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日本農民新聞 2024年3月15日号

2024年3月15日

第8回 JA営農指導実践全国大会最優秀賞 を受賞して

 

産地の持続的発展へ
営農指導員の役割

 

和歌山県 JAわかやま
南部営農センター

楫本智司 氏

 

 JA全中が2月16日開催した第8回「JA営農指導実践全国大会」における事例発表で、最優秀賞を受賞したJAわかやま南部営農センターの楫本智司氏に、産地の持続的発展に向けたJA営農指導員の役割を聞いた。


 

組織整備、品種改善、差別化でブランド力強化

今回の発表内容の概要から。

 南部営農センター管内は、昔から地域ブランドである「わかやま布引だいこん」の産地で、これをめぐる様々な課題を解決するために産地戦略を策定した。単位面積の販売額向上を目的に、着任当時4出荷団体の連携がなく未整備だった組織をまとめて、平成23年に大根生産販売協議会を設立して組織体制の整備に取組んだ。温暖化や連作障害で品質の低下や病害が多発したことから新たな品種と防除体系を確立し、安定生産を目的に品質改善を図った。また、消費者ニーズに応じた商品で差別化を図った。この3つに総合的に取組みブランド力を強化した。

 また令和3年には、GI登録をすることによって産地戦略を包括的に強化することに成功。単位面積当たりの販売金額を5年間で36%向上させた。

 

「人の組織」の重要性 あらためて学ぶ

最優秀賞受賞の感想は?

 12年間にわたり取組んできたが、私一人ではなし得なかったこと。私の考え方を聞いてもらい、地域の農家のみなさんの考え方を聴きながら、一つの方向にもっていけた点が大きい。何といっても協議会のみなさんのご協力のおかげ。またJAの各担当部門や行政、関連メーカーの協力があってのことと感謝している。

 人と人とのつながりを大事にしていかなければと思った。人の組織であるJAの理念、素晴らしさ、重要性を改めて学ぶことができた。

 「布引だいこんをPRしてくれてありがとう」と、地元が喜んでくれたのが一番うれしかった。

 

生産から販売まで総合的に支援する事業へ

自身の営農指導員としての歩みと、JAにおける営農指導事業の位置づけは?

 小さい頃から農業に興味があり、農学部のある大学に進学し蔬菜園芸の研究室にいた。毎年異なる天候を相手に農業を営む農家の手助けをしたいと思い、生産現場に携わることのできるJAに入組し約15年、営農指導に取組んできた。

 入組後3年間は、他の地域でキャベツ、ハクサイ、ブロッコリー等の栽培指導にあたり、その後、名草、宮前、三田、雑賀地区に異動し大根を中心に指導。本店営農企画を経て再び名草地区の南部営農センターに戻った。

 JAにとって営農指導は〝一丁目一番地〟。組合員の営農に係る全般的な相談機能や営農指導があって、初めて他の事業がついていく。その中で、営農指導は農家子弟や高度化する組合員のニーズに専門的知識を持ち、栽培指導だけではなく生産から販売まで総合的に支援する事業だ。

 営農指導員はJAの顔であり、JAと農家をつなぐ〝パイプ役〟の位置付けだと思っている。

 

話し合いから方向性見出す環境づくり

長い期間の取組みを続ける原動力は?

 産地が一体となったこと。JAだけでも生産農家だけでも進まない。両者のコミュニケーション、話し合いから一つの方向性を見出していくことを意識する環境をつくっていけたことが大きかった。

 農家個々のニーズや考え方はバラバラだが、そのなかでリーダーシップをとってもらえるような農家との話し合いから、JAや産地の今後についての考え方を伝えてもらい、みなさんに納得してもらい進んだことが一番の力となった。何より、地域の農家の大根に対するプライド、良い物を作ろうとする士気が高かった。

 

コミュニケーション力、傾聴力、好奇心と探求心

営農指導員として大切なことは?

 農家全員と可能な限りコミュニケーションをとり、個々の課題に対応するだけではなく、産地全体としての課題をコミュニケーションのなかから引き出していく。様々な引き出しを用意してアプローチし解決していくことが重要だと思っている。

 そのためには、全国の営農指導員の仲間や先進的農家に技術等を教わりながら、担当品目以外の知識も入れるよう意識している。例えば、イチゴの事例でもイチゴ以外の作物に応用できるヒントがいっぱい隠されている。

 営農指導員に必要なのは、第1にコミュニケーション力。農家の想いや営農指導員に求めているもの、期待することは、話をしなければわからない。さらに協議会や部会といった組織を動かすにはコミュニケーション力がなければならない。

 それを前提にした聴く力「傾聴力」も大切だ。一方的に話すのではなく、人の気持ちを汲み上げることが重要になってくる。あとは好奇心と探求心。何に対しても興味をもてば新しいことが出てくる。

 

他産業の技術も導入し 新しいことに挑戦

地域が持続的に農業を続けていくためには?

 既成概念にとらわれず新しいことに挑戦すること。農業分野でも他産業で使えそうな技術を積極的に導入していくことが必要な時代になっている。

 戸当たりの栽培面積が増えているなかで、労働力不足が全国的な課題となっている。これをカバーしていくためには、ITを駆使した省力化への新技術や労働力確保施策の活用が不可欠になってくるだろう。


 

〈本号の主な内容〉

■第8回 JA営農指導実践全国大会最優秀賞 を受賞して
 JAわかやま 南部営農センター 楫本智司 氏

■第65回 全国家の光大会 開く
 「対話でつくろう地域の未来 みんなでつなごう協同のこころ」スローガンに

■令和5年度 JA組合員大学全国ネットワーク研究会
 主催:JA全中 共催:家の光協会、日本協同組合連携機構

■トップインタビュー
 全国農協食品㈱ 代表取締役社長 金子千久 氏

■令和5年度 JA営農指導実践全国大会
 JA全中が開催
 最優秀賞にJAわかやま・楫本智司氏

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