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日本農民新聞 2022年10月25日号

2022年10月25日

このひと

 

子どもと農業をつなぐ架け橋に
~ファーマーズ&キッズフェスタに託す思い

 

ファーマーズ&キッズフェスタ2022
実行委員長
(㈱れんこん三兄弟 代表取締役)

宮本貴夫 氏

 

 日本農業法人協会が主催する「ファーマーズ&キッズフェスタ2022」が11月12~13日、東京の日比谷公園で開催される。プロの農業者が都会の子どもたちに農業の素晴らしさを伝えるこの催しは2019年まで10回続けられてきたが、コロナにより20年は中止、昨年は規模を縮小して開催してきた。3年ぶり本格開催となる同フェスタへの思いを宮本貴夫実行委員長(㈱れんこん三兄弟代表取締役=茨城県稲敷市)に聞いた。


 

農と生活者の距離を近づけるために

ファーマーズ&キッズフェスタに参画した思いから。

 茨城県の稲作とレンコンの農家に生まれ、農家の息子は農業を継ぐという既成概念に反発し教職に就いた時期がありました。そこで農業を客観的に見ることができたとき、農業はあまりにもその努力が評価されていない職業だと感じました。自分の生まれ育った農業の環境はとても良いもので、世間のイメージのギャップに驚きました。実際はどうなのか。自分で経営し職業としての農業を実践してみようと20年前に戻ってきました。
 どうしてここまでイメージがかけ離れてしまったのか。農業に触れる機会や場所が少なくなってしまったからで、農と生活者の距離を近づけなければ、このギャップはいつまでも埋められないという思いが募りました。そうしたなかで日本農業法人協会が企画している「フェスタ」に出会い、ぜひ参画してみたいと思ったのです。

 

命に近いところからの農業体験の試みも

今回のフェスタの特徴は?

 コロナで間があいてしまいましたが、この間、人間は食べることから逃れられないことを改めて認識しました。災害や疫病で食べ物が注目される機会になってしまったのはちょっと歯がゆいのですが、このタイミングでフェスタが開催できる意義は大きいと思います。
 子どもと農業が元気になることで日本は元気になる。子どもたちは日々成長し毎年新たな子どもや親が会場に来てくれる、これを積み重ねていく波及効果は大きいものがあります。
 食べることは都会でも経験できますが、実際に農畜産物を育てる農業者と会って話を聞きながら食を楽しむことができる、土から収穫直後の作物の匂いや感触も体感することができるのが、このイベントの特徴です。
 食品ロスもテーマにしました。農は命に直結していることをアピールするため、ロスにならないような食材の食べ方の提案や、その場にある物を災害救助に活用するアイデアを学ぶレスキューキッチンカーなども配置し、持続的な農業に向けたSDGsもキーポイントに、命に近い所から農業を体験してもらうことをテーマにした試みにも挑戦しています。
 一方で、農産物は自然に発生したものを収穫しているのではなく、資材やエネルギーを利用して農業者が手間をかけて育てているのが農業であることを、子どもにも親にも知ってもらう機会ともなればと思っています。

 

接点増やし農業関係人口を増やす

農業の将来を見据えての思いは?

 農業就業人口の減少は必然的な流れであるなかで、私たち農業者が前面に出て生活者と接する機会を増やしていかなければ、農業はより世間から認知され難くなってしまうと感じています。
 刺身の柵が海を泳いでいたりパックされたレンコンが畑にちりばめられていたりのイメージが、笑えなくなってきているほどの現状下です。農業に触れ合える場と関係人口を増やしていくことが、これからの農業を下支えしていくことになります。農業を大変だから保護するのではなく、必要だから残って欲しい仕事と認識してもらえるように、接点を増やしていきたいと思います。
 そうしたなかで、子どもたちも、将来農業者にならなくても農業関係人口としての意識をもった社会生活者になってくれれば、農業の大きな力になると思います。

 

ロマンと職業としての両立を

これからの農業の可能性は?

 農業は一粒の種子から人間の生命を維持するための作物にしていく魅力ある仕事です。太陽と土と水の力を借りて生長していく過程を見ていくだけでも、ロマンがあり満足できる世界です。それを職業として両立させることが大切ですし、今後国民に必要とされる仕事として求められてくると思います。
 食に関わる仕事はとても尊いとみなさん認識していますが、一面、職業として、産業として生活の糧にしていくためには、何が必要でどのような行動をとらなければならないのかは、追求していかなければなりません。それも農業の魅力の一つだと思っています。私自身も3兄弟で力を合わせ、地域の担い手集団として、日本中に、また世界にレンコン商品を拡げていく夢を持っています。

 

農業の第一印象をよいイメージに

子どもたちに伝えたいことは?

 来場してくる子どもたちは、世間の大人たちがもつ農業のイメージをまだもっていない世代です。その世代に向けて、プライドをもって楽しく働いている農業者に実際に会ってもらい、ぜひ記憶に残して欲しいと思います。
 ファーストインプレッションで良いイメージをもってもらえれば、その先も自ずとよい影響があるでしょう。そうあって欲しいという思いで、精一杯子どもたちと触れ合いたいと思います。


〈本号の主な内容〉

実りの秋 国産を食べよう 特別号

■このひと 子どもと農業をつなぐ架け橋に
      ~ファーマーズ&キッズフェスタに託す思い
 ファーマーズ&キッズフェスタ2022実行委員長
 (㈱れんこん三兄弟 代表取締役)
 宮本貴夫 氏

■Farm Love with ファーマーズ&キッズフェスタ2022-農業と子どもの元気が日本を元気にする-
 11月12日(土)~13日(日)東京・日比谷公園で開催

■令和4年度(第61回)農林水産祭 実りのフェスティバル
 11月11日(金)~12日(土)東京・サンシャインシティ ワールドインポートマートビルで開催

■令和4年度農林水産祭「天皇杯」等の受賞者決定

■「食料安全保障」をテーマに1万人シンポ〈JAグループ〉

■「JAタウン」で「全国和牛能力共進会」特設ページを開設

■「直売所の日」「国消国産の日」にちなみJA共済マルシェ

■「国消国産」! いろいろあります
 わが県自慢の おいしいお米

■〈JA全農の飲食店舗〉地元の旬の味覚が味わえる
 みのりみのる のお店

■JA全農の商品ブランド ニッポンエール
 グミ、飲料、チョコレートコラボなど新商品が続々

行友弥の食農再論「鏡を壊すなかれ」

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