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農林中金総合研究所が設立30周年記者懇

2020年9月24日

 ㈱農林中金総合研究所は16日、「持続可能な農業・地域社会に向けて~コロナ禍を踏まえて」をテーマに、設立30周年記念 記者等懇談会を東京・大手町のアグベンチャーラボで開催した。新型コロナウイルス感染症を踏まえ、オンライン形式で行われた。

 開会にあたり、農林中金常務執行役員・八木正展氏、アグベンチャーラボ代表理事理事長・荻野浩輝氏が挨拶した。記念講演では、農中総研取締役基礎研究部長・平澤明彦氏が「日本とスイスの食料安全保障政策」、同社常務取締役・内田多喜生氏が「地域農業・社会の持続性と協同組合」をテーマに講演、農水省大臣官房政策課長・山口潤一郎氏、京都大学学術情報メディアセンター・石田正昭氏(元日本協同組合学会会長)がコメントを添えた。最後に農中総研代表取締役社長・齋藤真一氏が閉会挨拶した。

 平澤氏は、食料を輸入に頼っている日本と食料安全保障上、同じような不安を持っているスイスを取り上げたとし、食料安全保障の見方、日本の農業政策、スイスの農業政策、食料・農業・農村基本法にみる論点について報告した。この中でスイスが憲法上第一に国民への供給の保障を盛り込むとともに、農政の目的を多面的機能としていることを紹介、それを支える直接支払いとして「供給保障支払」があることなどを説明した。日本においては、食料・農業・農村基本法の基本理念の第一に食料の安定供給の確保が盛り込まれているものの、「国内生産の増大」の裏付けとなる施策が基本法に見当たらないことなどを語った。

 内田氏は、2020年は農中総研創立30周年であると同時に、生活基本構想50年、産業組合120年の節目の年であることを示しながら、▼現在の総合農協は、農業振興にとどまらず、農協およびその関連組織の事業と活動等を通じて、地域の社会・経済の持続性に関わる様々な課題に取り組んでおり、その取組みは前身ともいえる産業組合時代に遡ること、▼時代時代で直面する地域の課題に対し、総合農協の機能と組織力を生かし自らを変化させつつ解決に取り組んできた歴史、▼コロナ禍においても、過去と同様に、地域と農業のレジリエンス(回復力)に大きな役割を総合農協は果たしていること、▼農業や地域の社会・経済環境が大きく変わるなかで、総合農協が担うべき役割も変化していくとみられるが、その重要性は変わらないこと、を説明した。

 齋藤社長は「農中総研の30年の歴史はほぼ平成の歴史に重なっている。当社の前身である農林中金調査部の設置から数えて70周年であり、この歴史は戦後日本の歴史と重なっている。コロナ禍の今年、新しい時代に踏み出す。農中総研は、農林水産業、地域社会、協同組合への貢献を心に刻みながら、シンクタンクとしての機能発揮に邁進していきたい」と語った。

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