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国内初の「小規模酪農家向けエネルギー自給型乾式メタン発酵システム」を開発

2020年12月4日

 国内で初めて小規模酪農家にも導入しやすい乾式のメタン発酵プラントが開発された。エア・ウォーター北海道㈱(北海道札幌市、北川裕二社長)、㈱北土開発(北海道芽室町、山田朝常代表)、帯広畜産大学(奥田潔学長)との共同事業(*NEDO助成事業「ベンチャー企業等による新エネルギー技術革新支援事業「フェーズD(大規模実証研究開発)」/小規模酪農家向けエネルギー自給型乾式メタン発酵システムの開発」)によるもの。乳牛飼養頭数100頭前後の小規模酪農家に適したバイオガスプラントの実用化を目指すもので、北海道清水町の酪農家を研究フィールドとして取り組みを行っている。

 新たに開発したバイオガスプラントは、半固形状のふん尿を適切に処理できる前処理設備とFRP製円筒横型の乾式メタン発酵槽を導入したことで、ふん尿からバイオガス(メタン約58%)を安定かつ効率的に発生させるとともに、その一部を精製して高純度メタンガス(メタン98%以上)を製造することができる。このプラントで発生させたバイオガスをガス発電機に、高純度メタンガスを燃料電池にそれぞれ供給した場合、酪農家が牛舎や住宅に使う電気・熱エネルギーでの一部をバイオガスエネルギーで自給する仕組みを構築することが可能となるという。また、メタン発酵の際に発生する副産物の消化液や固形残渣は、酪農家の代替肥料や再生敷料として活用する取組みも進めている。乳牛飼養頭数100頭規模の小規模酪農家に向けたエネルギー自給型のバイオガスプラントで、1日あたり6・2tのふん尿を処理することが可能。 

 現在は発生したバイオガスの多くを25kWガス発電機に供給しており、ほぼ24時間の発電が可能という。ここで生成した電気(三相200V)や温水は、牛舎に安定的に供給される。蓄電池などを利用したエネルギーの最適化や再配分、長期連続運転による設備の安定性や製造コストの低減などに関する検証を通して、今後は余剰なバイオガスを精製し、製造した高純度メタンガスから改質した水素を燃料電池に圧送することで住宅への電気供給試験(単相100V)を実施する予定。

 小規模酪農家では、一般的に乳牛をつなぎ飼いにしている関係から、メタン発酵に適さない、麦わら等の長い繊維が混合した半固形状のふん尿が排出される。北海道では現在、酪農向けに約100基のバイオガスプラントが稼働しているが、その多くは原料に液状のふん尿を使う湿式メタン発酵プラントとされ、半固体状のふん尿を希釈する高額な大型設備を設置して機械への絡みつきや配管閉塞を避ける必要がある。このため、バイオガスプラントの導入は、乳牛など100頭以上を飼養し資金力のある大規模・中規模農家に限られており、道内全体の約75%を占める小規模酪農家が導入するには高いハードルがあるのが現状。

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