日本農業の発展と農業経営の安定、農村・地域振興、安心・安全な食料の安定供給の視点にこだわった報道を追求します。

日本農民新聞 2020年7月15日号

2020年7月15日

日本フードサービス協会赤塚保正会長このひと

外食産業と日本の農業

日本フードサービス協会
会長
赤塚保正 氏

 日本フードサービス協会(JF)は、5月の総会で第19代会長に赤塚保正副会長(㈱柿安本店代表取締役社長)を選任した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、外食産業全体が厳しい環境にあるなか、これからの外食産業のあり方への想いを赤塚新会長に聞いた。


協会に「ご縁」と「ご恩」、これまでの集大成を今こそ発揮

就任の経緯と抱負から。

 会長就任は私にとって、これまでのJFとの「ご縁」と「ご恩」に伴う天命だと思っている。

 柿安本店がJFの会員となって約40年。先代社長の父も副会長をはじめ20年近くJFの役職を務め、私も社長になってから監事、理事、副会長と10年ほどJFとのご縁をつないできた。

 柿安は、精肉小売、惣菜、レストラン、和菓子等の事業を展開しているが、BSEが問題となった2001年までは、レストランと精肉の〝牛肉依存型〟の経営であり厳しい状況に陥った。そのとき父がJFのアメリカ研修に参加して現地惣菜店を見学し「これからは中食だ」と惣菜事業を始めた。それが柿安の基幹事業の一つとなった。JFのアメリカ研修がなければ、おそらく今日の柿安はなかった。

 この「ご縁」と「ご恩」の2つの大きな繋がりが今も続いている。若輩ながら業界のお役に立てたらという気持ちでいっぱいだ。これまでの協会活動を通して勉強したこのとの集大成を会長という立場で発揮することが、微力ながらご恩返しになるのではないかと思っている。

素材へこだわり、おいしさ育む

出身母体である柿安本店の概要や企業理念は?

 柿安本店は、明治4年三重県桑名市で牛鍋店として創業し、来年で150周年だが、昭和43年(株)柿安本店となり今日に至っている。全国的に名が知られるようになったのは、5代目の父が東京に進出し店舗を拡大してからだ。

 企業メッセージは、『おいしさ、育む。』。素材へのこだわりが育むおいしさ、職人の技・発想が育むおいしさ、社員ひとりひとりのおもてなしの心が育むおいしさ、を込めた。現在、精肉・惣菜・レストラン・和菓子・食品の5事業を手掛けているが、今後はこれらを中心としながら、時代の動きを読む力をさらに磨き、新事業・新業態の開発をスピーディかつ強力に推し進めていきたい。

雇用安定へ独自の債務保証制度も

外食産業の新型コロナの影響と対応は?

 外食産業の売上は大きく落ち込み、4月は60.4%とJFの調査開始以来最大の下げ幅となり、壊滅的な状況となっている。

 コロナの影響で世の中が一変している。テレワークなど人々の働き方が変わり、外食でもこれまでのイートイン中心からテイクアウトやデリバリーなど、多様性がより強く求められるようになっている。世の中の厳しい変化に柔軟に対応し、会員の皆様方と力を合わせてこの難局を乗り切っていきたい。大変な経営状況となっている会員の皆様のために、協会が考え得るあらゆる取組みを実行し続けていきたい。

 企業はそこに働く人で成り立っている。働く人が不安な気持ちではよい結果はでない。経営規模の大小にかかわらず、従業員の雇用をいかに安定させるかが大事だ。そのため協会としても、政府の雇用調整助成金の決定に際し、業界の意向を要請してきた。

 また、政府や自治体は個人・中小規模経営店舗への家賃補助を手当てしているが、大手チェーン店に対しての補助はまだなされておらず、対象の拡大をお願いしている。
さらに、協会独自の支援策としてJFと国で支援を拠出し基金を造成し、経営悪化に直面している外食企業に対し、債務保証制度を設けた。外食企業が金融機関から融資を受ける際、協会が融資額の上限1億円の80%まで債務を保証する制度で、中堅企業を対象としているが、中小企業も対象となるように追加資金の拠出を政府に求めている。

素晴らしい食材の発見を積極的に

国産食材の利用と期待を。

 外食が元気でないと、生産者も元気がなくなってしまう。2期4年の副会長時代は、食材調達・開発委員会の委員長も務め、計14回の産地交流会に参加した。プライベートでもかなり多くの産地に出向き、我々の知らない素晴らしい食材を発見することができた。こうした素晴らしい日本の食材を協会会員企業のメニューを通して広げ、消費者に味わってほしい。生産者との交流・商談の機会を絶やさないことは非常に重要だ。

 会長ではあるが、引き続き食材調達・開発委員長を兼務することにした。日本の農業者が大変な思いをされている今だからこそ、4年間の食材調達の経験を活かした積極的な活動の継続が必要だと考えている。生産者と最も近いポジションの委員会としてさらに力を入れていきたい。

 日本の自給率では国産だけでは賄えないのが現状であり、海外産農畜産物も必要だろう。そのなかで国産食材は、「安全」「安心」「美味しい」の切り口をもっともっと消費者に打ち出し、需要と供給のバランスを考えて広げていく必要がある。


〈本号の主な内容〉

■このひと 外食産業と日本の農業
 日本フードサービス協会 会長
 赤塚保正 氏

■JA全農 2020年度事業のポイント
 〈フードマーケット事業〉
 JA全農 フードマーケット事業部 竹内仁 部長

■県域JAグループ 役員人事

■農業関連団体・企業 総会・人事

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