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日本農民新聞 2020年8月15日号

2020年8月15日

このひと

 

Nツアー コロナ禍での挑戦

 

(株)農協観光
代表取締役社長

清水 清男 氏

 

 新型コロナウイルスの感染拡大で、観光産業全体が存亡の危機に立たされているなか、6月に株式会社農協観光(Nツアー)の代表取締役社長に清水清男氏(元一般社団法人全国農協観光協会代表理事専務)が就任した。JAグループの旅行事業を担う同社は、この危機をどのように乗り越えていこうとしているのか。新社長の決意を聞いた。


 

新生Nツアーのビジネスモデル確立

就任の抱負から。

 平成元年に社団法人全国農協観光協会から分離し(株)農協観光が誕生した当時は、新しい会社の組織づくりに奔走しました。22年には再び社団に出向し、公益法人改革で25年に一般社団法人に移行するまでの組織改革に携わりました。そして今回、コロナ禍で観光産業が大打撃を受けている中での社長就任と、常に組織の大きな節目と対峙する巡り合わせの不思議さを感じています。
 コロナ禍は、社会に大きな変化をもたらし数多くの企業が苦境に陥っています。なかでも観光産業は、需要と供給の両方がなくなるというこれまで経験したことのない大きな打撃を受け、当社の事業もこのままでは存亡の危機にあります。この潮流の長期化が予想に難くないなか、観光業は根本から将来像の見直し、構造変化が求められています。
 まずは、感染防止対策の徹底、雇用の維持、事業の継続に最優先で取り組ます。一方で、このピンチをチャンスと捉え、危機から生まれるニーズを捉えていきたいと思います。
 今はポストコロナ時代の進むべき姿を、知恵を絞りスピーディ、タイムリーに準備していくときだと思っています。アフターコロナには、新しい常識、日常といったニューノーマルな社会のグランドデザインが求められています。これは、誰もどの企業も経験したことがないことで、創造性をもっての挑戦でもあると受け止めています。

 

経営再建へ 5年度までの3段階の計画

こうした情勢下での取組み方向は?

 現状で取組むべきことは3段階あると思います。喫緊に対処すべき課題の解決、それがある程度確立した時の原状回復的な取組み、そしてNツアーの新しい観光ビジネスモデルの創造、の3段階です。
 現在、令和3年度までの中期経営計画「NTOUR WAY Challenge」の2年度目に当たっていますが、この計画自体がもはや現状と合ってない事態となったため、これを中止し経営再建計画に組み替えることにしています。今年度を準備期間とし、喫緊の課題への対処方法を検討し、3~4年度はそれを踏まえた実行年度に、そして5年度をその確立年度とする計画です。
 旅行業は、人と人をつなぐ総合余暇産業をめざしていますが、利用者がダイレクトに航空会社や鉄道会社とweb等での予約ができるようになった現在、チケットを通じてお客様にアピールする時代ではなくなりました。新しいビジネスモデルは、旅行と何かを組み合わせた“ハイブリッド型”の経営をめざしていかなければならないと実感しています。

 

1都道府県1支店へ、地元に泊まろうキャンペーンも

では、喫緊の状況への対処は?

 安全・迅速に業務を継続することが第一です。デジタル化の加速に伴い、これまでの企業文化も変更しつつ、物事をゼロベースで考えていかなければなりません。
 事業減少による資金の確保は喫緊の課題です。4~6月に大きく落ち込んだ売り上げを少しでもカバーするために旅行券を販売。JAグループのみなさんのご厚意とご努力のおかげで前年比200%を超える伸び率となり、組織の力を実感しました。いずれコロナが終息したときには、これに応えられるような企画を打ち出したいと思っています。
 資金の確保に向けては、経費削減等の減量経営に着手するところから始めます。不採算店舗から1都道府県1店舗への統合をめざしていきます。航空会社もJRもEチケット化しているなかフルスペック店舗の解体に取り組みます。
 売上高の創出に向けては、都府県ごとのコロナの実態を把握し衛生管理の徹底などの対策を講じながら需要を取り戻していく。宿泊先と連携しながら、「安全の先に安心」という姿をアピールしていきます。そして「discover jimoto、地元に泊まろう」、地元の魅力再発見のキャンペーンを実施し、地元客のリピータービジネスに変換していきます。

 

キーワードは「少人数、短期、近距離、3密回避」

次の段階の原状回復と復活のための計画は?

 事業規模を迅速に復活させるためには、消費者の旅行マインドを上げなければなりません。そのキーワードは、少人数、短期、近距離、3密回避の徹底。「安・菌・誕」=安全な新しい生活、無菌型サービス指向、新需要の誕生で地元住民への原点回帰をめざします。会員制や個室風呂など安全保障型のサービスを提案し、非接触型ビジネスを展開していきます。
 一方で、店舗統廃合とともにリモート営業体制の確立など、デジタル化による働き方改革をめざしていきます。
 併せて収入源の複線化やリスク分散型経営により事業再編を図っていきます。

 

農村地域のランドオペレーター、コンサルタントに

そして、再スタートに向けては?

 新しい観光事業再生の礎を発掘しなければなりません。お客様の満足度を継続的にセンシングできるサービスを追求し、新しい観光のあり方を示した「新生Nツアー」ビジネスモデルの確立をめざします。農村型旅行や交流で、地域や地元のブランド店となる店舗を構想しています。
 最終的には、人的資源を生かした人財活用事業と旅行業を掛け合わせた「ハイブリッド経営」をめざしていきたいと思います。
 国内外からJAや地域の農業者・行政にオファーがくるような体制や機能を有する、農村地域のランドオペレーター、地域コンサルタントに特化する経営です。当社の地域密着型の強みと最大の経営資源である〝人〟を中心に、新しい事業を組み立てていきたい。その意味でも、社団との紐帯関係の強化はより一層重要になってきます。
 そのためには、若い力が必要です。デジタル化に伴い、若い社員でつくる新しい人事制度を再生計画のなかで打ち出していきたいと考えています。

 

危機の克服が次の成長の土台に

コロナ禍への挑戦の決意を。

 自分の強みを発揮した社員一人ひとりの新しい挑戦が、コロナ禍への挑戦となります。出口治明氏が言っている、人を成長させるのは、「人」=いろいろな人と会い話を聞く、「本」=いろいろな本から知識・歴史を学ぶ、「旅」=いろいろな場所に行き刺激を受ける、この3つがカギとなると思います。
 旅はリアル。今は時間という経営資源を生かす絶好のチャンス。この危機を乗り越え克服していくことが、次の成長の土台となると確信しています。


 

〈本号の主な内容〉

■このひと Nツアー コロナ禍での挑戦
 (株)農協観光 代表取締役社長
 清水清男 氏

■JA共済連 令和元年度の取り組みと成果

■かお
 農林中央金庫 常勤監事に就任した
 伊藤玲子 さん

■令和2年度優良農協カントリーエレベーター表彰
 大臣賞にJA筑前あさくら・昭和CE(福岡)
 政策統括官賞にJA西三河・南部CE(愛知)

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