日本農業の発展と農業経営の安定、農村・地域振興、安心・安全な食料の安定供給の視点にこだわった報道を追求します。

日本農民新聞 2022年5月19日号

2022年5月19日

アングル

 

JA共済事業の明日に向けて

 

JA共済連
経営管理委員会会長
青江伯夫 氏

 

 

 JA共済連は、5月19日に「令和3年度JA共済優績組合表彰」を開催し、令和4年度の普及推進で優秀な実績を挙げたJAを表彰する。これに先立ち、JA共済連の青江伯夫経営管理委員会会長に、これからのJA共済事業の展開方向への思いを聞いた。


 

ひと保障を強化、生命回帰を実現

令和3年度の普及推進結果を振り返って。

 昨年度も新型コロナウイルスに翻弄された1年になりました。罹患された皆さまと、感染拡大により生活に多大なる影響を受けておられる地域の皆さまに、心よりお見舞い申しあげます。

 また、近年は日本列島の各地で台風や地震などの大規模な自然災害が発生しており、とりわけ昨年度は3月16日に発生した福島県沖の地震において甚大な被害が発生しています。被災された方々に対し、心よりお見舞い申しあげますとともに、被災された地域の一日も早い復旧・復興をお祈り申しあげます。

 令和3年度の普及推進活動は、「JA共済3か年計画」の最終年度として、「ひと保障新規契約獲得を中心とした普及推進総合対策の実践」「他事業等との連携・情報の有効活用による次世代・次々世代との接点拡充・JAファンづくり」「『攻め』と『守り』の両輪による地域特性に応じたエリア戦略のさらなる実践・定着と推進体制の整備」をテーマに、各種施策に系統一丸となって取組んでいただきました。

 コロナ禍が続く中にあって、推進総合実績・重点施策実績いずれも目標未達となりましたが、推進総合実績は「ひと保障」における各種施策の取組みの強化により、医療共済を中心に実績が伸長し、生命回帰に向けた取組みを実践することができました。「ひと保障」の保障充足に向けて、各JAの取組みが成果として目に見えてきたものと受け止めています。

 3Q訪問活動の実績世帯数も前年を上回る約629万世帯となり、組合員・利用者、地域の皆さまに安心の輪を広げることができました。

 また、令和3年度にお支払いした共済金は、満期共済金・事故共済金等をあわせて483万件、3兆7605億円となり、全国の組合員・利用者の皆さまに安心をお届けすることができました。

 日々推進活動に邁進された全国のJAの皆さまには本当に頭の下がる思いです。今回の受賞組合をはじめ、系統役職員の皆さま方のご尽力に対し、あらためて感謝と敬意を表する次第です。

 

時代は転換期 担い手確保が課題

JAグループの直面する課題は?

 直近では、ウクライナとロシアの紛争が、諸物価の高騰など日常生活を脅かすまでに影響を及ぼし、我が国の農業にも波及しています。JAグループとしても、国の施策と連携しながらこの難局を乗り切っていかなければなりません。

 一方で、コロナ禍を契機とした人々の価値観や生活様式の変化とデジタル技術の急速な進展、SDGsをはじめとした持続可能な社会の実現へ向けた要請の高まりなど、まさに時代は転換期にあるといえます。

 また、わが国の農業を取り巻く環境は、少子化により人口減少が進む一方、長寿化が進展し、基幹的農業従事者の減少が続く中で、中・大規模農業者のシェア拡大が進んでおり、農業生産構造が急速に変化しています。

 このような状況の中、JAグループは昨年10月の第29回JA全国大会で、10年後を見通して中長期に取組む方向を「持続可能な農業・地域共生の未来づくり」とし、農業・地域・JAが劇的に変化する時代に対応して「不断の自己改革によるさらなる進化」に取組むことを決めました。

 持続可能な農業に向けては環境問題への対応も不可欠ですが、さし迫った大きな課題は後継者・担い手の確保です。

 農地の整備や新技術の導入等に力を入れていくと同時に、教育機関と一体となって農業高校などを支援し、将来の担い手を積極的に育てていくべきだと、私は考えています。同時に、JAグループの存在を若い人をはじめ地域の皆さまに理解していただくことが大切です。

 

利用者に「寄り添い」 安心を「届け」地域と「繋がる」

これを踏まえたJA共済の今後の対応は?

 JA共済は、大きな環境変化のなかにあっても、変わらぬ「安心」を提供し続け、「農」や「くらし」の未来に向けて、地域とともに支えていくことを目指し、令和4年度から6年度のJA共済3か年計画では、「新たな時代に、変わらぬ安心を~地域とともに、農とくらしの未来を支えるJA共済~」をスローガンに掲げ、取組みを進めています。

 このスローガンのもと、どうすれば、「もっと寄り添えるか」「もっと安心を届けられるか」「もっと農業や地域社会と繋がれるか」を考え、そして実現するため、JA共済の原点である役職員一丸となって共済を広める活動に立ち返り、そこから次の一歩を踏み出す所存です。

 

ひと・いえ・くるま・農業に 万全の保障を

令和4年度の目標達成に向けては?

 令和4年度から令和6年度の3か年における普及活動計画では、持続可能な事業基盤の強化・確立に向けて、「『対面』と『非対面』が融合した全契約者・組合員への活動の実践」「生命保障を中心とした『ひと・いえ・くるま・農業』の万全な保障提供」「全契約者・組合員への活動に向けたLA・スマサポ体制・育成体制の整備」「各種施策の取組促進に向けたデジタル技術等の活用」の4つの重点事項を設定し、普及活動を展開してまいります。

 3か年の初年度である令和4年度は、JAと連合会が一体となってこれらの重点取組事項を着実に実践するとともに、浸透・定着に向けた土台づくりを進めていきます。

 具体的には、全契約者への3Q活動に向けて、対面とオンライン面談や3Qコールなどの非対面を融合した効率的で利用者の利便に適う活動の展開や若年層を中心とした「ひと保障」クロスセル、「いえ・くるま・農業」の万全な保障提供の強化に取組むとともに、WebマイページやJA共済アプリ、げんきなカラダプロジェクトなど、利用者満足の向上に資するサービス提供にも注力していきます。

 また、そうした活動の浸透・定着に向けた土台づくりとして、LA・スマサポの育成と体制整備をすすめ、担当者共通支援システム(コロンブス)などデジタル技術も積極的に活用していきます。

 

人が基盤のJA共済 絶えず自己研鑚を

JAのみなさんへメッセージを。

 JA共済は組合員・利用者への対応を基盤とする事業です。これに携わる者は絶えず研鑽し合って自らを磨いていかなければなりません。デジタル化が進み血の通った行動が難しくなったと言われるなか、組合員・利用者の皆さまに寄り添った対応を行っていくために、職員教育にはさらに力を入れていかなければなりません。

 JAグループの中でも人と一番密に接することができるのが共済事業です。それが地域の皆さまに受け入れられてこそ、JAの活動がさらに活性化すると確信しています。

 JA共済には、いかなる事業環境下にあっても、最良の保障とサービスを提供するとともに、永続的に共済責任を全うする使命があります。

 これからも組合員・利用者の皆さまに更なる「安心」と「満足」をお届けできるよう、どんな業務にも丁寧に取組み、常に挑戦する姿勢をもって日々の推進活動に邁進していただくことを願っています。


 

〈本号の主な内容〉

■アングル JA共済事業の明日に向けて
 JA共済連 経営管理委員会会長 青江伯夫 氏

■令和3年度 JA共済優績組合表彰 受賞組合決定
 JA共済大賞を受賞した、JA会津よつば(福島)、JA夢みなみ(福島)の取組み
 JA共済優績組合表彰 受賞組合一覧

■JAグループの政策提案を農相に提示〈JA全中〉
 食料安全保障の強化、活力ある産地づくりの推進など

■水稲作の中〜後期に注意する病害とその防除対策
 農研機構 植物防疫研究部門 作物病害虫防除研究領
 主席研究員 芦沢武人 氏

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