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秋肥価格は尿素・石灰窒素・りん酸・加里で値下げ=JA全農

2020年5月30日

主原料の値下げに加え、今後の重油の値下がりを一定折込

 JA全農は5月29日、令和2肥料年度秋肥(6~10月)の単肥価格(県JA・経済連向け供給価格)について、直近の市況水準を反映し、尿素・りん安・りん鉱石・加里ともに値下げしたと発表した。輸入尿素と重焼りんは3期連続の値下げ。

 令和1肥料年度春肥(11~5月)と比較した今期の価格は、輸入尿素(成分46%)が4・5%、国産尿素(46%)が5・7%、石灰窒素(21%)が1・0%、過石(17%)が0・2%、重焼りん(35%)が0・6%、塩化加里(60%)が4・4%、けい酸加里(20%)が1・3%の値下げ。粉硫安(21%)が0・5%、硝安(34・4%)が6・9%の値上げとなった。

 全農によると、肥料原料の国際市況は、尿素やりん安では新型コロナウイルスの影響により中国の輸出が減少したことから上昇に転じているものの、前期比では値下がり、また加里は下落が続いている。窒素質のうち、国産尿素は内外格差縮小を求め値下げとなった。硫安は国内の物流や設備費等の安定供給に係るコストアップ、硝安は原料となるアンモニアや硝酸価格の上昇からそれぞれ値上げ。窒素質の石灰窒素、りん酸質の過石・重焼りん、加里質のけい酸加里では、労務費・物流費が上昇する一方、主原料の値下げに加え、製造時に重油を使用する品目では原油市況の急落から今後の重油の値下がりを一定折り込み、値下げで決定した。

 今次の価格交渉をめぐる情勢については次のように説明している。

▼海外原料市況=尿素の国際市況は、昨年秋以降軟化している。世界最大の輸入国であるインドの入札開始や新型コロナウイルスの感染拡大による中国からの輸出減少などから、年明け以降は反転上昇しているが、前期比では値下がりした。りん安の国際市況は、北米における悪天候の影響による需要減少やモロッコ・サウジアラビアの生産能力拡大による世界的な需給緩和から下落しており、山元による生産調整や新型コロナウイルスの感染拡大による中国からの輸出減少などから上昇に転じているものの、前期比では値下がりした。塩化加里の国際市況は、北米や東南アジアにおける悪天候の影響やパーム油相場の低迷などから需要が減少したことに加え、インドと山元との価格交渉が値下げで決着したこと等から下落した。
▼国産原料=硫安は、ナイロン樹脂の原料となるカプロラクタムや鉄鋼高炉に使用されるコークスの副生品で、主製品のカプロラクタム、鉄鋼とも事業採算が急速に悪化しており、特に国内高炉メーカーは製鉄所の閉鎖や高炉の休止等を相次いで発表している。こうした状況下で、老朽化した硫安設備の維持コストに加え、内航船輸送の割合が高く輸送距離も長いことから、他の品目よりも物流費が増嵩した。国産アンモニアや硝酸は、中継基地の廃止や事業撤退にともなう国内物流費の増嵩、専用船や製造設備の維持更新コスト等の価格反映を求め、国内メーカーは大幅な値上げを打ち出している。
▼海上運賃=昨年夏以降、好調な荷動きに加え、燃料油の硫黄酸化物排出規制(SOx規制)強化に対する前倒し需要により市況は堅調に推移してきた。新型コロナウイルス感染拡大による世界景気の落ち込みが見込まれるものの、肥料を輸送する小型船は船腹供給が限られることなどから、市況は横ばいで推移している。
▼外国為替=米中貿易摩擦の長期化による世界景気の減速懸念等から110円前後で推移してきたが、3月に入り新型コロナウイルス感染拡大による世界的な株価の急落から一時101円台まで円高がすすんだ。その後、米国政府の経済対策発表等を受け、現在は108~110円で推移している。
▼国内物流費=トラック運送業界において、労働環境や高齢化により深刻な人手不足が続いているため、トラック運賃は2017年以降上昇を続け、上昇率は約10%に達している。同様に船員不足が続く内航船の運賃も上昇傾向にある。今年1月から始まったSOx規制強化により、高価な低硫黄油種の燃料油への切り替えを迫られたことで、さらに輸送コストが上昇している。

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