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令和4年度農林水産予算概算要求は2兆6842億円

2021年9月1日

※詳報は日刊アグリ・リサーチに掲載しております。

 農水省は8月31日、対前年度比116・4%となる総額2兆6842億円の令和4年度農林水産予算概算要求を決定、財務省に提出した。

 内訳は公共事業費が117・6%の8229億円、非公共事業費が115・9%の1兆8613億円。公共事業費では、農業農村整備が118・4%の3946億円、治山(118・4%の733億円)、森林整備(118・4%の1478億円)を含む林野公共は118・4%の2211億円、水産基盤整備は118・4%の860億円と増額要求した。

 「みどりの食料システム戦略」の実現に向けた新規事業では、「みどりの食料システム戦略実現技術開発・実証事業」(65億円)を盛り込んだ。現場の農林漁業者等が活用する技術の持続的改良、脱炭素・環境対応などの基盤技術の開発を実施、あわせて、スマート農業技術やペレット堆肥の活用技術の社会実装を加速化させるための実証やデータに基づく土づくり等の環境整備等を一体的に推進する。また、同じく新規の「みどりの食料システム戦略推進交付金」(みどりの食料システム戦略推進総合対策30億円の内数)では、地方公共団体のビジョン・計画に基づき、地域の特色ある農林水産業や資源を活かした持続的な食料システムの構築に取り組むモデル的先進地区の創出、などを行う。

 輸出に関わる「2030年輸出5兆円目標の実現に向けた『農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略』の実施」については、3年度当初(99億8百万円)の約2倍となる188億33百万円を計上。「品目別輸出目標の達成に向けた官民一体となった海外での販売力の強化」(69億円)、「マーケットインの発想で輸出にチャレンジする農林水産事業者の後押し」(22億円)、「省庁の垣根を超えた政府一体となった輸出の障害の克服等」(97億円)により、5兆円目標に向けたさらなる輸出拡大を目指す。

 なお、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」に係る経費、盛土による災害の防止に向けた総点検を踏まえた対応に係る経費、「総合的なTPP等関連政策大綱」を踏まえた農林水産分野における経費、ALPS処理水の海洋放出に伴う風評影響に対応するための対策に必要な経費については、予算編成過程で検討する。

生産基盤の強化と経営所得安定対策の着実な実施

 4年度予算概算要求事項の1つ目の柱である〈生産基盤の強化と経営所得安定対策の着実な実施〉では、農業の持続性の確保に向けた生産基盤の強化や、畜産・酪農の生産基盤の強化などをはかる。具体的には、「持続的生産強化対策事業」では、野菜、果樹、花き、茶・薬用作物等の品目ごとの持続的な生産基盤の強化に向けて、農業者や農業法人、民間団体等が行う生産性向上や販売力強化に向けた取組、地方公共団体が主導する産地全体の発展を図る取組を総合的に支援する。要求額は199億円(3年度当初予算額169億円)。また、「強い農業づくり総合支援交付金」では、産地の収益力の強化のため、農畜産物の生産・供給の基幹となる施設の整備を支援する。また、核となる事業者と連携する農業者とが一体となって、安定供給を実現する生産事業モデルの構築等を支援する。さらに、みどりの食料システム戦略に掲げる取組(化学農薬の低減、化学肥料の低減、有機農業の拡大、CO2ゼロエミッション化等)の推進に必要な施設の整備等を支援する。要求額は193億円(142億円)。

 上記を除く主な事項は以下の通り。

農業の持続性の確保に向けた生産基盤の強化

需要に応じた生産の推進

水田農業での麦・大豆等の本作化への支援のほか、高収益作物の導入・定着への計画的・一体的な支援等により、需要に応じた生産を総合的に推進する=〔水田活用の直接支払交付金3320億円(3050億円)〕など。

持続的畑作生産体系確立事業

需要が高まっているかんしょや加工用ばれいしょ等の病害抑制と生産拡大の両立に向けた取組、省力作業機械の導入や基幹作業の外部化の促進による労働負担の軽減、環境に配慮した生産技術確立のための実証や病害虫抵抗性品種の導入、健全な種子の安定供給に向けた取組等を支援=21億円。

甘味資源作物生産支援対策

国内産糖と輸入糖との内外コスト差を調整し、甘味資源作物生産者等の経営安定を図るための交付金を交付。また、「さとうきび増産基金」による台風被害等からの回復に向けた取組、さとうきびやかんしょの生産性の向上に必要な農業機械の導入、分みつ糖工場の「働き方改革」に向けた取組等を支援=135億円(111億円)。

農業支援サービス事業育成対策

スマート技術等を活用した農業支援サービス事業を育成するため、政策課題にも対応しつつ、事業化に向けたニーズ調査、専門人材の育成、機械の導入等を支援=〔農業支援サービス事業育成対策事業〕4億円〔強い農業づくり総合支援交付金〕193億円の内数

畜産・酪農の生産基盤の強化

畜産生産体制の強化

家畜の増頭を支える改良・増殖、繁殖肥育一貫経営の育成等による繁殖基盤の強化、和牛の信頼確保のための遺伝子型の検査、公共牧場等の施設・機械の整備等を支援=〔畜産生産力・生産体制強化対策事業〕17億円の内数(9億円の内数)〔公共牧場機能強化等体制整備事業〕1億円(1億円)。

畜産・酪農における環境負荷軽減の取組の推進

酪農家や肉用牛農家が行う温室効果ガスの削減等の取組、高品質堆肥の生産・広域流通の促進、家畜排せつ物処理施設の機能の強化、飼料輸送の効率化・標準化等の実証等の取組等を支援=〔環境負荷軽減型持続的生産支援事業〕73億円(60億円)〔畜産高品質堆肥生産流通促進支援事業〕1億円〔農山漁村地域整備交付金〕940億円の内数(807億円の内数)〔飼料流通合理化事業〕2億円。

国産飼料の生産拡大

水田を活用した青刈りとうもろこし等の生産拡大、飼料生産組織の強化や子実用とうもろこし等の生産利用体系の構築、国産飼料の増産・安定確保に向けた種子の備蓄等の取組、放牧・未利用資源飼料の活用促進等に向けた取組等を支援=〔環境負荷軽減型持続的生産支援事業〕73億円(60億円)〔畜産生産力・生産体制強化対策事業〕17億円の内数(9億円の内数)。

家畜・食肉の流通体制の強化

食肉流通の安定と輸出の拡大を図るため、畜産農家・食肉処理施設・食肉流通事業者の3者で組織するコンソーシアムが取り組む、畜産物の流通構造の高度化等に必要な施設の整備等を支援。また、家庭食需要の増加といった国内外の需要の変化に対応するため、産地の食肉処理施設や食鳥処理施設での薄切り肉等の精肉加工に必要な施設の整備等を支援。さらに、家畜市場での密集状態の防止に資する機器の導入等を支援=46億円(25億円)

経営安定対策の着実な実施

収入保険制度の実施

収入保険制度の加入者に対し、保険期間の収入が基準収入の9割を下回った場合に、その差額の9割までを補填。また、収入保険への加入の促進と実施主体の円滑な事務の推進を支援=206億円(177億円)

※詳報は日刊アグリ・リサーチに掲載しております。

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