日本農業の発展と農業経営の安定、農村・地域振興、安心・安全な食料の安定供給の視点にこだわった報道を追求します。

日本農民新聞 2020年9月15日号

2020年9月15日

JA共済連青江伯夫経営管理委員会会長このひと

JA共済事業の今後に向けて

JA共済連
経営管理委員会 会長
青江伯夫 氏

 JA共済連は7月30日の通常総代会後の経営管理員会で、新たな経営管理委員会会長に青江伯夫岡山県本部運営委員会会長(岡山県中央会代表理事会長、全農岡山県本部運営委員会会長)を選任した。青江新会長に長年携わってきたJA共済事業への思いと事業に臨む姿勢を聞いた。


今の時代のJA共済のあるべき姿を

ご就任の抱負から。

 岡山県共済連に入会してから50年近く、組合員・地域住民に安心して幸せに生活してもらうことを使命としてJA共済事業に関わる運動を続けてきました。JA共済に育ててもらった一人として、しっかり恩返しするつもりで、力を発揮していきたいと思うと同時に、責任の重みを感じています。

 令和3年1月にJA共済連は設立70周年という節目を迎えます。毎年のように自然災害が多発し、新型コロナウイルスの脅威にさらされる今の時代にあってJA共済のあるべき姿とは何か、もっとお役に立てることがあるのではないか、自問を続けているのが今の心境です。

 とくに共済事業と信用事業はJAの金融事業として専門性が求められ、内容も多岐にわたっています。だからこそ、JA共済は相互扶助という理念に立ち返り、特に「万が一の保障の提供」について、組合員・地域住民の皆さまに保障を分かりやすく説明し、共済事業の〝色〟を明確に打ち出していく必要性を感じています。農業がますます厳しさを増している今こそ、「JA共済らしさ」を追求していかなければなりません。

 「経済事業には〝モノ〟がある、信用事業には〝カネ〟がある、共済事業には何があるのか」と自問自答し、「共済事業は〝ひと〟である」という結論に至りました。我々は〝ひと〟を相手にしている事業体であり、組合員・利用者や地域住民の皆さまに信頼されなければ事業は成り立たないということに立ち返らなければなりません。

コロナ禍での推進体系・体制構築へ

特に注視していきたい環境変化は?

 JAにおける共済事業の位置づけや期待度が高まってきていると感じます。

 これに応えていくためにも、役職員が自覚をもってよりJA共済らしい事業展開に取り組まなければなりません。

 新型コロナウイルスの感染拡大により、推進活動も大きく変わらざるを得なくなりました。おそらく、従来のような対面中心の推進活動にすぐに戻ることは難しいなか、新型コロナウイルスと〝隣合わせ〟で展開していく推進体系・体制づくりは避けて通れないでしょう。

 電話やダイレクトメールを活用した「3Qコール」のほか、インターネット等を駆使した推進のあり方をこれまで以上に追求し、コロナ禍においても組合員・利用者の皆さまに「安心」と「信頼」をお届けできるよう、役職員と一緒に考えていきます。

JAファンづくりと強固な組織づくりを

県中央会会長としての、これまでの取り組みは?

 岡山県中央会会長になって7年、3期目を迎えますが、1期ごとに自分の中で課題をもって取り組んできました。

 まず第1期は、農業・JAファンづくりです。多くの方に、農業・JAについて知ってもらうためにメディアを効果的に活用しようと、地元TV局と交渉し、毎日10分間の「笑味ちゃん天気予報」を放映する中で、県内で農業を頑張っている人々を紹介する「JAだより」を放映することにしました。当初、様々な課題がありましたが、今では10%前後の高視聴率をあげている人気番組になりました。

 2期目はJA合併による強固な組織づくりです。今年4月には県内8JAが合併した「JA晴れの国岡山」が発足し、合併のスケールメリットや事業効率化を図り、組合員・地域住民に愛されるJAになるべく努めていきます。

 さらに、3期目も新たな目標を掲げ取り組んでいきます。

JAグループ各連の対話・連携に力

全国連トップとしての役割は?

 JAには総合事業全般経営を担うトップがおり、一方、連合会では、事業連ごとに経営トップがいます。これは専門性・効率性を高めJAを支えていくための組織体制ですが、それぞれの事業連が縦割りになりがちという側面もあります。

 より一層連合会間の連携を促進し、組織同士がより強い力を発揮していくためにも、経営トップ同士の意思疎通が図れる機会をもっと増やし、より風通しのよい組織体になる必要があります。私も積極的に対話し、そのための役割を果たしていきたいと思います。

自然災害が相次ぐ中、JAグループでもSDGsへの取組みが提唱されていますが

 大規模な自然災害が相次ぐ中、JA共済では共済事業の使命を果たし、組合員・利用者の皆さまの一日も早い復旧・復興のお役に立てるよう、事業の総力をあげて取り組んでいます。

 現在の自然災害の大型化は、利便性ばかりを求めてきた人間活動によってもたらされた地球温暖化や気象異変が原因だともいわれています。自然は農業だけでなく、我々の生活すべてと密接に繋がっています。JAグループは自然を相手にしている事業体として、国連が掲げる「持続可能な開発目標」について既に多くのことに貢献しています。JAグループの取組みを、使命感をもってアピールしていくとともに、さらに具体的な取り組みによってもっと目に見える運動にしていく必要があると思います。

共済事業の大切さを知ってもらうことから

改めて、JA共済事業への思いを。

 JA共済事業にとって「人とのつながり」は事業活動のベースであり財産です。私は岡山県共済連に入会後、県内各地の出先に赴任し業務を行いました。そこで多くの組合員・契約者のみなさんと知り合えたことが、今日に至るまでの大きな財産となっています。

 2年前の平成30年7月豪雨では、私の出身地の隣町である倉敷市真備町の小田川が決壊し、多くの家屋が水没しました。その復興のためボランティアに参加した際、被災者の方に「JAは毎年共済を推進しているのに、何でうちに声をかけてくれなかったのか」と言われ、衝撃を受けました。地域の隅々まで推進が行き渡らなかったのかもしれません。しかし、これは地域住民全体の生活に関わる問題です。「加入してなかった自分が悪いのかもしれないが…」とその方は言っていましたが、勧めなかったこちら側にも責任があるのではと考えました。共済に加入する・しないという以前に、まずはJA共済の大切さを知ってもらう。そのスタートラインに立たなければ、この事業は始まらないことを改めて痛感しました。

 JAにおける数ある活動において、共済事業の重要性をもう一度見直していかなければならないと、使命感に燃えています。


〈本号の主な内容〉

■このひと JA共済事業の今後に向けて
 JA共済連 経営管理委員会 会長
 青江伯夫 氏

■JA全農 2020年度事業のポイント〈畜産・酪農事業〉
 JA全農 畜産総合対策部 小林茂雄 部長
 JA全農 畜産生産部   由井琢也 部長
 JA全農 酪農部     深松聖也 部長

■令和2年度「家活でコロナに負けるな!
 ハッピー マイライフ『家の光』12・1月号普及活用全国特別運動」

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