令和元年度 JA営農・経済担当常勤役員・幹部職員研修会
第5回JA営農・経済フォーラム(西日本地区 2019年8月27~28日)
JAの実践事例報告より
代表理事組合長 濵﨑禎文 氏
促成キュウリを核とした地方創生をめざして
管内は県内一の促成きゅうり産地で、反収は全国2位、反収32t穫りの篤農家も存在するなど優れた産地だが、高齢化等で栽培面積が減少し弱体化が進んでいる。新規就農者の確保・育成による産地再生、さらなる技術向上による若者に魅力ある経営の確立が課題となっていた。そこで、現行の倍の10㏊の全国有数の産地、反収30t以上の日本一の技術力、所得1000万円以上の儲かる経営、若手就農者の増大による産地の活性化を10年後のめざす姿とし、「きゅうりタウン構想」に取り組んだ。
平成27年、海部郡3町、JA、県農業支援センターによる「海部次世代園芸産地創生推進協議会」を立ち上げ、企業や大学の協力も仰いだ「きゅうりタウン構想推進チーム」を結成。民間企業等を加えた技術クラスターを形成し、地域が一体となった推進体制で、篤農家が参加した学ぶ場の開設、技術実証を行う実験ハウスの設置、移住就農に向けた情報発信等の活動を展開した。
「海部きゅうり塾」では、次世代園芸に対応したカリキュラムに加え、篤農家の栽培技術を解析。養液栽培の技術確立に向けたプロジェクトチームが応援した。JAは生活資金や住宅問題をケアし、移住希望者が安心して学べる環境の構築に努めた。複合環境制御を駆使したオランダ型の先端技術を取り入れた魅力あるきゅうり栽培へ「次世代園芸実験ハウス」を設置。ヤシガラ培地を用いた養液栽培で、長期一作25t/10aを達成した。30年度には「交流・体験ハウス」も完成。SNSやマスコミを積極的に活用し、移住就農に向けた産地の情報発信にも力を入れた。
「きゅうりタウン構想」ファーストステージ3年間で、全国から移住就農者22名を受入れ、13戸16名が新規就農した。新規就農者による1㏊規模の「次世代園芸団地」も誕生。産地の維持と若返りを急速に図ることができた。セカンドステージでは、計画的なレンタルハウスの整備や「きゅうりヘルパー育成」のための体制強化、IoT技術導入による技術習得の加速、交流拠点を核とした移住就農者の募集等、「構想」のさらなる進化を図り、海部総活躍による地域活性化を目指す。
(日本農民新聞 2019年9月25日号掲載)