JA青年組織活動のこれから
全国農協青年組織協議会
会長
柿嶌 洋一 氏
「ポリシーブック」を結集軸に
10年先の未来をJAとともに描く
全国農協青年組織協議会(JA全青協)は5月20日の通常総会を経て、令和3年度の新会長に、柿嶌洋一氏(JA全青協副会長、長野県農協青年部協議会参与)が就任した。柿嶌新会長に、JA青年部活動のこれからの取組みに対する思いを聞いた。
情熱と協同の力絶やすことなく
■就任の抱負から
昨年度は全青協の副会長として、執行部メンバーとともに“学習”をメインに組織を見直し10年先を描きながら活動を展開してきた。3年度はこの学習をもとに行動を起こすことを主眼に「ベースアップの学習からかたちへ」をテーマに活動していく。
昨年は新型コロナウイルス感染拡大で活動に大きな影響が出て、今も続いている。しかし、こうした状況下でも、Web会議等の新しい様式を取り入れ積極的に議論する場を設け活動に努めてきた。
この難局に立ち向かうために、我々青年組織はJA運動の先駆者として実践する自主的な組織であることを再確認し、当事者意識をもって根底から組織活動を見直すことが必要だと考えている。盟友の希望の灯と先輩たちから受け継いだ誇り高き情熱と協同の力を絶やすことなく、今後の活動に引き継いでいきたい。
盟友の課題を共に解決が原動力に
■JAと青年部活動の出会いは?
23歳での就農と同時にJAとの付き合いが始まった。当初はJAの存在がよく理解できなかった。そこでJAの役割や組織活動のあり方を勉強し考えた。その時期を経て「なくてはならないJA」の存在を納得し、青年部での活動もしてきた。
盟友の悩みを一緒に解決できたことが、私の青年部活動の原点となった。経営が立ち行かなくなった養豚農家の仲間を支援するため、売りづらい部位を使った豚肉入りのお焼きを農商工連携で開発した。それがビジネスとして広がり、経営を再建した仲間は今、日本一の養豚家をめざして活動している。仲間と一緒なら困難な課題も解決できる、変えていくことができると実感した。
地域の若い農業者はそれぞれ“思い”を抱いているが、それを実現していくことに諦めているきらいがある。そうではなく、その思いを実現するためにもJAと関わり、組織のメリットを活かした活動を展開するべきと感じた。
当然、JAも時代に合わせて変わっていかなければならない。そのためにもJAの事業運営への積極的な参画も必要であり、盟友にも呼び掛けていく。
青年組織の強化、政策提言、組織の継承
■青年部活動のこれからのポイントは?
時代が移り変わっていくなかで、大きく3点を掲げた。
第1は青年組織の強化。原点に立ち返り、なぜ青年部活動を展開しているかをもう一度考え直すこと。ここ数年全青協は「全国6万人の盟友とともに」と言ってきたが、今年度は「5万人」としか言えなくなった。単に数を増やすだけではなく、現在の5万2千人余のメンバーの活動の質を高めていく必要がある。
その基本的な考え方が網羅されている「ポリシーブック」を活用し、県域から単組、支部組織に至るまで、自らの組織を見直しメリットを再確認し、できることを整理していく必要がある。
第2は政策提言や要請活動の強化。今後何十年も地域に根ざしていくのが我々の職業だ。だからこそ持続可能な農業を確立していくためにも地域の現場の声をしっかりと国政に届けていかなければならない。その思いが言葉として詰まっている「ポリシーブック」を活用し政策提言していく。それぞれの地域でもこうした活動が定着し、JAや行政とプロジェクトを組んだ取組み等ができる機能の一部を担うことができればと思っている。
第3は揺るぎない組織の継承。我々の活動は長期的視点に立って考えることが必要だ。食料安全保障や国産農畜産物への国民理解の醸成には時間がかかるのと同様、青年組織の活動も毎年PDCAサイクル(plan,do,check,action)を回しながら確認していかなければならない。顔合わせもできない現状が続くなかでWebを活用しているが、今後どのような形で組織継承を行なっていくのかしっかり考えていきたい。
いずれにしても、「ポリシーブック」を結集軸に、これらの課題解決に向かっていく。
JA大会を経営参画促進の足掛かりに
■JA経営への参画の今後は?
今秋第29回JA全国大会が開催されるが、私は全青協副会長として大会組織協議案の素案検討の場に参加してきた。今後10年のJAのあるべき姿をめざす大会議案となるよう検討が進められてきたが、これは昨年来の全青協の学習テーマと共通している。我々青年農業者がJAの経営にさらに積極的に参画していくための足掛かりとなる大会議案となることを期待している。
この大会議案に向け全青協としては、6月に組織協議、7月には意見取りまとめ、8月上旬には意見書提出と一定のスケジュール感をもって動いていく。各県でも現場の声を集めた意見書を、それぞれの県域の大会に提出することにしている。
いくら心で思っていても、発信しなければ何も変わらない。思いを言葉にし、その言葉を形にしていくのが協同組合のステップであり、そのステップを踏んでいくのが青年部活動だ。
次代・地域を考えた産地づくりをJAと
■これからの農業に対する思いを
自分の経営だけに捉われすぎると農業は続かないと思う。次世代に農業をつなぐためには、仕組みから地域で創り上げることが大切だ。それが自身にとっても家族にとっても一番の安定につながるのではないか。そのための産地づくりはJAでなければできない。これからは次の世代、地域を考えた農業の展開が不可欠であり、そのためには消費者や国民への理解も肝心だと思っている。
〈本号の主な内容〉
■このひと JA青年組織活動のこれから
全国農協青年組織協議会
会長 柿嶌洋一 氏
■令和元事業年度の総合農協組合員数は1047万人=農水省調査
■農薬危害防止・安全防除運動展開中
農水省 消費安全局 農産安全管理課 農薬対策室長 小林秀誉 氏
農薬工業会 安全対策委員長 乾 公正 氏
JA全農 耕種資材部 部長 冨田健司 氏
全国農薬協同組合 技術顧問 植草秀敏 氏
■6月1日は世界牛乳の日、6月は牛乳月間
■2021年度の生乳等需給見通しと課題公表=Jミルク
■経常3100億円、純利益2082億円と6期ぶりの増益=農林中金決算
■JA全農2021年度事業のポイント「くらし支援事業」
JA全農くらし支援事業部 宗村達夫 部長