農研機構は2023年までに、WEB上で全世界を対象とした穀物の収量予測情報の提供を開始すると発表した。
農研機構はAPEC気候センター(APCC)と共同で、トウモロコシ、コムギ、コメ、ダイズについて全世界を対象とした収量予測手法を開発し、19年6月から収量予測情報を各国の食糧機関などに毎月提供するサービスを試験運用している。今回、米国と、対象穀物の生産量が100万tを超える欧州12か国を対象に、今回のサービスによる2019年産収量の予測精度を検証した。それによると、米国農務省(USDA)や欧州委員会共同研究センター(JRC)の収量予測に比べると、やや精度が低いものの、既存の予測が公表される1~6か月前(収穫の3~6か月前)に収量の概況が把握できることが示されたという。
近年、多くの国では食料の輸入割合が増加しており、主要輸出国での不作や主要輸入国での需要の変化、それに伴う国際市場価格の上昇が、食料輸入国が食料を安定的に確保する上で大きなリスクとなっている。干ばつなどの極端気象に起因する主要輸出国の生産影響を予測し、サプライチェーンの各所で予め対策を講じられれば、食料価格の高騰を抑制することにつながると期待されている。このため、全世界を対象とした穀物収量の予測情報が国際機関や食料輸入国の食糧機関などから求められていた。
農研機構によれば、今回の収量予測情報の開始で、客観的な予測情報が公表されることで、国際市場における食料の投機的な価格高騰をある程度抑える効果が期待できるとしている。また、現在は国際機関や各国の食糧機関が同サービスの主な利用者だが、輸入穀物を原材料として使用する民間企業が工場でのオペレーションの調整などに予測情報を活用できる可能性がある。