組みます。
また、共済事業を取り巻く環境変化を踏まえ、審査・査定機能の実施体制の最適化を進めます。具体的には、自動車損調体制について県域を超えた集中処理機能構築の具体化に向けた地区別検討・展開を進めるとともに、引受審査機能については、本会元受契約の処理体制の一元化に向け、東日本引受センターへの段階的な移行を進めます。
さらに、システムの安定的な運用に資する態勢整備に取り組むとともに、共済事業向けの総合的な監督指針を踏まえたサイバーセキュリティ管理態勢の強化に取り組みます。
持続可能な社会の実現に向けた取組みも重要です。気候変動課題に対応するため、事業活動に伴う温室効果ガスの排出量削減に取り組むとともに、運用収益を確保しつつ社会課題解決への貢献を図るため、ESG投資・スチュワードシップ活動等の責任投資の推進を行います。
令和8年度はこれら5つの重点取組事項を着実に実践し、組合員・利用者の皆さまに引き続き「安心」と「満足」をお届けできるよう、役職員一同取り組んでまいります。


