畜舎等の建築にかかる負担を軽減し、省力化機械の導入や、増頭・増産等の取組を推進することで、国際競争力の強化を図るとともに、畜産物の輸出拡大につなげていくこと等をねらいとした「畜舎等の建築等及び利用の特例に関する法律案(畜舎建築特例法)」が、11日の参院農林水産委員会で可決、同法案に対する附帯決議が採択された。
畜舎建築特例法は、建築基準法の基準によらず畜舎等の建築ができるよう、畜舎等の建築及び利用に関する計画の認定制度を創設し、当該計画において、畜舎等における滞在時間が一定水準以下であるなどの利用基準に適合するとともに、建築基準法より緩和された構造等に関する技術基準に適合していることについて、都道府県知事の認定を受けた場合に、建築基準法の適用を除外する等の措置を講ずるもの。
水田正和生産局長は「畜舎等の用途を変更して畜舎等以外のものとしてはならないという規定と、利用基準に従って畜舎等を利用しなければならないという規定を設けており、こうした規定に違反した場合には、都道府県知事による措置命令の対象となる。また、この法律案は省令で定めることとして、当該畜産農家は畜舎等の利用状況について定期的に都道府県知事に報告するほか、都道府県知事は必要に応じて当該畜産農家等に対して報告徴収や立ち入り検査等を行うことができることとしている。こうしたことにより、遵守状況の確認を行い畜舎等の適正利用の徹底を図っていきたい」と説明した。
宮内秀樹農林水産副大臣は「畜産農家や設計を行う建築士など関係者に内容を丁寧に周知していくことが重要だ。関係団体や都道府県を通じての説明会の開催等により、本法律案と建築基準法の基準の違いや、新制度活用のメリット等について丁寧に説明していくとともに、本法律案の施行後には、本法律案によって建築等された畜舎等の事例の周知により新制度の活用を促していきたい」と述べた。
いずれも藤木眞也議員への答弁。
〔藤木眞也議員の発言要旨〕私自身も畜産業を営んでおり、これまでに7度の畜舎等建設とともに、震度7の地震を2度経験した。熊本地震により崩壊した50数棟の畜舎は全て木造瓦葺、鉄骨牛舎は一棟も崩壊していなかったと記憶している。屋根瓦の重みが建物に対して大きく影響することを感じた。熊本は、鹿児島・宮崎と同様、台風の常襲地帯だ。台風と地震に関して言えば、ある程度の建築基準でも大丈夫ではないかと気持ちを持ちながら畜産業に取り組んできた。一方で、平成17年の耐震偽装事件以降、建築に対する基準が厳しい状況になっている。私の牛舎を例にあげると1200㎡ほどの1棟で、平成17年以前は5000万円前後で建設できていたものが、平成22年には7800万円と1.5倍ほど価格が高騰した。昭和61年に建築した800㎡ほどの規模の牛舎は、農水省の低コスト推進牛舎に選ばれ(費用は700万円以下)、柱も相当細いが、その畜舎も熊本地震に耐えた。木造は柱が折れることも想定しなくてはならないゆえ、これまではどちらかというと鉄骨よりも木造の方が広く建築基準法に照らし合わせなくても建てられるという矛盾点が改善されるという点では、畜産農家にとっては、待ちに待った法律改正になると思う。特に、輸出に向けて各国と価格競争が厳しくなるなかで、数千万円単位で建築費が下がることは大きい。建築士の理解度が相当現場には大きく左右する。徹底した説明をお願いしたい。