シンジェンタジャパン(的場稔社長)は19日、水稲湛水直播向けのソリューション「RISOCARE(リゾケア)」のオンライン上市発表会を開催した。直播栽培では従来、不安定な苗立ちや水・雑草管理の難しさなどが課題だったが、RISOCAREでは安定した出芽・苗立ちなどを実現。大規模生産者から中山間地生産者まで、直播栽培の省力化と普及拡大に大きく貢献していく。
RISOCAREはイタリア語の米「Riso」とシンジェンタの種子処理技術「Seedcare」の造語で、複数の種子処理製剤と独自の種子処理技術などにより、日本で開発した水稲湛水直播向けのトータルソリューション。具体的には独自のコーティング処理を施した種子「リゾケアXL」を生産者に供給する。リゾケアXLのコーティング剤には、〝おもり〟機能とともに酸素を供給して安定した苗立ちを実現する酸素供給剤「オクソスDS」、苗腐病を防除し、安定した苗立ちをサポートする殺菌剤「スクーデリアES」、イネミズゾウムシなど初期害虫に優れた効果を発揮する殺虫剤「フォルテンザFS」を配合。安定した出芽・苗立ちを実現し、水管理の負担も大きく軽減する。播種の種子量は10a当たり2・5kg、コーティング処理後の種子重量で3・75kg。
移植栽培では通常、種子消毒、育苗箱準備、播種、育苗、代かき、箱処理剤処理、苗出し、苗送りなど多くの作業時間を要する。RISOCAREによる水稲栽培では、生産者は播種作業前に代かきするのみで、コーティング処理された種子のリゾケアXLを受け取り、すぐに播種することができる。播種は乗用播種機だけでなく、無人ヘリコプター・マルチローター(ドローン)・背負式動力散粒機など様々な播種機を多様な圃場環境にあわせて利用することができ、先端技術との親和性もよいことからスマート農業にも貢献する。
2021年から東日本の一部地域を対象にリゾケアXLのテスト販売を開始し、22年からは生産者から種子を預かりコーティング処理した後、再び生産者に供給するサービスを開始する。10年後に現状の湛水直播面積約2万3000ha(H29年)の4倍を上回る10万haの普及を目指す。
先立って同社は今年4月、中央研究所内(茨城県牛久市)にシードケア インスティテュートジャパンを新設。種子処理方法の開発だけでなく、品質管理・加工生産技術、スチュワードシップ、トレーニング、種子に対する安全性・効果の確認などシードケアに関する包括的なサービスを提供していく。