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日本農民新聞 2023年9月5日号

2023年9月5日

このひと

 

4Hクラブ活動のこれから

 

全国農業青年クラブ連絡協議会(全協、4Hクラブ)

会長
水野弘樹 氏

 

 全国農業青年クラブ連絡協議会は、7月通常総会を開き会長に水野弘樹氏(北海道)を選任した。新会長に、4Hクラブ活動への思いと今後の取組み方向を聞いた。


 

農業者のコミュニティに所属したい

4Hクラブ入会の契機から。

 21歳のときに親元就農し、朝から晩まで休みなく農作業をし、その日、話をしたのは家族だけという生活をする毎日で、親以外から情報が全く入ってこず、このままでは井の中の蛙になってしまう不安があった。地域やそれ以外の所で農業者同士のコミュニティに所属したいと思い、4Hクラブに加入した。

 

生産技術アップへ勉強会で情報を共有

これまでの地元での活動は?

 23歳の時に地元・びらとり4Hクラブ会長に任命され、せっかくだからと生産技術に関わるような勉強会をはじめた。地元はトマトの産地。その中で、活動費を使いクラブ員のハウス内環境のモニタリングシステムを各ハウスに取り付け、みんなで情報を共有し数値で見えるようにして生産技術のアップを図った。

 年間のデータを見て一番反収の高いハウスの技術をみんなで〝パクって〟みたとたんに反収が上がった。成績の良い個々の技術を真似し、みんなで情報を交換し合った。そこからPDCAサイクルは、一人で回すのではなく、10人で10回まわそうという取組みを今も続けている。

 また、平取町はアイヌ文化が受け継がれる町でもある。「アイヌが主食として親しんでいたイナキビ栽培」を復活させ、食育活動や勉強会も行っている。

 

会員参画は周知と関係づくりから

北海道や全国段階での活動は?

 24歳で北海道4Hクラブの会長となった。当時は1800人ほど会員がいたが、組織活動の衰退は激しく役員は4~5人しかおらず、全国組織へ役員も派遣できず準加盟の形をとっていた。何とかしなければと、各地区に挨拶に出向き声かけを始めた。まず、人に会い周知と関係づくりから始めて参画を促した。

 全国段階では、昨年副会長その前年事務局次長を務めた。4Hクラブ自体は全国に約1万人の会員がいるが、全国レベルでの大会やセミナーは参加人数が限られていて、本当にもったいない。直接会って情報交換しコミュニケーションをとり、信頼関係を築き合うのは、今だからこそ得られる価値がある。それが地区のクラブだけでおさまってしまっていることが課題と感じている。

 コロナ禍の最初の2年間は全く一緒に集まることができなかった。オンラインでの連絡や会議は便利だが、顔と顔を突き合わせる〝ひと手間〟が、かけがえのない特別なものであることに気付くきっかけになった。

 

一歩外に出て視野を広げる

改めて4Hクラブ活動の意義を。

 4Hクラブは、20~30代前半の若い農業者が中心となって組織され、身近な農業課題の解決方法や、より良い技術を検討するための「プロジェクト活動」を中心に活動している。全国に約670クラブがあり、食育やボランティアなどの地域貢献活動を含め、それぞれが地区に合った活動に取組んでいる。

 一番のメリットは、自分が持っていないコミュニティに入ることができ、もう一歩外に出て視野を広げられること。他県に行っても、地域のクラブ員が交流の場を設けたり視察先をアテンドしてくれたり、4Hクラブという名前に信頼性を感じている。

 問題は4Hクラブの活動を使いきれていないクラブ員がたくさんいること。まずは1クラブ員まで全ての人に、大会やオンラインのイベント等に参加したいと思ってもらえるような、周知と関係性創りから始めたい。現地に出向き一人ひとりと話す機会を設けることに力を入れたい。

 

コミュニケーション創りのきっかけを

今年度の活動のポイントは?

 スローガンは『価値共創』。「会うというひと手間が創る価値」「組織に所属し信頼関係を創る価値」「お互いを高め成長し合える価値」。このような4Hクラブの価値を、改めて認識し個人では創れない価値を共に創っていく1年としたい。

 今年度も全国大会と愛知での意見交換大会を開催する。コロナ前は500人ほどが参加したが昨年度は350人ほど。もう一度引き上げたい。

 また、これまでのSNSと各県の事務局に向けた情報発信に追加し、ラインやインスタのアカウントを立ち上げ、対外的にもカジュアルな投稿を増やしていくことにしている。今年は年間3千人のフォロワーを増やすことを目指している。

 コミュニケーション創りのきっかけとチャンスを与えられるような活動にしっかり取組んでいきたい。

 

どこを守るのか、何を目指すのかを明確に

昨今の農業情勢に感じることは?

 持続可能な農業には何よりも人が重要。新規就農者の獲得に力を入れるとともに、既存の農家の離農にも目を向け農業を守っていく必要がある。出荷をためらってしまうくらい、農産物の需給バランスが悪い状態も続いている。日本全体での需給調整が必要だろう。資材価格高騰は、規模が大きいほど痛手が大きく、経営基盤そのものが傾きかねない。

 基本法の見直し論議が進んでいるが、しっかりした中長期ビジョンでどこを守るのか、ここを目指すのだという点を、もっと具体的に明確にする必要があると思う。

 

組織の枠超えた繋がりが一層の価値を増す

JAグループや他農業団体への期待は?

 農業者の数が減っていくなかで、それぞれの組織の構成員の減少がそのまま組織の価値の減少につながらないような取組みが必要だと思っている。そこには、組織と組織の連携も非常に大事になってくる。

 今、全農では農業法人協会やJA青年組織、4Hクラブと「農業者団体連携プラットフォーム」を設けているが、こうした組織の枠を超えての繋がりや取組みが、今後一層価値を増してくるだろう。


 

〈本号の主な内容〉

■このひと
 4Hクラブ活動のこれから
 全国農業青年クラブ連絡協議会(全協、4Hクラブ)
 会長 水野弘樹 氏

■家の光文化賞JAトップフォーラム 2023
 家の光文化賞農協懇話会、家の光協会が開く
 「JA新時代のトップの役割を問う~教育文化活動と人づくりを中心として~」テーマに

蔦谷栄一の異見私見「もう手遅れか?!」

(第2部 米の生産・集荷・検査・保管・流通)

■令和5年産米の検査・保管にあたって
 JA全農 米穀部 金森正幸 部長

■令和5年産米に対する農産物検査への期待
 全米販 業務部 村上豪 部長

■JA全農営業開発部の米消費拡大の取組み
 新たな米消費拡大の取組み「米粉パン」

■令和5年度 米のカントリーエレベーター品質事故・火災防止強化月間(8月1日~10月31日)

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